フォビドゥンフォレスト1話後編6・索敵

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「フォビドゥンフォレスト1話後編5・山小屋休憩」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1018121

2016-08-30 02:30:26
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フォビドゥンフォレスト1話後編6・索敵~遭遇

2016-08-30 23:14:49
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(前回のあらすじ:後方部隊と距離が空いたんで山小屋で少し休んで調整することにした俺達。ラッタと恵里を先に寝かせ、先輩と雑談をしていた。二人と交代しようとしたところで、妖怪の接近を感知した。恵里に正確な敵の情報を探らせて作戦を立てようとしたが…あのアホ娘、一人で飛び出しやがった!)

2016-08-30 23:22:49
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4~50mほど足跡を追っかけると恵里達に追い付いた。小屋から北西に緩やかに曲線を描く経路で、道中、前方が見えにくいんで少し焦った。 「おいコラ恵里ぃ!」 「あ、ハル遅かったたわね。大丈夫?」 俺が怒鳴りつけるも、アホ娘は意に介してねぇようだった。このアマ…。 1

2016-08-30 23:25:30
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「そりゃこっちの台詞だアホ!一人で走ってくんじゃねぇよ!」 「そ、そんなに怒らないでよ!?早いところ敵の数とか知りたいじゃない。それにすぐついてくると思ったのに遅いじゃない」 「俺のクワガタ軍団をお忘れじゃねぇですかね、恵里先生様よう?」 「あ、そっか、ゴメン」 2

2016-08-30 23:26:19
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確かに正確な情報は大事だし、こっちの都合良く策敵できるとは限んねぇから場所を移すのも分かる。一理はあんだよ。だから会長も苦笑はすれどあんま怒ってはいねぇんだけどよ…。 「エイジ達がいりゃ距離くらいは分かんだから焦らなくても良かったんだよアホめ…」 「ゴメンってば…」 3

2016-08-30 23:29:48
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「ハル、そんくらいにしときなよ」 「わぁってるよ」 恵里のやつ完全にしょげちまってるしな。エイジ達の存在と能力を完全に忘れてやがったんだろうな。損ならコレ以上追求してもしゃあねぇ 「それで恵里ちゃん。楽進盤の様子はどうですか?」 「うん。近付いてきてる」 4

2016-08-30 23:41:37
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「多分、200mくらいですかね。数が多いのか強いのか、両方か…コイツらも怯え…痛っ…緊張してます」 俺も頭上のエイジ達の様子を見て補足する。今わざと足で刺しやがったぞコイツ。ビビってるくせに…。 「結構ゆっくりですね…今のうちにあそこに移動しましょうか?」 先輩が林を指差す。 5

2016-08-30 23:46:24
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前方、つまり北側にある林は木々の間隔がこっちより開いてる。木漏れ日で雪融けしてるところもこっちより多そうだ。後方部隊と挟み撃ちする為に身を隠すなら、それも良いかも知れねぇ。連中の移動速度は遅いようだし間に合うだろう。俺達は移動を開始した。その間も恵里は左腕の楽進盤を操作する。 6

2016-08-30 23:50:37
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楽進盤(らしんばん)は妖怪や遭難者の索敵に使えるマジックアイテムだ。腕時計を全体にでかくした感じで…ベルトの太さが普通の腕時計の倍のゴム素材、本体の直径は15cmちょい、盤全体を透明な球面が多い、頂点と盤の間は1・2cmくらいだ。同心円上に20種類くらいの盤が重なってる。 7

2016-08-30 23:58:55
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盤の文字はアラビア数字、漢数字、十二支・十干、十二星座、ルーン文字、エノク文字、梵字…ともうよく分かんねぇ。コレを外側に突き出てる曲線のツマミで回すんだが、これを分かって操作してるとしたら恵里の奴、実は俺より…?いや、んな恐ろしい事実が合ってたまるかよ。直感の筈だ。 8

2016-08-31 00:07:13
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楽進盤で調べた結果は、中央の直径5cm程の鏡から球面を介して上に映写される。妖怪の種族や人間個人の特定は出来ねぇが、数と強さ、位置なんかが分かる。範囲を広げるほど細かい情報は分からなくなるし、瘴気によるジャミングにも配慮して操作しなきゃなんねぇ。誰でも使えるもんじゃねぇんだ。 9

2016-08-31 00:11:28
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盤の操作はタロットカード占いの逆を行くところがある。カード占いは札の切り方や並べ方は誰でも真似出来るが、出た札の意味を読み解くのに直感がいる。一方、盤は結果は誰の目にも同じだが、人によって盤の回し方が違ってくる。勿論、やり方を間違うとそもそも結果が出ねぇ。 10

