だぶさんのヒ素のお話

タイトルそのまま、結晶の人であるだぶ@fluor_doubletさんによるヒ素のお話をまとめました。
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山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

ヒ素の元素毒性の話は、エムズレーのこの本がすごく面白かったので、ご一読をおすすめしますえ。著者はプロです。/毒性元素 謎の死を追う John Emsley amazon.co.jp/dp/4621079638/… amazonJPより

2016-09-16 22:35:16
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

人間のヒ素耐性にはバラツキがあって、ヒ素に極端に強い人もいるという話から、トファナ水から、ヒ素と医薬品とのかかわりから、パリグリーンとナポレオンの死因の話まで。読ませる文です。絶対おすすめ本。

2016-09-16 22:38:22
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

ヒ素耐性がある人がいるっていうと、大昔、土呂久で中島飛行機がやらかした悪行を思い出してイヤなんだけど、ホントにヒ素耐性を持ってる人がいるみたいね。致死量を飲んでもピンピンしてるんだそうな。

2016-09-16 22:51:01
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

豊洲市場、地下の水に微量ヒ素 reut.rs/2cKND9G Reuters_co_jpより

2016-09-16 23:15:45
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

今はない、緑色顔料二種、シェーレグリーンとパリグリーン。多量のヒ素を含む。 pic.twitter.com/9TeNby7rs5

2016-09-16 23:45:52
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山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

あるところには、ヒ素、いっぱいあるもんなあ。気仙沼の端にみんなが低山ハイキングする山があって、登山口の周りにいっぱい転がってる。どの石もどの石も、多量のヒ素を含んでいる。ところがちょっと下に行くと、水にほとんどヒ素が出なくなる。鉄がみんなヒ素を沈殿させてしまうらしい。

2016-09-17 02:17:42
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

ヒ素のイメージの悪さは、古くから知られた古典的な毒物であるというのもあるし、土呂久の話も、あるいは大久野島の話もあるのだろう。お付き合いしたくない感情とは裏腹に、これもまた、野山にいっぱいある元素だ。

2016-09-17 02:20:58
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

そして、ヒ素の有害性もまた、ひねくれている。濃度と線形正相関なんてとってくれないらしい。

2016-09-17 02:25:32
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

ヒ素は様々な出方をする。気成でも熱水でもスカルンでも出てくる。そして酸化物や硫化物の蒸気圧が高いので、火山周りには特に多い。恐山や乳頭温泉など、ヒ素を含む温泉は少なくない。火山列島の日本にいたら、ヒ素と隣り合わせに住んでいるようなものだ。

2016-09-17 02:36:51
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

日本ではとにかくいろんなところにヒ素が出てくるんだけれども、九州山地の中心部、祖母傾山系にはヒ素の大鉱床が多い。土呂久鉱山もそのひとつ。ここでは、江戸時代から銀を掘っていて、明治に入ると銅鉛亜鉛を狙って掘ったのだけれど、とにかく多量のヒ素鉱物が出た。

2016-09-17 02:50:22
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

鉱石を酸化焙焼すると、多量の亜ヒ酸が昇華するので、これを農薬用などの目的で採り始めた。鉱業権者はコロコロ変わるけど、戦時中は中島飛行機(今の富士重工)が、戦後は住友が買った。

2016-09-17 02:52:37
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

昔の佐伯の頃から中島経営の時代にかけて、作業従事者の健康管理そっちのけ、環境汚染ぶっちぎりで、かなり悪いことをしたらしい。小さい集落のことだし、集落の人間は鉱山に雇われることがほとんどなので、ほとんどその話は表に出なかったのだけれども。

2016-09-17 02:55:06
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

戦時中は、ここのヒ素や明延あたりのヒ素を染料会社に渡して前駆体を作らせ、瀬戸内海の大久野島に送り、ルイサイトなどの含ヒ素毒ガスを作っていた。実際には報復を恐れほとんど使用しなかったらしいが、南方や中国では使用実績があったようだ。終戦直後、連合軍監督でこいつらは処理した。

2016-09-17 02:59:19
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

処理とは言っても船に積んで船ごと海に捨てるか、島のトンネルに放り込んでコンクリートで塗り固めるぐらいなんだけれど。大陸には多量に在庫があったので未だに問題になっている。

2016-09-17 03:00:50
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

土呂久の鉱害の話は戦後しばらくして、地元の学校の先生がその事実を掘り起こし、大問題になった。これ以降の話は有名なので端折るが、かつての軍事国家のどうしようもない姿勢がそのまま投影されている。亜砒焼きはその辺りにはいくつもあったのだけれど、なぜか土呂久だけが話題に上るよね。

2016-09-17 03:04:59
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

日本人の考えるヒ素のイメージは、このあたりから来ていることが多い。あとは食品公害だろうか。カレーもあるかもしれない。

2016-09-17 03:07:55
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

ヒ素というのは不思議な元素で、ちょこっと身体に入ると強壮剤みたいな薬効を示すらしい。鶏は少量のヒ素を含む飼料を与えないと成長不良を出すというし、馬に飲ませると途端に元気になるので、かつては競走馬のドーピングにもされていた。体重も増え、馬力も増すらしい。

2016-09-17 03:15:29
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

最初のケミカルな医薬品である梅毒治療薬サルバルサンは有機ヒ素化合物だし、今でも亜ヒ酸水溶液は白血病の薬として使われている。もちろん今日ではヒ素の発がん性をはじめ、多くの慢性及び急性毒性は解明されているのだけれども、未だに必須元素か否かは決着がついていない。

2016-09-17 03:19:18
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

どうやらごく微量のヒ素は、絶対悪の毒物というだけではないようだ、と見る人は多い。少量だと一過性の強壮作用があるが、続けて服用すると慢性中毒になる。大量だと急性中毒を起こす。そんな不思議な作用がある。決して有害性が線形に比例して出てくるわけではないのが難しい。

2016-09-17 03:24:58
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

だからと言ってヒ素が安全だと主張するつもりは毛頭ない。ただし、日本人は海藻からのヒ素摂取がかなり多く、そこで摂る量ぐらいには慣れているらしい。もちろんヒジキなどのヒ素は (AsO4)3- 系の無機ヒ素で、煮こぼすと減るが、完全に除去できるわけではない。

2016-09-17 03:32:39
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

どうやら、ヒ素は継続的な摂取によって、耐性がついて慣れるらしい。これには賛否両論あるようだが、実際に慣らして致死量以上の亜ヒ酸を飲ませたテストを学会でやったという話。もちろん無事だった。

2016-09-17 03:35:23
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

んでも、そのヒ素慣れの話は土呂久の話を思い出す。土呂久の鉱山で亜砒焼きをしていた頃に、「毎日耳かき一杯の亜ヒ酸は薬になる」みたいなムチャクチャを作業従事者に押し付けたらしい。ホントに毎日飲んでたかどうかはわからないけど、どうしようもなくダメな話だ。

2016-09-17 03:41:58
山猫だぶ㌠ 2日目東M46b@C99 @fluor_doublet

ひじきに入ってるのは、ヒ酸の有機エステルで、ヒ素上のリガンドは全部酸素だから「無機ヒ素」にカテゴライズされてるのよね。その逆は As-C 結合を持ってるのが有機ヒ素化合物になるんだけれども。アダムサイトやルイサイトみたいな毒ガスも有機ヒ素化合物よ。

2016-09-17 18:58:43