フォビドゥンフォレスト1話後編4・森海探索開始

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フォビドゥンフォレスト@カクヨム投稿中 @fbd_forest

「フォビドゥンフォレスト1話後編3・出陣の義~禁忌の森へ」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1016521

2016-08-26 02:42:01
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車が出発する。後ろからはラッタの父ちゃん達の車も付いてくる。(目線ねぇ…)俺は何となく瑠梨の言葉を連想した。 「マジックミラーって何も見えねぇときは、向こう側から丸見えなんだよな…」 「え?」 恵里が怪訝そうな声を出す。 「いや、何でもねぇ」 車は真っ暗な闇へと進んでいく。

2016-08-28 23:23:38
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車は夜道を進む。さっきまでいた森の真ん中は拠点も近く平地なんで除雪車が入りやすいから良かったが、今向かう東側は坂や谷が多く、奥まで入れねぇ。積雪は浅いとこでも50cmはある。ついでに西側は全体に標高が高く岩場も多い。登っちまえば見晴らしが良くて楽だが、当然それまでが面倒だ。 1

2016-08-28 23:26:28
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雪崩の恐れもあるし、東西どっちも本当なら3月くらいまでは入りたくねぇところだ。冬場は妖怪も猛獣も出にくいから、なんも無きゃ中央の平地を徹底的に整備点検しとく。そして雪解けが始まる3月から完全に無くなる5月にかけて、徐々に東西に点検範囲を広げていく。そうして夏や秋に備えんだ。 2

2016-08-28 23:32:26
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ついでに南北についても話すか。今走ってる森の南側はレベル0と呼ばれてるエリアだ。一般人が1日いても平気な安全圏だ。携帯にノイズは混ざるがな。こっから北の最深部までは5段階のレベルに分かれ、奥の北側へ行くほど障気が濃くなる。妖怪も強力になる上、体に害があり電波まで通じなくなる。 3

2016-08-28 23:37:17
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僚勇会メンバーでレベル4以上に長時間入れる耐魔力があるのは片手で数えるほどしかいねぇ。しかも奥ほど妖怪が強力な訳だから、相応の強さも必要だ。…残念だが耐魔力と戦闘力は必ずしも比例する訳じゃねぇ。両方の条件を満たせるのは、今、奥に遠征してる藤宮先輩とガイアの奴くらいだ。 4

2016-08-28 23:43:33
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短時間なら無理して奥に行けなくもねぇが、それは敵の居場所が判明してる時だけだ。んな訳で俺達は基本、レベル3以下に南下してきた一定以上に強い妖怪だけを倒す。雑魚共はまず結界を破れねぇから、襲ってこねぇ限りは放置だ。ていうか下手に手を出すと藪蛇になる。 5

2016-08-28 23:49:58
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9時15分頃になって森の東の入口に着いた。私有地内に除雪された駐車場と倉庫、後詰め所がある。桐葉さんは車の頭を南の出口側に向けて停めた。先に来た車も同様にしてる…緊急脱出の為だ。戦闘能力のある二両だけは、出口に垂直に他の車の盾になる位置に停めてるけどな。 6

2016-08-29 00:02:49
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俺達は車を降り、詰め所の北へ向かった。駐車場は一辺20mもない正方形で、詰め所はその半分以下の長方形の平屋、その北の広場は40人が並ぶとちょい窮屈だ。最初からここに集合しねぇ理由でもある。休憩も儀式も出来ねぇからな。部隊長のラッタの父ちゃん…永友雷牙が一同の前で話しだす。7

2016-08-29 00:11:26
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「よぉし。最終確認だ。今日は佐祐里ちゃん達を先頭に、後方は鶴翼の陣で行く。俺達後ろのは設備点検を優先しながらレベル3ギリギリまで進む。佐祐里ちゃん達は反応の探索を優先な。妖怪を発見した場合は引き付けながら後退して、釣り野伏せの要領で俺達と倒す。良いか?」 「はい!」 8

2016-08-29 00:13:24
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「なんか質問はあるか?」 「はい!私達で別に倒しちゃってもいいですか!」 恵里の奴がまたアホを吐かした。 「ああ、勿論良いぜ。ただ出来るだけ巣は特定してくれよ。可能なら逃がさんように泳がせてくれたほうが良いな。どっちにしてもぜってぇ無理すんなよ」 「巣を?何でですか?」 9

2016-08-29 00:22:46
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「アホかお前…何でこんな探知しにくかったんだが、調べる為だろうが…」 「あ、そっか」 別に全ての妖怪が巣を持つ訳じゃねぇが、ネグラや拠点くらいは大抵ある。洞窟の奥なんかだと探知しにくい。ここまで探りづれぇのは滅多にねぇことだけどよ。巣探しは初めてじゃねぇだろうにコイツは…。 10

