イセコイ～異世界が来い～

大渡　鴉@ピクシブリクエスト募集中 @oowatarikarasu

【プロローグ】 #イセコイ

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ガッシ！　ボカッ！　俺は死んだ。スイーツ(笑) #イセコイ

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……等と言うひと昔前に流行ったフレーズが頭を過る。道を曲がったらそこにいたのは食パンをくわえた女生徒ではなく、トラックだったのだから。……それもまた随分埃が積もった妄想だが。大体食パンくわえて走るってどうなんだ？　朝食をとれないくらい急いでいるのは分かるにしても　 #イセコイ

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くわえながら走ったりしたら空気抵抗で顔に食パンがベシベシ当たるんじゃなかろうか。第一そんな状態で外気に晒され続けた食パンが清潔だとはとても思えない。虫が止まったら虫サンドを食うのか？　鳥がフンを落としたらどうするんだ？　ちくわ大明神。などと #イセコイ

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ラノベ主人公になったつもりで入院一歩手前な独り言を脳内で満たす。おい、最後の誰だ？ しかし答えは３であり、現実が非情なのは確かだ。そんな下らないことを考えてもトラックが急にハンドルを切れるわけはないし、切ってもとまれはしない。 #イセコイ

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トラックは俺のすぐ真ん前まで迫っている。 クラクションの音が遠くに聞こえるようだ。 何もかもがスローモーションな世界で、鉄の塊が俺に直撃する。 あ、これ異世界転生フラグだ #イセコイ

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さてどうする？　俺はサバイバル知識には疎いし歴史オタでもない。金は好きだが経済に明るいわけではなく、特に異世界で成功しそうな長所はない。 強いて言えばモテモテハーレムを形成する自信はあるのだが……。 さて、そろそろ目を開けてもいいだろう。 きっとそこには異世界が #イセコイ

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「もしもし、もしもーし」 ちょっと邪魔しないでくれませんか？　今俺は異世界での過ごし方についてですね？ 「あの……大丈夫ですか？」 待てよ、これはフラグかもしれん。第一登場キャラは大概が可愛いおにゃのこであり、その後正妻ポジになると現代用語の基礎知識に載ってたし！ #イセコイ

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世界に再び光が満ちていく。 眼前にはこれから俺が生きていく異世界が……。 #イセコイ

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「あの……大丈夫ですか？」 ……なんてことあるはずもなく。 青い空、白い雲、灰色のアスファルトに電柱。信号機を映すビルの窓ガラス。 いつもと代わり映えしない風景にはぁっと溜め息を吐く。 そして。 #イセコイ

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「大丈夫ですよ。それよりすいません」 俺は『眼下を見下ろして』トラックの運転手に謝罪する。脛が多少赤くなったろうが、そこまでの怪我じゃない。寧ろ、 「トラック、壊れませんでした？」 合わせる目線は膝の下。灰色のツナギを来た『体長１５cm程』のトラック運転手だ。 #イセコイ

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多分ピクシーか、或いはパック辺りだろう。小型種はよくわからん。 「大丈夫です。MISUZU製のトラックは頑丈ですから」 ピクシーがエルフに乗るとはこれ如何に。 #イセコイ

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と、信号が青に変わったらしく、ラジコンカーのような車達が一斉に走り出した。ここだと邪魔になるから、俺はそっとトラックを持つと道の端に移動させる。 その後ろを獣寄りの猫族のサラリーマンが通り過ぎ、頭上をジェット機とレッドドラゴンが飛んでいく。 #イセコイ

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燦々と照り付ける太陽は今日も暑くなるのだと、現実を叫び続けていた。 #イセコイ

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#イセコイ 　改め　『異世界が来い』 #異世界が来い

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「で、それからどうしたのゆーちゃん」 「ゆーちゃんって言うな」 スマホを仕舞いながら地味子に返事する。 「そしたらその運転手が帽子を脱いでな？『ぶつけたのはこちらだから』って謝ってきてさ」 「フンフン！」 「俺としたことが……なんたる失態！」 #異世界が来い

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「失態？　え？　何が？　シャツを前後逆に着てたとか？」 「小学生か」 「社会の窓が全開だったとか！？」 「中年か」 「心臓の稼働を忘れてたとか！」 「心筋梗塞か！　っつか死んでるよな？　死んでるよなそれ」 「つまりゆーちゃんは赤い水を飲んで……！」 #異世界が来い

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駄目だ。このアホと会話してると往年の吉本喜劇が延々続いていく。話を元に戻さんと。 「なんとそのトラック運転手のピクシーがな？」 「ピクシーが？」 「女性だったんだよ！」 「なんだってキバヤシー！」 「いや、そこ驚くポイント違うし」 #異世界が来い

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「で、どうしたん？」 「そりゃあ勿論」　 「勿論？」 「口説くに決まってんだろ」 「ヒュー！」 吹けてない吹けてない。口で言ったろ、お前。 「相変わらずだねぇゆーちゃんは」 「ゆーちゃんってゆーな。当たり前だろ？」 #異世界が来い

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「いいか？『いい女を口説くのは男の義務！』」 「『そして幸せになるのは女の義務』でしょ？」 流石に幼馴染みともなれば、次に言いたいことくらいは分かってしまうらしい。何せ幼稚園のもも組さんからの付き合いだからな。 #異世界が来い

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小山内　次美(おさない　つぐみ)。それがこいつの名前だ。俺は専ら地味子と呼んでいるが。 「で、その結果がその頬っぺたなん？」 「言うな」 おかしい。確かに途中までは上手く言ってたはずなんだが。俺は赤く腫れた頬を擦る。 #異世界が来い

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「なんて言ったの？」 そんなに聞きたいか？　ならば教えてしんぜよう。 「『俺の純白な愛のシャワーで貴女を染め上げたい』って……」 「マイナス五恒河沙点」 「……せめて億か兆くらいにしないか？」 「下ネタとかドン引きですわ～」 #異世界が来い

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「異議あり！被告人はそのような心境で言ったのではなく！」 「じゃあどのような心境で？」 「だって挿入らないだろサイズ的に考えて。だから彼女の身体を思いやってだな」 「控訴棄却」 司法は間違ってる。いつだって泣くのは無辜なる人々だ。 #異世界が来い

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秋の気配を強めた風が地味子の髪を揺らす。肩の辺りで切り揃えた猫っ毛。タレ気味の目に平々凡々といった顔立ち。取り立てて目立つ容姿ではない。……何故か同級生には隠れファンがいるようだがマニアックな嗜好だと思う。まあ、胸は無駄にデカイからそこに惹かれるんだろう。 #異世界が来い

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俺は紳士だから胸の大きさだけで女性を選んだりはしないが。 涼しさを感じながら、どうしても先程のことを思い出してしまう。何も風属性呪文をぶっ放すことはなかったんじゃないか？　大体こっちは被害者なのに。 ピクシーの女は意外に怒りっぽい、とノートに書いておこう。 #異世界が来い