夏休みはエンゲキ！舞台『ジャングル大帝』＠日暮里サニーホール（2016/8/28）

TAKASHINA,Tsunehiro @J_for_Joker

【＃ジャングル大帝】夏休みはエンゲキ！舞台『ジャングル大帝』のことなど。幼少のみぎり、テレビで見ていたもののたぶんコンプリートはしておらず、また内容もちゃんとは理解できておらず、そして手塚治虫の原作は読まないままだった。なので、まずその内容の展開に素直に驚いた。

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【＃ジャングル大帝】会場に入ると足元の無数の葉っぱと、巨大な木と長いスロープというスケール感のあるオブジェが目を引く。子どもになって駆けめぐりたい！と思わせる魅力的なプレイパーク。舞台美術は加藤ちかさん。2年前『おこめ』でご一緒した方。そうスタッフがすごいメンツなのだ。

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【＃ジャングル大帝】『おこめ』でご一緒したのは、ちかさんだけではない。舞台監督の吉木均さん、照明の大迫さん（客電がフェードアウトする入口の部分でぐっとつかまれた。まずあれがすごいと思った）、演出助手の松本予右介さん（当時と名前が微妙に違うけど同一人物だと思う）、そして……

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【＃ジャングル大帝】音楽は『おこめ』の寺田英一さんだけでなく、最初の「夏休みはエンゲキ！」から関わっている棚川寛子さん。この二人が繰り出す音楽がとにかくいい。何かをおしゃべりしているような音楽、風景が流れ出す音楽、祝祭としての音楽、この音楽だけでも手塚治虫に聞いてほしいと思った

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【＃ジャングル大帝】宣伝美術の高橋真美子さんのことも。ポスターやチラシをじっくり見た人なら、手塚治虫のジャングル大帝の名場面が、尋常ならざる枚数のちぎり絵でできていることに気づいて驚嘆したはずだ。公演はあそこから始まっていたのだ。 acc-arakawa.jp/event/act/2016…

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【＃ジャングル大帝】大人の俳優陣もそれぞれがプロフェッショナルに、キャストの一員として生の舞台を支えていく。彼らの鍛えられた声や体が、ともに舞台に立つ共演者としていることで、子どもたちをどれだけ刺激し挑発したか。たぶん「あんな風になりたい」と思った子も多いだろう。

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【＃ジャングル大帝】何だかちょっと泣けてしまったのが、キャストである子どもたちが、舞台上で、おそらく大好きな大人の俳優と手をつないで欲しくて押し寄せたりして、それが舞台の意図とマッチしていて、自然でいきいきとしていてジャングルの生き物たちそのままで、しかも演技として成立していて。

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【＃ジャングル大帝】そう。この舞台の主役は何と言っても公募で集まった30人の子どもたちなのだ。会場に入った時に第一印象で思った「子どもになってここを駆け巡りたい」という夢をぞんぶんに果たして楽しそうで、でも1時間35分の長丁場を高い集中力で演じきって、それぞれに見せ場がある。

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【＃ジャングル大帝】ほぼ全員が一度はレオを演じたのだろう。「全員が主役」とだけ聞くと幼稚園のお遊戯会みたいで鼻白んでしまうのだが、舞台『ジャングル大帝』ではレオの成長（心技体の成長）を表す演出としてそれを巧みに実現していて舌をまく。ああ、そして衣装だ。コロンブスの卵の衣装。

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【＃ジャングル大帝】「夏休みはエンゲキ！」は来年も予定されているらしい。来年の夏になったらぼくはプッシュするので、どうか一度は足を運んでほしい。特に学校教育に演劇を取り入れようとしている人や、地域起こしのネタを探している人は必見だと思う。全国から視察が集まるものになりそう。

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【＃ジャングル大帝】例えば昨年も出演した子が全体の4分の1くらいいて、客席にも昨年の出演者たちが大勢詰め掛けたらしい。通常の環境ではありえないようなハイレベルな舞台作りを体験した子どもたちは、ある種の専門性を身につけた筈で、それは演劇に限らずほかのどんなジャンルでも生きるだろう。

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【＃ジャングル大帝】舞台作りを体験した子どもや、そのプロセスを目の当たりにした保護者たち、友達の晴れ舞台を見るつもりが、ハイレベルなセンスがで作り込まれた演劇に触れる子どもと保護者たちの数が増え、荒川区には「舞台を見る目」が育っている。この場所から生まれ育っている。

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【＃ジャングル大帝】少々大げさだが、昨年の『おしいれのぼうけん』と今回の『ジャングル大帝』を見て、荒川区でこの土地発の文化が生まれようとしている瞬間に立ち会っているという感触を得た。今年で2年目。来年で3年と続くことで、それはますます確固たるものになっていくだろう。

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【＃ジャングル大帝】理屈はさておき、舞台そのものとしてとても楽しかった。幕も引かず、舞台転換もなく、暗転の処理もない、映像でいうなら言うなら「ワンカット＝一発撮り」の1時間35分、狩猟民の暮らすアフリカのジャングル、海、都市、サバンナ、厳寒の山頂と一つの空間が変化していく。

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【＃ジャングル大帝】生命力をコントロールしきれないような子どもたちが、あるいはジャングルの生き物として、植物として、風景としてアフリカを体現する。鍛錬した大人の俳優陣が自然現象や、乗り物での移動といった情景をユーモラスに、想像力を刺激する形で表現する。

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【＃ジャングル大帝】子どもたちが全員で歌う「空」という曲はそのまま切り出してYouTubeにでも載せておいてほしい。できればそれを見守りながら演奏する楽団（その多くはキャストでもある）の表情も含めて。子どもたちの歌い出しを笑みを浮かべて見守る大人の共演者の表情も忘れられない。

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【＃ジャングル大帝】歌を歌い、群舞で踊り、駆け巡り、演技する舞台は、ミュージカル映画や宝塚歌劇をこよなく愛した手塚治虫へのオマージュにもなっており、同時に子ども向けの作品であってもヘヴィなシチュエーションや悲劇から逃げることなく書き続けた巨匠へのリスペクトもあり。

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【＃ジャングル大帝】有名な原作を脚本化し、夏休み中のたった15日の日程で舞台に仕上げた作・演出の司田由幸の手腕、というかセンスに大きな拍手を送りたい。彼は「夏休みはエンゲキ！」のフォーマットを立ち上げた張本人であり、クレジットこそなかったものの昨年も同じ立場で公演を成功させた。

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【＃ジャングル大帝】司田由幸は自身が創意に満ちた才人というだけでなく、キャスト・スタッフのあらゆる領域に、同様に創意に満ちた才人を知っており、彼らを集めて共同で作品を作り上げる才能にも恵まれている。実はそここそがかれの凄みからもしれない。来年は何を仕掛けてくるのかとても楽しみだ。

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【＃ジャングル大帝】少々気の長い話だが、荒川区のこれからも楽しみだ。作り手側にも見る側にもいい目が育っていくことだろう。どんな才能が生まれてくるか、どんな文化が生まれてくるか。「夏休みはエンゲキ！がきっかけだったね」と言われる日が来るのはそう遠い先の話ではないかもしれない。