ニンジャスレイヤー:ネヴァーダイズ 【8:オヒガン・シナプシス】 #1
「AAAAAARGH!」梟頭の魔人は巨大な翼を羽ばたかせてドクロめいた月を横切り、人とも鳥ともつかぬ奇怪な咆哮を、白いネオサイタマに投げかけた。鉤爪のそれぞれには上半身を無惨に引きちぎられたニンジャの惨殺体を掴んだままだ。「AAAAAAAARGH!」
2016-07-31 13:41:16魔人が空中でキリモミ回転し、ひねった体のスナップを効かせて後方に惨殺体を連続投擲すると、追跡してきたアマクダリ・ニンジャのクルーシヴルはそれらを逆に飛び石にして跳躍。「サヨナラ!」「サヨナラ!」彼らの爆発四散を眼下に、ニンジャ・モーニングスターで襲いかかった。「イヤーッ!」
2016-07-31 13:50:07魔人がグイと引き寄せられた。足首にニンジャ・モーニングスターの鎖が巻きつき、無数のトゲが鉤を飛び出させて食らいついた。「GRRRRRR!」「ヌウウーッ!」クルーシヴルはネオン看板「そまきの」の上に着地し、鎖を引く力を強めた。「悪鬼めが!逃がしはせんぞ……!」「AAAARGH!」
2016-07-31 13:54:41梟頭の魔人は力強く羽ばたき、強引に空中でムーンサルト回転を行った「AAAARGH!」「グワーッ!」クルーシヴルが逆に鎖で空中に引き上げられる!「イヤーッ!」彼はモーニングスターを捨ててスリケンを連投した。魔人は一直線に突進し、交差時にクルーシヴルの首を引きちぎった。「サヨナラ!」
2016-07-31 13:59:17サイバースピネル、サイスヒール、そしてこのクルーシヴル。追ってきたニンジャを全て殺し、魔人は再び羽ばたいて空を飛んだ。もはやどこを目指すかも彼の頭にはない。これが最後の変身であった。巨大な羽が舞い散り、地上で争う人々の頭上に降り注いだ。
2016-07-31 14:03:21飛翔のなかで、その羽ばたきが徐々に弱まり、速度が緩み、下降が始まった。開ききっていた梟の瞳孔が収縮を始めた。狂乱に染まりきった梟頭に、訝しむような目の動きが生じた。空に浮かぶキンカク・テンプルは弱々しく明滅している。もはや無限の色彩を放つ数分前の様相と比べるべくもなく。
2016-07-31 14:05:52魔人は手を見た。人の手を。「何だ?」彼は呟いた。鳥の羽をばら撒きながら、彼は迫り来るオイランバニー看板を見た。「マジかよ?」KRAAAAAASH!「グワーッ!」瓦屋根とネオン灯を撒き散らしながら、フィルギアはアスファルトに落下した。KRAASH!「グワーッ!」
2016-07-31 14:07:55瓦礫を押しのけ、路地裏で身を起こしたフィルギアは、なかば呆然と、頭上の狭い空のキンカクを見た。「何だそりゃ」「あんた!大丈夫か」何者かが手を差し伸べた。見ると、「忍」「殺」のメンポ……否、「忍」「殺」のプリントを施したTシャツを頭に巻いた非ニンジャである。
2016-07-31 14:12:39Tシャツ男は手を貸し、フィルギアを立たせた。表通りを、雄叫びをあげた市民が走り過ぎる。「どうなってる?」フィルギアは呟いた。「アンタ、怪我してるな。ハイデッカーにやられたんだろ。大丈夫か」Tシャツ男は言った。フィルギアは指差した。「何だそりゃ」「ファッキンクールだろ。やらないぞ」
2016-07-31 14:15:04「ウオオーッ!」「来たぞ!」「押されるな!」表通りで叫び声。「畜生!行かねえとだ」Tシャツ男は振り仰いだ。「じゃあな。気をつけろよ」言い残し、走り去った。フィルギアは頭を掻いた。しばし黙考ののち歩き出した。「英雄的死に様は許されねえか」トボトボと歩きながら呟く。「柄じゃねえしな」
2016-07-31 14:19:43フィルギアは変身能力が失われた事を自覚する。キンカクの異常な状態の影響があるのだろう。ここは何区だ?どこまで飛んだ?ツキジの地下は?シマナガシのアホどもは?考えたところで詮無い事だ。死ぬなら死んだし、無事なら平然とイクサを続けているだろう。「短い遊びだったが、まあ楽しかったな」
