「油目的で肉を捨てていた西洋と異なり、日本はクジラを余すところなく完全利用してきた」って本当?

結論から言うと、地域や時代による市場の変化があっただけで、洋の東西なんて関係ない。 日本の捕鯨会社は戦前・戦後を通じて鯨肉を山ほど捨てていたのが事実。だって商売にならないもんね! 江戸時代から日本の捕鯨は商業色が濃くて、鯨肉より鯨油が目当て。鯨組は藩政と癒着して絶大な権力を行使し、漁場を占有して他の漁民を困らせたりもしたんだよ。
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もんもんさん(@hydehydesan)とYAさん(@Adarchism)、まとめ人の解説でお届けします。
古式捕鯨に関するテキストは『捕鯨Ⅰ/Ⅱ』(山下渉登著、法政大学出版局)、『くじら取りの系譜―概説日本捕鯨史』(中園成生著、長崎新聞新書)、『西南学院大学博物館寄託「松澤善裕氏所蔵文書」に見る鯨組と地域漁業の軋轢』〈森弘子/宮崎克則、西南学院大学博物館研究紀要2〉
戦前の捕鯨に関するテキストは『捕鯨の近代』(塩崎俊彦、神戸山手大学紀要7)、『国際捕鯨レジームの誕生と日本の参加問題:ジュネーブ捕鯨条約と国際捕鯨協定を事例として』(真田康弘、政経研究№87)、『日本の捕鯨』(高橋俊男著、GPJ)

# 「鯨体完全利用神話」とは──

検索すればたくさん出てくるけど、出所は調査捕鯨事業当事者である捕鯨サークル(水産庁/日本鯨類研究所/共同船舶株式会社・日本捕鯨協会)。太地町を擁する和歌山県も。

鯨は、古くから頭の先から尾まで無駄なく食用にされてきました。(引用)
■農水省広報誌aff7月号 特集『鯨』
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1607/spe1_03.html

日本は古来より、鯨油の利用を中心とする西欧と異なり、鯨を余すところ無く利用する捕鯨を全国各地で行っていましたが(引用)
■第3回日本伝統捕鯨地域サミットの開催について|日本鯨類研究所
http://www.icrwhale.org/02-A-32.html

Q. クジラは捨てるところなく利用できると聞きましたが、本当ですか。
A. 本当です。日本人は、クジラを油や肉だけではなく、骨やヒゲ板まですべて捨てることなく利用してきました。(引用)
■日本捕鯨協会 捕鯨問題Q&A
http://www.whaling.jp/qa.html#06_03

日本では、捕獲した鯨類は余すことなく活用されており、肉を食料とするだけではなく、その他の部分は工芸品の材料として利用されています。日本の捕鯨は、石油の利用が始まるまで、鯨油の採取のみを目的として捕鯨を行い、大量に鯨を殺しては、その大部分を海に捨ててきた一部の外国の捕鯨とは一線を画してきました。
■太地町でのイルカ漁業に対する和歌山県の公式見解
http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071500/iruka/index.html

YA @Adarchism

「クジラを完全に利用し尽くす価値観と技術は南氷洋捕鯨にも生きていました。」「鯨体の完全利用という伝統捕鯨の真髄を継承する持続的捕鯨を継続させ,さらに発展させることを目指します。」 以上下関宣言より。 whaling.jp/ketugi/ketugi0…

2016-08-17 10:02:05
YA @Adarchism

「1. 鯨体の完全利用とその恵みへの感謝を基礎とした我が国の捕鯨の伝統と文化を誇り、これを保存し、発展させます。 2. 鯨油だけを生産しクジラ資源を大量かつ無駄に浪費した欧米型の商業捕鯨は行ないません。」whaling.jp/ketugi/ketugi0… 長門宣言

2016-08-17 10:06:03
YA @Adarchism

「鯨を完全に利用し尽くす価値観と技術を有していました」「鯨体の完全利用という伝統捕鯨の真髄を継承する持続的捕鯨の実現を目指します。」 室戸宣言 whaling.jp/ketugi/ketugi0…

