宮崎駿はポニョのドキュメンタリーでこういってる(うろ覚えだけど)。「ファーストカットが決まると、映画の大部分は決定してしまう」。これは宮崎駿のように天才じゃない、凡人の自分にも分かる。
2011-02-16 12:04:34つまり、ファーストカットが決まると、結末が決まってしまう。そして結末に至るまでに必要なシーンも決まってしまう。たとえば、ラピュタで言うと……
2011-02-16 12:05:59飛空挺で悪漢に追われる女の子→女の子が落ちる。となれば、これはもちろん女の子を救うお話であり、悪漢は敗れるお話だ。するとその女の子を救う人間が出てくるシーンが必要になり、女の子がなぜ追われているかのシーンが必要になり、むろん悪漢を倒すシーンが必要になる。
2011-02-16 12:08:50凡人な自分はこの程度だけど、宮崎駿クラスの天才になれば、どのシーンにどれだけの時間が必要で、そのためにはどんな演出が必要になるかは、すぐに計算できてしまうだろう。これをして「最初のシーンが決まると、映画の大半が決まってしまう」と言っているのだ。
2011-02-16 12:10:49で、口汚い往年のファン(俺とか)は、最近の宮崎映画にこういうわけですよ。「最近の宮さんのシャシンはわけわかんない」「ラピュタのようなエンタメがなぜやれない?」「物語になってない」「麒麟も老いては駄馬にも劣る」とか(俺とか)
2011-02-16 12:15:08みなさん知っての通り、宮崎駿は絵コンテを途中まで描いて、そのまま制作に突入します。むろんこれは制作スケジュールが押せ押せになってしまうために、仕方なくやってることですが、しかしもう一面として宮崎駿が意図してることがあるわけです。
2011-02-16 12:18:52つまりです。宮崎駿はファーストカットの時点で、結末まで見えてしまうわけですよ。これを監督になった1970年ぐらいからずーーーーーっと繰り返してるわけです。あなたが天才宮崎になったことを想像してみてください。かなり難しいと思いますがw
2011-02-16 12:22:46どんな企画を思いついても、ファーストカットを思いついた時点で、全てのカットが見えてしまう。「つまらない!!」と思いません? 「これでいいのか?」と思いません? 「ありきたりだ!」と思うだろうし、もしかしたら「このまま作ることは観客に真摯に対峙してない!」と思うかも知れません。
2011-02-16 12:25:11そこであなたは考えるわけですよ。「今は思いつかないが、もしかしたら作業中になにかインスピレーションが下りてくるかもしれない……」
2011-02-16 12:28:26かくて、ハウルは絶対に解決しきれない問題が後半に集中することになり、ポニョは悲劇を回避しようとするあまりにボンヤリとしたよく分からない映画になってしまうわけです。 http://bit.ly/fOj1c7
2011-02-16 12:30:46そして、宮崎駿を苦しめているジレンマがあるのです。それは彼が『子供が見る長編漫画映画は必ず希望を持ったハッピーエンドでなければならない』と思い込んでいることです。これが実は最大にキツイ枷になっているのです。
2011-02-16 12:33:57だから宮崎映画は、かつての『物語を越えた何か』をもたらした(そして物語的には破綻した)名作達の取った「投げっぱなしエンド」とか「主人公が挫折して終わり」とか「解決できない謎を残し物語は終わる」とか、そういうことができない。そしてなにより……
2011-02-16 12:37:04ラピュタでラスト5分で出てきたキャラが「バルス!」と唱えて、ラストの「さんざん苦労してこれっぽっちとはね」「へへへ~!!!」で笑えるかって話ですよ。残念ながらかなり難しい。
2011-02-16 12:40:47だから宮崎駿が天才な以上、宮崎映画がラピュタのような典型的な、美しい、完璧なエンタメに戻ることはないのです。なぜなら彼は天才だから。しかし!!
2011-02-16 12:43:18映画というのは完璧であればいいという物ではありません。多くの名作映画は「よくできてない」部分。ライムスター宇多丸先生の言うところの「ほつれ」があるものなんです。その「ほつれ」が映画を豊かにすることもあるのです。
2011-02-16 12:45:20聞くところによると欧米の評論家の間では「ラピュタ」より「千と千尋」の方が評価が高いと聞きます。糞アニメファンの俺に言わせると「千と千尋」は駿作品の中では下から数えた方がいいゴミですが、そんなことはないわけです。
2011-02-16 12:47:38つまり完璧だった駿先生は、行きすぎることで図らずも「映画の醍醐味であるほつれ」に到達したのです。ある意味、彼は勝った。宮崎映画を越えたんです。これから作られる作品もまた、我々の予想を超えた、めくるめくものになるでしょう。
2011-02-16 12:49:33