2016-08-31 00:16:47
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…お前、今の分かったか?安心しろ。言ってて俺自身混乱してくる。操作説明を聞いた奴は皆こんな感じだ。この辺を素直に受け止め直感的に操作できる奴の為の装備みてぇなもんで、風科で一番上手く使えんのが恵里だ。エイジ達と話せる俺と二人合わせて索敵に最適な人選だな。半分は偶々だがよ。 11

2016-08-31 00:22:27
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恵里は先輩に先導されながら進み、俺はラッタから通信機を取り戻しその後ろを行く。アイツ自分は休んだから背負ってくと抜かしやがったんだ。そのラッタは一足先に林を探っている。敵の距離は150ちょいだ。 「出た!…え、嘘!」 恵里が盤から映写される表示を見て驚いてる。どうした? 12

2016-08-31 00:34:35
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「数は…いっぱい。大きいのが5、小さめのが…いっぱい」 流石の恵里も小1の学習範囲…1・2桁の数が分からねぇ訳じゃねぇだろう…多分。足を止めた恵里に追いつき右肩から覗き込む。大小無数の光点が不規則に動き回っている。こりゃ数えんねぇわな。 「17だろ」 代わりに俺が数えた。 13

2016-08-31 00:40:24
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「強さは?」 「小さい方でC級 、大きいのはB級以上…まあAってことはないと思いますけど」 妖怪の等級は俺達人間と同じように数える。俺達で言えば、俺がB、他3人がAだ。俺が一番弱ぇよ。悪かったな。で、一個下のランクの奴相手なら2、3体相手が限度ってところだ。 14

2016-08-31 00:45:16
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敵の正体や能力の相性、互いの連携精度でも変わってくるが、俺達だけで倒すのはキツいな。単純に数が多い。そう考えているとエイジ達も震えだす。ハサミの動きで強さ、腹の動きで数を知らせてくる、が楽進盤と数が合わねぇ。 「恵里、範囲広げろ。多分もっといる。どうなってんだこりゃ」 15

2016-08-31 00:49:24
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冬場だってのに数が多すぎる。どんだけ人を食ったらこんな増える?この近くで行方不明情報なんて聞いてねぇぞ?俺がそんなことを考え、恵里が盤を再操作し始めてると佐祐里さんが制止した。 「その前に身を隠しましょう」 「え、戦わないんですか?」 正気かコイツ。 16

2016-08-31 00:56:30
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「敵の陣形、と呼べるかは分かりませんが進軍は間延び気味ですし、連携次第では勝てなくもないでしょうが、ここはやり過ごしてから引き返して挟み撃ちにしましょう。正体も敵の第二陣の数も不明ですし」 俺なら「アホかお前」と一蹴する所を、会長は丁寧に説明してくださった。恵里も頷いてる。 17

2016-08-31 01:00:17
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人里まではまだ数キロあるし、後方部隊も健在だ。俺らだけで無茶する必要はねぇ。 『よし、お前達は敵をやり過ごしながら正体と数の特定に努めろ。敵の動き次第では援軍も送る』 桐葉さんからの指示。両翼の部隊へはまだドローンは飛ばしてない。数に限りがあるし、敵の情報を得てからだ。 18

2016-08-31 01:05:21
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「皆!もういいぜ」 ラッタが声を押し殺し気味に呼び掛けてきた。俺達が話してる間、熱の出るロッドで雪の窪んだとこを広げてたんだ。 「そろそろ隠れましょう。もう100mは切ってます」 恵里が盤を見ながら言う。索敵範囲を広げた代わりに第一陣はまとめて二・三個の光点に見えてる。 19

2016-08-31 01:09:00
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あと5分とせずに接触するだろう。その後ろの第二陣は一・二個の光点…つまり第一陣よりは少なそうだ。未確定情報だが桐葉さんに報告して雪穴へ移る。背中のトーチライトも消し、お守りを握り締める。祓いの効果を集中させる為だ。全員で息を殺す。雪が音を吸い、辺りは無音となる。 20

2016-08-31 01:13:22
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1分。2分。ここで偵察に出したカラス型のドローンが戻ってきた。ラッタがドローンをスマホに繋いで映像を再生する。体高1mほどの蜘蛛が映っていた。 「バケグモかぁ…」 「マダラバケグモだな」 俺が補足する。体の模様は見えねぇが牙や単眼の配置からして間違いねぇ。 21

2016-08-31 01:19:20
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30秒ほどの映像には体高50cmくらいの小型…いや中型の個体も何体か確認出来た。こっちは成長途中で他の種類と判別しづらいが、まず同種族だろう。 「やべぇぞ。桐葉さん。これ二陣で終わんねぇかも」 『どういうことだ?』 「連中は巣分かれすんだよ…最悪コイツラと別に巣がある」 22

2016-08-31 01:24:30