シルバー・シュライン・ライク・ア・バレット

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(親愛なる読者の皆さん:今回の連載エピソードはオーディオドラマ脚本のために書き下ろされたもので、今回初出となります。オーディオドラマをゲットしている方は、読んで聞いたり聞いて読んだりしてみる楽しみも御座います)

2016-09-03 21:02:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カタオキは……シルバーキーは目を開いた。コンクリート天井。身を起こした。首に包帯が巻かれている。痛みは無い。壁には「安らぎ」と書かれたショドーが掛かり、棚にはフクスケとコケシが置かれていた。「フクスケ……やれやれ」バシダのクリニック。処置が済んだと考えていいのだろうか。

2016-09-03 21:03:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼はキョート共和国から遠く離れたこのネオサイタマまで強行軍の旅をし、脊髄にインプラントされた非道な位置情報発信装置の切除手術を受け……「いや、実際はそう簡単じゃない」「え?」シルバーキーは声の方向を見た。逆モヒカンの男が座っていた。「あンたはデッドムーン=サンだっけ」

2016-09-03 21:06:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その通り」「ここは手術室だぜ。なんで、運び屋のあンたがここにいる?」シルバーキーは指さした。指さしてから、なぜ自分はこの男の事を知っているのか、訝しんだ。「確かあンたとは……ええと」「つい何時間前かにアイサツしたばかりさ。現実でな」

2016-09-03 21:09:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「現実?って事は、ここは……」シルバーキーは徐々に思い出し始めた。デッドムーンは眉一つ動かさず答えた。「そう。ここは夢だ。俺も、お前のイメージ」「ああ……そういう事」シルバーキーは頭を掻いた。「つまり、この手術室ってのも……」「イメージ」

2016-09-03 21:12:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デッドムーンは肩をすくめた。「発信装置を取り出し、破壊するまで、お前さんの位置情報はザイバツに送信され続けてる。こんな部屋に留まって手術ができるとお考えかね。それこそ、甘いね……その間ギルドの連中のひっきりなしの歓迎を受け続けるか?」

2016-09-03 21:16:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そう……だよな」シルバーキーはデッドムーンの肩越し、個室出入り口の「新撰組」とミンチョ体で書かれたノレンを見た。ノレンの向こうは闇だ。いや、ネオサイタマの夜景である。高速で流れてゆくネオン看板の光。風を切って走る!「オイまさか」

2016-09-03 21:21:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「思い出して来たか?」とデッドムーン。「そのまさかだろ」ゴウ!シルバーキーはスピードの中に放りだされた。

2016-09-03 21:22:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャスレイヤー」第二部「キョート殺伐都市」より:【シルバー・シュライン・ライク・ア・バレット】

2016-09-03 21:23:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼は離人症めいて己の肉体を見下ろした。彼の身体は今、瓦屋根シュラインを戴くクロームシルバーの車の中にある。武装霊柩車の中に。「霊柩車!死んだか!幽体離脱現象か!」シルバーキーは思わず狼狽えたが、すぐに己の状況をあらためて思い出した。

2016-09-03 21:25:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーの隣には、衛生マスクと手袋を装着した厳しい目つきの女性が座っている。彼女の名はバシダ。闇医者だ。彼女の手元には手術道具。然り……インプラント切除手術は今まさに始められようとしている。ハイウェイを走る武装霊柩車の車内において!

2016-09-03 21:29:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(正気か?アンタら)デッドムーンはニンジャスレイヤー達から依頼を持ちかけられた際、その計画について、一度だけ訊き返した。彼の問いに首を縦に振った者は誰もいなかったが、ともあれ彼は仕事を受けた。プロフェッショナルだからだ。

2016-09-03 21:33:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シルバーキーのインプラントはいまだ位置情報を発信し続けている。ゆえに長時間の手術を行えば、集中的な攻撃をザイバツから受ける事となろう。そこで苦肉の策として選ばれたのが、ハイウェイを走り続ける武装霊柩車の車内だ。武装霊柩車の装甲は戦車のように強靭で、サスペンションは最高だ。

