オカルト探偵あきつ丸 -女王殿下の揚陸艦-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回は女王陛下の揚陸艦がらみのお話。日本の行く末と合わせてお楽しみをば! ダークオリエンタルファンタジーな世界観を是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
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はじめに

竹村京 @kyou_takemura

#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない 及び #人造人間あきつ丸 の二次創作であり、オフィシャルではありません。指摘、意見などは #落ちぬい タグへお願いします。

2016-07-26 22:12:04

本編

竹村京 @kyou_takemura

首都防衛を担う第一師団の師団長執務室に一人の女が入る。 「揚陸艦あきつ丸、本日付で着任いたしました」 「ご苦労。話は聞いている。指示は追って達するから、下がってよろしい」 「了解しました」#落ちぬい二次

2016-07-26 22:13:47
竹村京 @kyou_takemura

挨拶もそこそこに退室する。師団長の言葉は、あきつ丸が憲兵であることを知っているから好きにせよという意味だ。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:15:16
竹村京 @kyou_takemura

そもそも海軍に対抗して艦娘を開発したはいいものの、艦娘では歩兵を揚陸させることはできない。持て余した上層部はあきつ丸を海軍に貸し出したり、憲兵として便利に使ったりしていた。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:15:53
竹村京 @kyou_takemura

だから今さら陸軍の部隊に転属させたところで、使い道など無かった。師団長はただの厄介払いか、あるいは師団に憲兵を放り込んで綱紀粛正を図るためだろうと推測した。それゆえの放任である。 以後、あきつ丸は勝手気ままにあちこち出歩いた。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:17:55
竹村京 @kyou_takemura

朝に出て夜に帰ることもあれば、一週間戻らないこともあった。駐屯地にいる時も食事さえ個人的な従僕と思しき少女に運ばせ、滅多に人前に出ることはなかった。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:20:24
竹村京 @kyou_takemura

課業の割り当てもなく、通常の軍人に課された出勤や外泊の制限もない。それでも問題にならないのは、師団長が直々に『役立たずの陸の艦娘など放っておけ』と駐屯地中に触れていたからである。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:21:58
竹村京 @kyou_takemura

ある日、あきつ丸は朝霞駐屯地から二時間ほどのところにある鎮守府にいた。大きな訓練用プールを備えた、空母を基幹とした艦隊を運用する鎮守府である。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:23:59
竹村京 @kyou_takemura

プールでは数名の艦娘が訓練を行っていた。遠目なので確かではないが、艤装の特徴から恐らくは赤城と加賀、瑞鳳、それに随伴艦として後期高雄型と長良型だろう。随伴艦の護衛のもと、空母の艦娘たちが見事な連携を見せていた。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:25:48
竹村京 @kyou_takemura

しばし待つようにと通された応接室はシンプルで装飾が少なかったが、よく見れば設えられた調度はどれも高級な物だ。軍がこれほどの逸品をいくつも購入するとは考えられない。ここの司令官が個人的に持ち込んだものだろう。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:27:30
竹村京 @kyou_takemura

大きな柱時計の音と華美にならず飽きない調度、それに薫り高い紅茶と、ここの主は客を心地よく待たせる術を完璧に心得ている。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:28:28
竹村京 @kyou_takemura

半分ほど紅茶を飲んだところで応接室に入ってきたのは白髪を七三に撫でつけた気障な美男子である。三歩離れて翔鶴の艦娘が従っていた。あきつ丸は起立して礼をする。制帽は脱いでいるため、10度の敬礼だ。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:29:31
竹村京 @kyou_takemura

男が目礼を返し、名乗る。 「お待たせしました。鷲塚です」 「揚陸艦あきつ丸であります」 挨拶を終えて着座すると、翔鶴が鷲塚の斜め後ろに立つ。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:31:23
竹村京 @kyou_takemura

「本件は内密に願いたく。奥方には席を外していただきたいであります」 翔鶴は少し表情を変えたが、鷲塚の目配せを受けて退室していった。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:33:07
竹村京 @kyou_takemura

どうせケッコンカッコカリで思考が繋がっているのだから、鷲塚が伝えようと思えば伝えられる。だがこちらが内密にと願って鷲塚がそれに応じたのだから、それが一種の契約――呪となる。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:34:32
竹村京 @kyou_takemura

「それで、内密の話とは?」 鷲塚は密談と言われても全く気負うことなく、ゆったりとくつろいだ風である。密談には慣れている、という事か。 「海軍大佐としてではなく、鷲塚紡としての貴公に対しての願いでありますが」#落ちぬい二次

2016-07-26 22:35:58
竹村京 @kyou_takemura

鷲塚紡。財閥系紡績会社の三男坊。表立って経営には参画していないが、異常なまでに頭脳明敏で卓越した経営手腕と交渉術を持ち、財力と併せて軍と経済界に強いコネを築いている。無論、空母を中心とした攻撃的な艦隊運用も目覚ましい。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:37:14
竹村京 @kyou_takemura

「聞きましょう」 「資金援助と、とある計画への介入を願いたいであります」 ほう、と小さく息を漏らし、鷲塚は先を促す。 あきつ丸は援助してほしい金額の概算と、介入すべき計画を伝えた。 「この目的は?」#落ちぬい二次

2016-07-26 22:39:11
竹村京 @kyou_takemura

「皇位を頂戴するのでありますよ」 核心をさらりと言ってのける。鷲塚は凄まじく頭が切れる。この手の一を聞けば結論に至る人間には一から十まで説明してやるよりも一足飛びに核心を伝えた方が効果的だ。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:43:02
竹村京 @kyou_takemura

深海棲艦との戦いは、その根本から霊的な戦いである。物理的な打撃力の要たる艦娘は、原理的には一種のカミである船魂を依代である巫女に降ろして戦わせるものだ。よって霊的な力の多寡が即ち戦力の多寡となる。 折しも先日、今上の帝が高齢を理由に譲位を決められた。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:44:50
竹村京 @kyou_takemura

しかし次の帝、つまり東宮の霊力は強くない。 東宮はやや気弱だが人柄に問題はなく、決まりきった公務と儀式をしていればよい平時であればよい帝になるだろう。しかし外からの敵を打ち払わねばならない戦時においては明らかに力不足だ。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:47:12
竹村京 @kyou_takemura

「それを見かねた我が君が、御自ら立ち上がられたのであります」 あきつ丸の君とは後南朝の後裔たる女性だ。本流の後継がなく、遠縁の男系子孫を呼び寄せて皇統を継がせた継体帝の例もある。男系であればいくら本流と離れていても皇位継承には本質的には問題ない。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:48:24
竹村京 @kyou_takemura

「なるほど。それなら確かにこれが必須ですね」 鷲塚が介入すべき計画とは新国立競技場の建設である。#落ちぬい二次

2016-07-26 22:49:39
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