https://ja.wikipedia.org/wiki/三歳児神話
三歳児神話(さんさいじしんわ)とは、子供が3歳になるまでは母親が子育てに専念すべきであり、そうしないと成長に悪影響を及ぼすという考え方。
#三歳児神話 ①「三歳児神話」を卒業論文に取り上げた学生がいた。元幼稚園教諭で思うところあって社会人入学してきた方で、論文執筆当時三歳の子どもがいた。彼女は幼い子どもを育てながら、また同じ保育所にいる子どもたちをみながら、考える。 以下、三砂ちづる著「女が女になること」より引用。
2016-08-19 15:25:33#三歳児神話 ②自分が幼稚園教諭をしてきた経験、保育業界に関わってきた経験も思い起こされる。「やっぱり三歳くらいまでは子どもと一緒にいたいし、そのほうがよいのではないか」と、思う。
2016-08-19 15:25:44#三歳児神話 ③この時期の子どもの成長はめざましい。いっとき、いっときが宝物のように思われる。学業をすすめるのに必要だから、現実には子どもを預けるのだけれど、この幼い人たちとできるだけ一緒にいたい、という感情は「神話」ではなくて、「実感」のように思われた。
2016-08-19 15:25:52#三歳児神話 ④今、自分が実感として感じていることが、なぜ「神話」といわれるのか。自分の実感は、「神話を信じ込まされている」にしては実に生々しいものであるように思うが、なぜ「三歳児神話」と言われるのだろう。
2016-08-19 15:26:49#三歳児神話 ⑤彼女は他のお母さん達への聞き取りをはじめた。一緒に保育所に子どもを預けているお母さんや先輩のお母さんたちが対象である。幼い子どものいるお母さんたちは、子どもはかわいくて、一緒にいたい、という気持ちはみんなあるのだけれど、
2016-08-19 15:28:41#三歳児神話 ⑥「ずっと子どもと一緒にいたら、密室育児になってしまうのではないか」「二人きりだと嫌なことがあったら、虐待してしまうのではないかと不安だ」「母親とべったり一緒にいないほうがきっと子どもに社会性が出ると思う」と、どこかの新聞で読むか、テレビできいたようなことをいう。
2016-08-19 15:28:48#三歳児神話 ⑦「三歳までは母の手で」というのは、「神話」ですよ、家でずっと子どもと一緒にべったりいる、ということは、実は子どもによいことはないんですよ、という「三歳児神話」の考え方は子どもを保育所に預けて働いている女性たちに、みごとに浸透していることが窺われた。
2016-08-19 15:33:27#三歳児神話 ⑧「三歳児神話」は、実際に女性たちの行動と考え方に影響を与えているのである。 働きに出るお母さん達は、「三歳までは母親の手で育てた方がよい」ということに合理的な根拠はないのだから、いま、子どもを預けて働いている、これでよかったんだ、と自分を納得させている。
2016-08-19 15:33:30#三歳児神話 ⑨ほんとうは子どもと一緒にいないと子どもがさびしくて何か影響があるんじゃないか、という気持ちはどこかにはある。後ろめたさも少しある。
2016-08-19 15:33:32#三歳児神話 ⑩でも、それは「神話」なんだから、気にしなくてもいいんだ、男女は平等なんだから、私だけ後ろめたく思う必要なんてないんだ、と自分に言い聞かせていたように、みえた。
2016-08-19 15:36:43#三歳児神話 ⑪お母さんたちの実感がともなっているようで伴っていない。無理矢理に自分を納得させようとしているのではないか。本当はみな、幼い子どもと一緒にいたいと思っているのではないか。
2016-08-19 15:36:45#三歳児神話 ⑫調査した学生はすっきりしない。「お母さんたちがこう言っていてもなんだか腑に落ちない。腑に落ちないのにうまく議論もできない」という。彼女の論文を指導する立場の私もすっきりしなかった。何だかもやもやと、妙な気がする。「三歳児神話」を議論しようとしても、うまくできない。
2016-08-19 15:36:47#三歳児神話 ⑬それは「神話」というネーミングのせいだ、と気づくまでにしばらくかかった。科学的根拠というのは、ただ、そこに科学的根拠があるだけでは、行動を変えるには至らない。科学的根拠のみで人間の行動が変わるのならば、苦労はしない。
2016-08-19 15:39:23#三歳児神話 ⑭人は科学的根拠だけでは変わらない。そこに何らかの物語性、自分を納得させるストーリーが付与されるから、変わるのである。
2016-08-19 15:39:25#三歳児神話 ⑮「三歳児神話」は、「三歳まで母の手で」ということに科学的根拠(あるいは合理的根拠)はない、ということを主張したから、母親たちの考え方に影響を与えたのではない。それを「神話」と呼んだからこそ、そこに物語性が付与され、影響力をもったのではないか。
2016-08-19 15:41:36#三歳児神話 ⑯「三歳までは母親が育てる方がいい?それは神話ですよ。迷信ですよ。そんなことを信じるあなたはとても遅れた人ですよ」——そういうメッセージが受け取られていく。
2016-08-19 15:46:37#三歳児神話 ⑰遅れている、とは、差別や理不尽な抑圧を認めることを意味する。近代的な進歩がよし、とされる現代では、遅れることは、怖い。「遅れた」人間になりたくない。
2016-08-19 15:47:32#三歳児神話 ⑱「子どもは気になるけれど、こんなことを気にしているわたしは遅れているんだ。女性が自立して、よい生き方をするためにはこういう考えは振り捨てなければ」と母親たちをして思わせたのは、
2016-08-19 15:47:47#三歳児神話 ⑲「ずっと子どもと一緒にいたら、よくないだろう。密室育児で孤立してしまうし、そうすると、私も子どもを虐待するかもしれないから」と思わせたのは、科学的根拠に基づいた調査の結果ではない。「神話」というそのネーミングゆえである。 実に巧みなネーミングであったと言えよう。
2016-08-19 15:48:09#三歳児神話 ⑳「三歳児神話」は科学的根拠からではなく、そのネーミングから広まり、多くの母親たちの行動様式に影響を与えるようになったのである。 以上、三砂ちづる著「女が女であること」より。 本は「三歳児神話」が広く行き渡ることによって、何を得、何を失ったのかと続く。本を買って。
2016-08-19 16:00:31