2016-08-29 00:34:18
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「あ~春坊。その通りなんだけどよ、俺が聞かれたからには俺が答えときたかったんだがよ、部隊長的にな」 「あ、すんません…」 「もう、ハルったらしょうが無いんだから」 「「ハハハハ!」」 ちょっと待ておい…この流れで俺が笑われんの納得いかねぇんだが…恵里の奴め。 11

2016-08-29 00:37:18
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-小隊ごとに簡単な打ち合わせの後、俺達はいよいよ森に入る。途中、倉庫に寄って手押し除雪機を持っていく。車幅が男の肩幅ほど、車高は胸くらいまでで静音仕様の奴だ。一台ニ・三百万はするらしい。木々の間隔が狭く、除雪車は無理だが、コイツならレベル2の途中までは入れる。 12

2016-08-29 00:45:51
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色は赤く側面に青LEDが眩しい。ラッタが先頭に立って押すと両脇前方に雪がすっ飛んでく。その後ろに佐祐里さん、恵里、殿に俺の順だ。俺は背中に通信機付きの特殊なリュックを背負っている。普通のより持てる荷物は少なく、巻き取り式通信ケーブルが後ろに延び、LEDトーチが生えてる。 13

2016-08-29 00:53:52
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俺達の無線通信機は瘴気対策済みだが、それでもレベル1で既にノイズが入る。2の奥では、もう互いの顔を認識出来る距離以下でねぇと交信出来ねぇ。3の奥以上だと…もう直接話したほうが早い。開けたとこだと多少マシだが。んな訳だから先頭集団とその真後ろだけは有線ケーブルで直接通信する。 14

2016-08-29 00:58:23
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ケーブルの無い横の隊とは閃光弾やドローンで位置確認や連絡をする。互いのトーチが確認できる距離なら理想的だが、視界のいい高所を通れるルートは殆どねぇんだ。かと言って密集し過ぎると、探知出来てねぇ敵が複数来た場合に包囲されちまう。この辺がこの森の厄介なところだ。 15

2016-08-29 01:06:18
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勿論、あちこちに武器や食料を隠したり、避難所を作ったりと対応策は考えてある。俺達の装備もそうだ。茶色のコートに蛍光材、寒中装備とは言い難い程に目立つ。白はむしろ夏場に着る。味方からの視認性が最優先だ。銃器も射程より命中精度重視。なんせ味方が互いに見えねぇから誤射防止が優先だ。16

2016-08-29 01:14:08
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そんなにピカピカ光って妖怪に見つからねぇのかって?連中の視力は大抵、人間とは大分違う。俺達が透明でも見つけるほどすげぇか、全身クリスマスツリー状態でも気付かねぇか、に二極化される。連中は音や臭い、魔力反応を頼りにしてる。ここでお祓いが活きてくる訳だ。 17

2016-08-29 01:20:43
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「やだ、雪だ」 恵里が西の空を見て呟く。見れば粉雪みてぇのが降りてくる。 「いや、逝忌夢死だろ」 雪虫の誤変換じゃねぇ。ありゃ北の方の昆虫だ。遠目には似てるがコイツらは低級妖怪だ。風に吹かれて漂いながら、獲物を見つけると自ら飛んで行き、集団で纏わり付いて生気を吸って殺す。 18

2016-08-29 01:30:12
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蟲共が、北西の風に吹かれてこっちにふわふわと飛んで来る。ざっと数百はいる。まだ遠くのを入れりゃ更に数倍はいるだろう。俺達が構わずに直進すると一匹一匹の数を数えられそうな距離まで近づいて来やがった。連中の探知範囲だ。俺の髪や服の中にいるエイジ達が軽くカチカチ警戒音を出し始める。19

2016-08-29 01:37:06
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東から微風が吹く。流石に匂いにも気付かれたろうが、襲って来る筈の蟲共は逆に一斉に逃げ出した。ある者は再び吹いた西風を押し返す勢いで西へ、ある者は風に乗りつつも俺達を避けて東側へと散り散りになった。これが祓いの効果だ。妖怪に気付かれにくくなり、気付かれても雑魚なら逃げてく。 20

2016-08-29 01:43:34
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10時20頃。レベル2入口付近の橋を渡って一息つく。それぞれが携帯してる食料や水を少し口にする。機械式とはいえ除雪機を持ち続けたラッタは、なだらかな岩の上でだらんとしてる。その間に佐祐里さんは除雪機を点検し、俺と恵里は2人の周囲を警戒する。 21

2016-08-29 01:49:37