マイアミ鎮守府特別編「Bride」 前編

ーこの作品に登場する「彼」は作者の許可を得ており実際違法ではないー マイアミ鎮守府物理書籍版「OverKill」より 中編:https://togetter.com/li/1164253
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【宣伝】 マイアミ鎮守府物理書籍第三弾、「DEATH WISH」夏コミ2日目東K03a「50 blessings」にて頒布予定! 羽黒・あきつ・日向が目印の表紙はまりお(@marioalmanac)兄貴謹製! 今度の夏も暴力だ! pic.twitter.com/X1yQOV9ydl

2016-07-16 21:08:59
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Collaboration with 「ケンペイ天狗」 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:46:06
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ーこの作品に登場する「彼」は作者の許可を得ており実際違法ではないー #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:47:15
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寺院の中を、男が這いずり回っている。薄暗い寺院の中には、わずかにランプが灯り、それが唯一の明かりになっている。ランプの炎が、男の這った跡を斑に照らす。それは赤く、蛇のようにのたくった軌跡であり、それが天上のアラベスクと合わさって奇妙な景色を作り出していた。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:48:03
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ランプが男の顔を照らす。年の頃は40、髭面には多少白いものが混ざり、深く刻まれた皺と猜疑心の強い目は彼の過去を物語る。そして今彼の身に降りかかる恐怖もまた然り。口から血泡を吹き出しながら、己に迫る脅威から逃げようとしていた。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:48:19
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ぐい、と彼の体が何者かの手によって持ち上げられる。男の体重は優に100を超えるが、彼をとらえた者はその巨体を片手でやすやすと持ち上げ、地面から引き剥がした。 持ち上げられた反動で、男はさらに吐血。同時に、腸が男の腹からはみ出した。彼の腹は縦に割かれていた。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:48:37
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男は恐怖と苦痛のあまり叫び声を上げるが、彼の口からごぼごぼとあふれる血がそれを阻む。その血は男を掴んでいる者の腕にも飛び散る。綻び、汚れた、かつては純白であったろう軍服の袖。その下から、青白く、太く、そして赤黒い血管の浮き出た手が見える。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:48:51
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軍服姿の処刑人は片手で男の巨体を掲げ、もうひとつの手に何かを握りしめている。その強烈な刺激臭に、男は思わず嘔吐する。血と吐瀉物に塗れた無残な顔の男は、ようやく一つの言葉を絞り出した。 「俺が、何をした」 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:49:21
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軍服の男が答える。 「罪だ」 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:49:40
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軍服の腕が、男の腹に突き入れられる。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:49:54
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「オウッ!」 羽黒の正拳が島風の腹部を痛打する。 「司令官さん、終わりました」悶絶する島風を背に、羽黒が提督に礼をする。「おう、ご苦労」 この紐パン芸人は鎮守府着任以来通算114回目の夜這いを仕掛けようとしあえなく御用、無事腹パン刑に処される次第となったのである。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:50:55
orphe @orphechin

2月14日。世間ではバレンタインデーとして知られるこの恋人たちの日も、この男には至極どうでもいい事であったし、何より彼にはやるべきことがあった。 *beep beep* 執務室に備え付けのおんぼろ電話が鳴る。件の「仕事」の相手からだろう。 提督が受話器をとる。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:51:14
orphe @orphechin

「はい、こちらマイアミ鎮守府」 「<グラハム>、元気?こっちにはいつ来れる?」電話の向こうから陽気な女の声が聞こえる。グラハム、というのは勿論本名ではなく、提督の「仕事」の上での名前だ。 「今日の夜には行ける。会議には間に合わせるよ、<ドン・ファン>」 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:51:29
orphe @orphechin

「はやくきてねえ、こっちはとってもこわ~い事があったのよ」電話の女はあくまで陽気に言う。 「なんだ、現地民の反乱でもあったのか?」 「違うのよ」 一瞬、言葉を区切り、女が言う。 「殺されたのよ、<ジェイク>が」 「あの爆弾魔が?マジかよ」 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:51:56
orphe @orphechin

「そうなの。おかげでドラッグの物流にも影響が出てる。詳細は会議の時に話すわ」 「了解、じゃあ後は現地でな」 「待ってるわねえ。ぱんぱかぱーん」 電話が切れる。提督は受話器を置き、顎をしゃくる。 「出張だ。お前も来い、羽黒」 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:52:33
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「他の人達はいいんですか?」 「今回はあまり大勢連れていけない。一番腕の立つやつが1人いれば足りる」 それを聞いて、羽黒が頭を振る。 「私なんて、全然ダメですよ」 「お前もLV99だ。少しは自分の腕に自信と自覚を持て」 「ご、ごめんなさい」羽黒は頭を下げる。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:52:53
orphe @orphechin

謝る羽黒を見て、提督は内心溜息をつく。戦艦、飛行場姫、怪物空母。こいつはそうした壮絶な面々と渡り合い、時に葬り、時に死の淵まで追い詰められた。にもかかわらず戦闘時以外はこんな感じだ。困ったもんだ-腕組みしながらイライラしていると、おずおずと羽黒が聞いてくる。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:53:19
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「ところで……出張先はどこなんですか」 「マレーシア。ペナンだ」 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:54:23
orphe @orphechin

2人が空港を降りた時にはすっかり夜で、色とりどりのネオンで飾られた街が彼らを出迎えた。 ここペナンは、東南アジアでも屈指のリゾート地であり、ビジネスの地であり、そして当然のごとく犯罪のメッカでもあった。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:55:02
orphe @orphechin

開戦以来、帝国海軍が最も進出し猖獗を極めたのがマレー半島である。多くの海軍軍人がここを訪れ、金を落とし、そして違法な取引に手を染めていた。かつての潔癖症的な統治はなりを潜め、この地は軍人たちが「権益」を手に入れるための前線基地として作り替えられた。#マイ鎮特別編

2016-07-24 22:55:42
orphe @orphechin

ここペナンでも、多様な宗教施設に混ざり、提督たち専用のリゾートホテル、カジノや売春宿、そして彼らの違法ビジネスの事務所が軒を連ねている。現地政府を脅迫して税法を歪ませた結果、提督たちの運営するペーパーカンパニーも数多くここに設置されたというが、詳細は闇の中だ。#マイ鎮特別編

2016-07-24 22:56:02
orphe @orphechin

タクシーの中、万華鏡のように光を散らすネオンを、羽黒は遠い目をして眺めていた。 「悪くない風景だな」提督が言う。 「マイアミにいた時もこんなネオンを見ていた」 だが羽黒の返事はない。 「聞いてるのか?」肩に手をやると、 羽黒がびくりと痙攣する。 #マイ鎮特別編

2016-07-24 22:58:14
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