2016-09-03 21:38:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(ウーン、できなくはないよ)闇医者バシダは意外にもこの無謀な計画に乗った。(手術室にニンジャが雪崩れ込んでくるよりは、やり易い)殺人鬼ニンジャの狼藉に巻き込まれ、NRSを発症していた彼女であったが、正気に戻ってみれば、驚くほど自信に満ちた、一種独特の矜持を持ち合わせた女性だった。

2016-09-03 21:42:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

かくして今、武装霊柩車ネズミハヤイDⅢの運転席にはデッドムーン、車内霊安室にはシルバーキー。そしてただ一人で手術を決行する構えのバシダが居る。そして、「待てよ。待て待て」シルバーキーは思い出そうとした。「ニンジャスレイヤー=サンは……今どこにいやがるんだっけ……?」

2016-09-03 21:46:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

映像記憶が捻じ曲がり、静止したハイウェイに赤黒のニンジャと強力なザイバツ・ニンジャのカラテが刻み込まれた。「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはハイペリオンの胸を蹴り、彼が発動させた恐るべきテイクザットユーフィーンド・ジツの広範囲衝撃波の範囲から武装霊柩車を逃した。

2016-09-03 21:50:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

武装霊柩車は彼らを尻目にロケット加速をかけた。「そうだ」シルバーキーは思い出す。最初に襲撃をかけて来たのは、このハイペリオンというザイバツ・ニンジャだ。広範囲に影響を及ぼす厄介な衝撃波を用いる敵をニンジャスレイヤーが引き受けている。だがもし更なるニンジャが襲ってきたら、誰が守る?

2016-09-03 21:56:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

懸念はそのままに、記憶が逆流し、現在の車内を見下ろす視点が戻って来た。麻酔を処置され意識を失った自分の身体を外から眺めるのは恐ろしいものだ。これもまた、ニンジャソウルが彼に与えたユメミル・ジツの一環であろう。やがてバシダが生命維持装置の接続を終え、医療メスを手に取った。

2016-09-03 21:58:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゾッとしねえ!」シルバーキーは己の肉体から目を背けた。執刀の瞬間を見たいとは思わなかったのだ。自分自身から注意をそらした事で、彼は、ハイウェイの遥か後方からザイバツ・シャドーギルドの尖兵が恐るべき速度で迫り来ている事を知った。

2016-09-03 22:05:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」トラックからトラック、車両から車両を飛び渡るのは、残像を伴うダークブルー装束のニンジャ!その身にはザイバツ紋!「やっぱりだ……来ちまったぞ!別のザイバツ・ニンジャが!畜生、こっちにニンジャがもういねえぞ、戦える奴が!」

2016-09-03 22:09:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

頻繁に車線変更を行って次々に車を抜かしていく走り屋のスポーツカーのルーフ上に彼は片膝着地し、遥か前方、目当ての電子信号発信源を視界内に捉えた。 「……武装霊柩車」彼は低く呟いた。「どこへ向かう……」彼の名はストームライダー。ザイバツのネオサイタマ駐屯部隊、ワイルドハントの部下だ。

2016-09-03 22:15:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

キョートからニンジャスレイヤー達を追い来たレッドゴリラはネオカブキチョで返り討ちの憂き目に遭った。その敗北は、ワイルドハントらの存在を軽んじて連携を怠ったレッドゴリラ自身のインガオホーである。だがワイルドハントとしても、手をこまねいてギルドの敵を放置に任せるつもりはなかった。

2016-09-03 22:19:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギルドはシルバーキーの脊髄信号を追い、非合法の運び屋の根城、武装霊柩車ネズミハヤイのガレージに襲撃をかけた。ハイペリオンのテイクザットユーフィーンド・ジツによって早期に決着をつける腹積もりであったが、ニンジャスレイヤーは自ら盾となって攻撃を阻み、武装霊柩車をハイウェイに逃がした。

2016-09-03 22:24:15
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