日々の療育から②~ゲームの提示の仕方~

日々こんなことを考えて療育しているよ、というお話。前回はこちら。 日々の療育から~大人を呼び捨てする子②・暴力への対応 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/1027624
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松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

今日のアナログゲーム療育の実践では、冒頭のゲームの提示の仕方について大きな気付きがあったので、備忘の意味も含めて報告したい。

2016-09-21 20:05:30
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

プレイを始めるにあたっては、ゲームの入った箱からボードやコマなどを取り出し、それらを所定の場所に配置した上で、改めて子どもたちにルールの説明をするが、この時のメンバーに多動・衝動性のあるお子さんがいると色々困ったことが起きる。

2016-09-21 20:07:47
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

たとえば、指導者の許可もなく箱からコマを取り出したり、すでに正しく配置したコマを勝手に動かす。指導者がルールの説明を始めると、出し抜けに質問したり、「俺このゲーム知ってる!」と言って頼まれてもいないのに指導者を差し置いてルールの説明を始めてしまう(そしてその説明が間違っている)。

2016-09-21 20:11:09
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

そこで都度都度「コマに触らないよ」「質問は説明が終わった後だよ」と注意しながら進めていくのだが、こうした全体進行を妨げてしまうような手出し・口出しは何度注意しても再発してしまうことが多く、また本人も悪気なくやっているだけにあまり強くも注意できず、対応に苦慮していた。

2016-09-21 20:15:18
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

どんな形でゲームの提示と説明を行うか考えているうち、かのジョースター卿の有名な格言が私の頭に降ってきた。「逆に考えるんだ。『あげちゃってもいい』と考えるのさ」と。 p.twipple.jp/er5Hu

2016-09-21 20:18:43
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松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

つまり、コマのセットやルール説明をする前に、子どもたちに満足行くまで自由にゲームのボードやコマを触らせてみたらどうなるだろうかと考えてみた。実際に小学校低学年のグループの前に何の説明もせずゲームを置いてみると、様々面白い現象が見られた。

2016-09-21 20:24:56
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

ある子はコマを取り、ある子はボードを拡げ、ある子はチップの入った袋を開け、思い思いにその手触りや動きを楽しむ。コマを積み木のように積んでみたり、ボードを裏返したり、チップをジャラジャラこぼしてみる。そして「ゴールはここだ」「ボクはこの白いコマを使う」など思い思いのことを言う。

2016-09-21 20:29:47
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

そんな動きが2分くらいあって、子どもたちが全てさわり尽くし、動かし尽くすと動きも落ち着き言葉も少なになってくる。徐々に私のほうに注目があつまり、一人がこう聞いた。「で、これどうやるの?」 その後にルールを説明すると子どもたちは非常にスムースにそれを聞くことができた。

2016-09-21 20:33:37
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

おそらくこれが正解なのだ。子どもの興味は、乳児期は視覚・聴覚・触覚に代表される感覚的内容から、徐々に言語的・概念的な内容へと移行していく。その移行期にある小学校低学年のお子さんの場合、手触りや色といった感覚的な興味への関心は大人に比べてずっと大きい。

2016-09-21 20:43:07
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

我々大人はゲームを構成するコマやボード、チップの色味や材質が、ゲームの本質とは何ら関係ないことを知っている。それだけに、子どもがゲームのコマやチップを触れたり動かすのを「意味もなく」触っている、動かしている、と考えてしまう。だがそれはおそらく間違いなのだ。

2016-09-21 20:50:57
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

子どもにとっては、ゲームのルールや勝利条件よりも、コマとコマを重ねたら立つのか、チップをこぼしたらどんな音をするのかが真っ先に知りたい情報なのだ。そう思って改めてこれまで自分が使ってきたゲームを見てみると、ゲームの方でも触って欲しくなるようにデザインされていることに気づく。 pic.twitter.com/4tstvQ57G9

2016-09-21 20:51:32
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松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

つづいて、小学校中学年のグループを対象に同じゲームを同じように提示してみると、また違った反応が見られた。コマやボードを手に取る頻度が非常に減る。あるいはコマを手にとっても一瞥して箱に戻してしまう。

2016-09-21 20:59:54
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

その代わり、説明書を読んだり、カードの記載を読んだり、箱裏の解説を読んだりする子が増え、「2つのコマがあるということはどちらか選ぶんだ」「きっとこの宝物を集めてここにくるとゴールなんだ」といった風にゲームのルールへの言及が多く見られる。

2016-09-21 21:01:14
松本太一@放課後等デイサービスコンサルタント @gameryouiku

つまり年齢があがるに伴い、感覚的なものから言語的・概念的なものへと興味が移行していることがわかる。療育的な観点からすると、このゲーム開始前の「自由に触る時間」は、その子がどんな情報に興味を持ちをそれをどんな形で取得しようとするかを見極める重要な観察機会となるに違いない。

2016-09-21 21:04:28