2016-07-31 14:25:22やるだけの事はやった。ニンジャスレイヤーは月に行った。キンカクはあの調子だ。アマクダリがこのままネオサイタマを平均化し尽くしてイクサが終わるのならば……「仙人でもやるか。ヒヒヒ、締まらねえったらねえな」彼は表通りに顔を出した。「ウオオーッ!」市民がハイデッカーに押され後退を開始。
2016-07-31 14:30:48「ザッケンナコラー市民!」「スッゾオラー市民!」ジュラルミン盾を構えた同じ顔の連中が、機能停止に陥ったオイランドロイドを破壊……「オイランドロイド?オイ、オイ」フィルギアは訝しんだ。いまだ果敢にカラテを繰り出すオイランドロイドもいたが、一体、また一体と沈んでいく。市民が狼狽する。
2016-07-31 14:35:39それまでオイランドロイド達と共に戦って……信じられぬ事実だ……共に戦っていた市民達は戦力を半減、叩きのめされ、押しのけられ、崩れ始めた。先ほどのTシャツ市民も垣間見えた。転ばされ、警棒でめちゃくちゃに殴られている。「うわあ。こんな場所まで」野次馬らしき男がフィルギアの横で呟いた。
2016-07-31 14:40:41「ああ?この辺の人?」「様子を見にね!」男は身を乗り出した。「よくない事だよ。反抗してる人の気持ち、まあわからなくもないが、正解とは限らないし」メガネを直し、「状況を見据えないと。正解をね。そうしないと暴徒と変わらない。行いの正しさ。逆もまた真っていうだろ?」「スッゾ市民!」
2016-07-31 14:46:11オイランドロイドを破って殺到してきたハイデッカーがあっと今に至り、フィルギアともどもメガネ市民に掴みかかった。「アイエエエエ!」引きずり倒されるメガネ市民!「スッゾオラー市民!」ボーで叩く!「アイエエエエ!」「ザッケンナコラー市民!」フィルギアの髪をグイと掴む!
2016-07-31 14:48:04「待て待て待て」フィルギアは苦笑した。「市民!」ハイデッカーがボーを振り上げる。足元ではメガネ市民がストンピングされている。「アイエエエエ!僕は第三者だぞ!ヤメテ!」「スッゾオラー!」振り下ろされたボーをフィルギアは掴み、反射的に頭突きをくらわせた。「イヤーッ!」「グワーッ!」
2016-07-31 14:51:21「イヤーッ!」「グワーッ!」ハイデッカー二人を殴り倒し、再び表通りを見た。フィルギアは心底驚いたように口をあんぐり開いた。排除されたオイランドロイドの差し引きよりもずっと多い、ずっとずっと多い市民が遠い路地から走り込み、叫び声をあげ、合流しながら、ハイデッカーに再び殺到したのだ。
2016-07-31 14:57:30「ウオオーッ!」ナムサン!ハイデッカーが徐々に後退!一人また一人と打ち倒されてゆく!「ククク、これだから」フィルギアは徐々に笑い出す。彼はサングラスを捨てて踏み、飛び出し、手近のハイデッカーを殴りつけた。「イヤーッ!」「グワーッ!」笑いながら彼は人の波に加わった!「ハハハハハ!」
2016-07-31 15:02:10明滅するキンカクの下、ハイデッカーの白を市民の多色が徐々に侵食し始めた。キンカクの苦しげな揺らぎと同調するかのように、電柱の影、あるいは屋根の上、道路の真ん中でニンジャめいた影がぶつかり合うさまが、人々の網膜に焼き付き、奮い立たせた。恐らくそれは太古の昔の、この土地の記憶だった。
2016-07-31 15:11:37DOOM!DOOM!グランド・オイラン級超大型複合艦、キョウリョク・カンケイの副砲群から、モーターオムラの腹部へと反撃の至近斉射が命中!僅かに仰け反る巨体!強靭な強化装甲が表面爆発で赤熱し、操縦席が震動!「ンアーッ!?」論理抵抗軽減済みといえど、未だ強烈な擬似痛覚がユンコを襲う!
2016-07-31 15:20:55