2016-08-17 10:12:08
YA @Adarchism

「鯨体の完全利用という日本捕鯨の真髄は,世界に誇るべき伝統です。」太地宣言 whaling.jp/ketugi/ketugi0…

2016-08-17 10:16:23
YA @Adarchism

togetter.com/li/1012491 上に見たようなナントカ宣言のいう鯨体完全利用が現実の統計とかみ合わない虚構だと言ってるのだが。

2016-08-17 10:27:10
もんもん @hydehydesan

「余すところなく利用」云々言ってる人たち nihonsinwa.com/page/740.html 「日本人はクジラを食べました。 それだけではありません。 クジラを余すところなく利用しました。」

2016-08-16 09:41:05
もんもん @hydehydesan

blog.goo.ne.jp/hanabira-kai/e… 「日本人ほど鯨を余すところなく徹頭徹尾、内臓まで美しく食べ、利用してきた民族はいない。」

2016-08-16 09:41:53
もんもん @hydehydesan

他にも沢山出てきたがキリがないので 私も古式捕鯨に関して言うならば鯨体の完全利用はあながち嘘ではないかと思いますが(日本の古式捕鯨においても油だけ採り肉を捨てていた時期も有るが)、戦前の南氷の捕鯨においては間違いなく当てはまらないでしょうね(だからこそ森田氏はああ書いた)

2016-08-16 09:48:14
もんもん @hydehydesan

まぁ他には「クジラを食用に利用する点では、日本型捕鯨は先住民族生存捕鯨と共通する。しかし、日本型捕鯨は利用を徹底して、鯨体のすべての部分をその用途に応じて製品とし、料理法を工夫して鯨食文化を発達させて、有効に役立てている点で、日本型捕鯨の方が優れている」とする大隅清治氏とか

2016-08-16 12:42:50
もんもん @hydehydesan

「皮脂から油だけ採り、残りは捨ててしまう西洋と違い、日本は食用以外にも、皮脂はもちろん、内臓など70種もの部位を、完全利用してきました」という高橋順一氏等(いずれにせよ「古式捕鯨」という括りで言うならば間違いではない)沢山いますがね athome-academy.jp/archive/cultur…

2016-08-16 12:45:07
もんもん @hydehydesan

3500131221.blog120.fc2.com 「江戸時代の鯨体を陸に引き上げる捕鯨形式なら、当時の社会産業構造とも相まって鯨体はほぼ完全に利用されたであろうが、近代以降の外洋捕鯨となると話は別になる。」 Adarchismさんのこれが全てではなかろうか

2016-08-16 09:50:44

まず、戦前の日本の捕鯨会社が鯨肉等を海洋投棄しまくり、他の捕鯨国から白い目で見られていた件。

鯨体の完全利用という第11条の規定は、会議の際ノルウェー代表のベルガーセンが「一部の国は我々欧州による捕鯨とは異なり、鯨体を十分に利用していない。したがって当会議では本問題に関する規定を策定すべきである」と述べているように、英国やノルウェーのような採油技術を未だ十分有するようになっていない国々に対しての牽制という意味合いを有するものでもある。こうした牽制の対象の一つとされていたのは、「十分に利用していないまま鯨体を置き去りにしている」と37年会議の場でノルウェーから名指しで批判された日本であった。

大村(日本の鯨類学者で『南氷洋捕鯨航海記』の著者)が乗船したのは大洋捕鯨の第二日新丸である。(中略)漁場に到着当日より第二日新丸は随行する9隻の捕鯨船とともに操業を開始するが、翌日には早くも捕獲後の処理が追いつかなくなり、鯨油処理用ボイラーの一部も操業開始僅か数日後には故障してしまう。母船には処理しきれない鯨体で甲板が足の踏み場もない状態となり、鯨油精製処理は脂肪層優先で行われ、骨は脂肪層の次に脂肪含有量が多いものの、結局処理しきれずに投棄せざるをえなくなってしまうのである。以降も不漁や時化の時には骨からも搾油されたが、機械故障時や豊漁時には未処理の骨が軒並み捨てられ、監督官という立場上、大村としても「目の前で背骨を捨てられるのはどうも困る」というのが偽らざる心情であった。

