_狭い通路の先に辿り着いた場所は、大きな地下空間だった。ドーム状になっており、地面は平らで薄く水が張っている。地下水のサラサラ流れる音。 「古代のダンスホールかしら?」 ミレウェは大きく背を伸ばす。 21
2016-07-24 19:32:00「どうやら祭壇のようだね……」 レジルはカーブした壁を光源の魔法で照らす。その一角にくぼみがあり、巨大なグレイソフィアの神像が納められていた。グレイソフィアはスキュラの女神で、下半身が犬の塊になっている。 22
2016-07-24 19:36:00_ロームゥは神像の前に二人を案内する。そして油断なく辺りを見渡した。例の吸血鬼の姿は見えない。 「ここで待っていてくだせぇ。作戦開始ですさ」 「ふぅむ、我々にすることはないか?」 「心配ないですさ」 23
2016-07-24 19:40:47_そう言って彼は魔力の闇の向こうに消えてしまった。暇になった二人は、カメラでグレイソフィアの神像と共に記念写真を撮って観光を楽しむ。 「グレイソフィア信仰なんて珍しいですわね、こんな北の方の土地で……」 「かつてはあったのだろう。今では失われたが……」 24
2016-07-24 19:45:47_そのとき、歯車の軋むような音が聞こえて、二人は目を剥いた。神像が……動き出したのだ! 「ゴーレム……!」 「どうしましょう、デカすぎますわ!」 神像の両目が光り、魔力の光弾を発射する! 25
2016-07-24 19:50:50_素早く二手に分かれるレジルとミレウェ。光弾の命中した場所は、大きな氷の柱になった。 「遺跡の破壊の心配は無さそうですわね!」 「少し厚着する必要はあるな!」 光弾は回転砲のように連続発射され、あちこちに氷の柱ができる。 26
2016-07-24 19:54:54_ミレウェは地面を滑るように移動しながら巨像の倒し方を考える。そこで目に入ったもの。 「あっ、あれ……ロームゥさんですわ!」 ロームゥが、巨像の居座っていた窪みに、空いた穴に潜り込もうとしていた。振り返りもせずに。 「なるほど、罠に嵌められたのはこちらだったか」 27
2016-07-24 19:59:44「どういうことですの?」 巨像を挟んで二人で会話。 「通るためにはこの神像を動かさなくてはいけないのだろう。面倒ごとは我々に任せて、一人で願いを叶える気なのだ」 伝説では、一度願いが叶ったら50年は願いを受け付けない。 28
2016-07-24 20:04:31「困った話ですわ。レジルの催眠術もゴーレム相手には効きそうにもないし、私のマスケットは宿に預けてきましたわ」 「長物は狭い井戸に不利だという判断は間違っていなかった。ミレウェは何も間違っていないさ」 「まぁ♪」 全く深刻さを感じない声色。 29
2016-07-24 20:10:17「いつまでもダンスを踊っているわけにはいかないな、仕掛けるぞ」 「あ、あなた。ダンスに混ざりたい方がいらっしゃるようですわ」 そう言ってミレウェが顔を向けた先には……例の吸血鬼が、蒼白な表情で佇んでいたのだった。 30
2016-07-24 20:13:30【用語解説】 【ゴーレム】 オートマタ技術の元になった疑似生命技術。古代神秘帝国時代に編み出され、生命なき石や泥に命を与える。命は疑似的な感情を生み、魔法を使用させることができるが、複数の魔法を扱う、状況に合わせて使用するなどは非常に苦手である。命令も単純なものしか理解できない
2016-07-24 20:23:16