烏賀陽弘道氏インタビュー:ユダヤ人ジャーナリスト、レイチェル・アレンフェルド氏曰く「反ユダヤ主義やナチズムであっても、表現・言論の自由は守られるべき」
- KogaUjisato
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きょうは、Rachel Ehrenfeldというジャーナリスト兼研究家にあってきました。自宅にお邪魔しました。専門は経済テロリズムです。http://en.wikipedia.org/wiki/Rachel_Ehrenfeld
2011-02-13 13:02:57サウジアラビアの企業経営者からアルカイダに資金が流れているという事実を報じた著作"Funding Evil"で有名になった人。/Rachel_Ehrenfeld
2011-02-13 13:04:04なぜ彼女にインタビューに行ったかというと、その本に書かれたサウジアラビア人が、名誉毀損訴訟の起こしやすいイギリスで彼女を25万ドルの損害賠償を求めて訴えたから。スラップの国際版ですね。こういうのをlibel tourism(名誉毀損旅行)といいます。
2011-02-13 13:05:43アメリカは反SLAPP法そのほか言論の自由の法的保護が手厚く、いやがらせの訴訟で著作者をやっつけることはほぼ不可能です。なので、そうした法的保護がない、イギリスで提訴したわけです。
2011-02-13 13:07:10イギリスは日本と同じで、名誉毀損訴訟を起こされた側が「名誉毀損ではない」と証明する立証責任があります。アメリカは逆で、提訴した側が「名誉毀損である」と立証しなくてはいけません。1964年の連邦最高裁判決からそうなりました。つまり名誉毀損提訴で勝つのは至難の業なのです。
2011-02-13 13:08:50この1964年の最高裁判例は、公民権運動やその後のウオーターゲート事件、ペンタゴンペーパーズなど、アメリカの報道の黄金時代に道を開きました。今でも、報道だけでなく、アメリカの言論の自由が世界でもいちばん手厚く保護されているのはこの判例のおかげです。
2011-02-13 13:10:24ちなみに、アメリカはコモンロー=判例法の国なので、判例が法律と同じ効力を持ちます。特に連邦最高裁判例はすべての裁判所を拘束します。
2011-02-13 13:11:17さきほどのレイチェル・アレンフェルド氏は、5年間、サウジアラビアの富豪を逆提訴して戦ったが、ニューヨークの裁判所は「管轄権がない」と退けた。すると、ニューヨーク州議会が、3ヶ月で、こうした海外でのいやがらせ提訴を無効にする法律をつくって可決してしまった。
2011-02-13 13:12:51彼女は連邦議会にも働きかけて、こうしたlibel tourismをできなくする連邦法(全アメリカ人に適用される)ができました。昨年、オバマ大統領が署名して法律になったそうです。
2011-02-13 13:14:44「あなたの取材しているテーマは何なの?私の経験はどう関係するの?」とこっちが質問攻めにされるおっかない、大学院の教授みたいなオバチャンなんだけど、必死で説明したら「なるほど、わかりました」と笑顔でがんがんいろいろ公になってない話を教えてくれた。
2011-02-13 13:16:57「アメリカの民主主義万歳」みたいな話になるのかと思ったら「なに言ってんの、ワタシなんか自分で200万ドル身銭切ったのよ!誰も助けてくれないだから!」「みんな言論の自由が当たり前だと思ってる。それが危険なのよ。当たり前だと思っていると簡単に奪われるわよ」とすごく正直。笑
2011-02-13 13:18:42「ぼくはオリコン裁判で33ヶ月で1000万円くらい損害を受けました」と言ったら「あら、それで済んだのならよかったじゃない」と軽く流された。笑 「ワタシなんか200万ドルかけて5年間戦ったのよ!!」
2011-02-13 13:20:35ウガヤ「スラップにしろlibel tourismにしろ、そういう民事訴訟の悪用を防ぐには何をすべきだと思いますか?」 アレンフェルド「提訴した弁護士に罰を加えることね。彼らは間違っていると知っていて提訴するんだから」 という言葉は、日本のスラップ被害者の声と一致する。
2011-02-13 13:23:40烏賀陽「200万ドルも身銭を切って、後悔していませんか?」アレンフェルド「まあ私はクレイジーね。でも後悔してないわ」烏賀陽「とてもリスペクタブルですよ」アレフェルド「まあ〜リスペクとはいいんだけど、リスペクトで家賃は払えのよねえ(笑)」
2011-02-13 13:27:07「(連邦)法案が法律になる間に、サウジアラビアの猛烈なロビー活動があって法案が骨抜きにされた」とアレンフェルド氏は怒っていた。
2011-02-13 13:28:54サウジの企業経営者は、アレンフェルド氏だけでなく、ニューヨークタイムズやワシントンポストなど45のメディアをロンドンで訴えた。メディア企業はどこも裁判が長引いて経費がかさむのを恐れて、早々と「お詫び」を出して撤退。アレンフェルド氏だけが一人戦うハメになった。
2011-02-13 13:31:34烏賀陽「そうやって提訴されることで、どんな問題が発生しましたか?」アレンフェルド「あなたもライターならわかるでしょ?名誉毀損訴訟を起こされるなんて名誉なことじゃないわ」
2011-02-13 13:33:18アレンフェルド「(お金や手間がかかる以外には)提訴はthreat(脅し、脅迫)以外の何者でもない。テロへの資金提供について探ったり批判したりする者はみんなこういう目に遭うんだぞ、という脅し。批判をすべて沈黙させることが目的なのです」
2011-02-13 13:35:40アレンフェルド「Don't bully me. I have a right. You are terrorizing the media 」(私をいじめようったってそうはいかないわ。理は私にあるのよ。あなたがやっていることはメディアへのテロじゃないの)
2011-02-13 13:37:35この「メディアへのテロ」という言葉は、ちょうど一年前にカルフォルニアのスラップ対策弁護士マーク・ゴールウィッツ氏が言った「スラップとはlegal terrorism(法を使った、合法的なテロ)なのです」という言葉と偶然にも一致した。それで次の質問。
2011-02-13 13:39:26烏賀陽「なるほど、民事提訴がテロになりうるということですね。それはスラップの専門家も言っていました」アレンフェルド「そう。合法的テロであり合法的暴力です」(legal terrorism / legal violence)。ここでもまたまったく偶然に同じ言葉。
2011-02-13 13:40:53