なお当時日本の南極海捕鯨は輸出向け鯨油の生産を行うためのものであり、鯨肉生産は限定的であった。これは鯨肉の大量生産によって沿岸捕鯨業者を圧迫しないよう、政府が鯨肉の内地持ち込みを厳しく制限していたためである。大村の乗船した大洋捕鯨船団に対しても捕鯨操業中の12月に920トンの持込が許可されたのみであった。第二日新丸には鯨肉からフィッシュミールを製造する機械が備え付けられてはいたものの、これは頻繁に故障してほとんど稼動していない。37年捕鯨協定には鯨肉からの搾油も規定されて入るが、日本はこの協定には参加していないことに加えて、処理能力等の関係から骨も大量に投棄しているような状態では、骨よりもさらに脂肪分の少ない鯨肉に手が廻るはずもないのが実状であった。肉は通常甲板の「肉捨場」というところに運ばれ、そこから丸ごと投棄されていたのである。鯨肉の国内持込制限が解かれるのは1939/40年漁期からで、冷凍すれば3-4年は保存がきく鯨肉は貯蔵食料に適しているとして戦火の拡大するなか海軍などが中心となって生産を奨励したためである。

(『国際捕鯨レジームの誕生と日本の参加問題』より引用)

カメクジラネコ @kamekujiraneko

戦前・戦後の日本の捕鯨会社による鯨肉廃棄の実態について、鯨油と鯨肉の生産量の比をもとに廃棄量の推定値を表でまとめました。「日本人はクジラを余すところなく利用してきた」なんて嘘っぱち!kkneko.com/aa2.htm pic.twitter.com/dcYKizYQl9

2016-08-15 21:56:45
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カメクジラネコ @kamekujiraneko

(承前)捕獲頭数および鯨油生産量/肉皮生産量比から、戦後の1950年代頃は、少なくとも終戦直後には食べられていたはずの鯨肉の一部を歩留まり調整によって廃棄していたことは間違いない。戦前(生産量の40倍も洋上投棄)には及ばないが、鯨肉生産量の半分くらいが廃棄されたと推定される。

2016-08-15 22:21:36
カメクジラネコ @kamekujiraneko

@kamekujiraneko ちなみに、この数字はかなり控えめな見積もりです。実際にはもっとずっと多く廃棄していた可能性が大。試算の詳細についてはこちらもご参照>戦後の日本の鯨肉消費の実態 kkneko.com/aa2.htm

2016-08-17 18:37:48

実は古式捕鯨さえ鯨油が主目的だった──

もんもん @hydehydesan

森田勝昭氏は、日本が行った戦前の南氷洋捕鯨に関して、日本の捕鯨の伝統でもあり第一義とされた鯨肉の確保がこの時期だけおろそかにされたとし(捕鯨Ⅱ 217p)、ある種「鯨油確保を主とする欧米、鯨肉確保を主とする日本」という対比を行おうとしてるように感じられるが、

2015-09-22 15:57:01
もんもん @hydehydesan

これはそういう一面も有るのだが、日本の古式捕鯨に置いても主目的は鯨油の確保であった。

2015-09-22 15:57:10
もんもん @hydehydesan

「当時(江戸時代前期(※引用者注記))流通した鯨製品としては、食用の塩蔵鯨肉もあるが、とくに灯油としての鯨油が大きな割合を占めたと考えられ、また細工物に使われる鯨鬚や筋などの需要もあった。」(くじら取りの系譜 136p)

2015-09-22 15:57:49
もんもん @hydehydesan

「江戸時代の捕鯨の振興は、なにより鯨油需要との関連で考える必要がある。」(142p)

2015-09-22 15:58:01