【隻腕の墓標】第四話

0
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-1 その部屋は狭かった。 布団が二畳敷けるか程度の、明かりも乏しい一室だった。

2016-10-11 14:16:53
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-2 藻類基地より一人派遣された鈴谷は、潰れて柔らかさの乏しい布団に横になり、馬乗りになる若い青年に身体を委ねていた。

2016-10-11 14:17:58
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-3 「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」 声の主は青年だけのものだ。 鈴谷は自分の乳房が青年の慰みものになっていることをただ受け入れて、抵抗もせず布団に横たわっていた。

2016-10-11 14:19:35
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-4 そういや、そろそろ次の出撃かなー。 鈴谷の思考はこの部屋の中にはない。 さほど離れていない海域の、深海棲艦共との争いの頻発している境界線。先日艦娘として復帰し久しぶりの出撃となった浜風含む、4人のことを考えていた。

2016-10-11 14:20:08
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-5 藻類鎮守府は、五体満足と言えない艦娘達が集っている。その彼女らが戦線に出ても、艦娘として真っ当な扱いを受けないことは鈴谷も重々承知していた。当の鈴谷も障害を抱えて満足に出撃できない身であるため、その苦しみは身に染みている。

2016-10-11 14:20:42
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-6 だからこそ。 鈴谷は、そんな皆んなの居場所を不条理に奪われないように、自分の身体を汚すことを選んでいた。

2016-10-11 14:20:50
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-7 「鈴谷、もっと、きつく締めて」 青年は将校だった。藻類基地とは別の基地を預かる、司令官の一人だった。

2016-10-11 14:21:45
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-8 その将校が、汗水垂らしながら、鈴谷の乳房に自分のものを挟んで喘ぎながら、懇願する。その声に、鈴谷はほくそ笑む。指揮をとる司令官も、女体の前には成すすべもないことを、鈴谷は知っていた。

2016-10-11 14:22:15
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-9 「本当に、提督好きだよねー。いいよ」 腕でぎゅっと乳房を圧迫すると、青年将校が歓喜の声をあげて、腰の動きを早くした。

2016-10-11 14:22:28
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-10 醜いとは思わない。 だが、滑稽だなとは思っていた。 艦娘達に指示を出し、激励し、喝を入れるその口が、私との情事で完全に甘えきっているその様が、可笑しくない訳がなかった。

2016-10-11 14:22:35
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-11 「提督、これそんなにいいの?まぁ、でないと何度も鈴谷の谷間を汚したりしないからね」 からかうように唱える言葉も、青年将校には甘言にしかならない。

2016-10-11 14:22:47
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-12 青年将校が果てるその時まで。 鈴谷は慰みモノとして、そこに横になり続けたのだった。

2016-10-11 14:22:55
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-13 南西海域諸島の基地に点在する提督諸君は、月に一回から二回、南西海域総司令本部に召集される。 その目的は、南西海域諸島における敵深海棲艦との戦闘記録の報告と、今後の方針の相談であった。

2016-10-11 14:24:49
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-14 現在の南西海域総司令本部の長を務める提督は、通信より実際に顔を合わせての対談を好む。海戦の詳細な報告は、実際に肌で戦闘の風を感じてこそ本物となるというのが信条であるが故の召集であった。

2016-10-11 14:25:33
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-15 鎮守府から遠く離れた南西海域は、深海棲艦との最前線基地が数多く存在している。だからこそ、尚更生の戦場の風を体感した肉声が、何よりも重視されていた。

2016-10-11 14:26:15
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-16 悪く言えば、とても古めかしい手法が取られているといえよう。

2016-10-11 14:26:23
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-17 無論、厳戒態勢ないし戦闘中であれば、提督は召集に応じられない。その場合は、代理人が総司令本部に差し向けられる。藻類基地の鈴谷は、まさにそれに該当する。

2016-10-11 14:27:19
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-18 藻類提督の変人の話は、南西海域でも留まるところを知らない。毎回の会合の度に代理人として秘書艦である鈴谷が参席することを、とやかく言う提督はこの場にいなかった。

2016-10-11 14:27:35
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-19 総司令本部会議室。 縁を描くように並べられた机の、上座に南西海域総司令本部長が座する。藻類提督の席は、総司令本部長一つ下の窓側の席。各基地を指揮する十余名の提督陣の中では、一番上となる席であった。

2016-10-11 14:27:46
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-20 そしてその総司令本部長こそ、先程だらしない声をあげながら。鈴谷の乳房に男の汁を吐き出していた青年将校に他ならなかった。

2016-10-11 14:28:02
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-21 「時間だな。では始めよう」 その声は先程鈴谷で慰めていた者と同一人部とは到底思えない覇気の篭ったものであった。鈴谷が、それがどうしようもなく可笑しく、笑みをこぼしそうになった。

2016-10-11 14:28:28
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-22 しかしそんな鈴谷に反し、この会議の場での一同表情は硬い。それはまさに、青年将校のこの覇気によるものが大きかった。

2016-10-11 14:28:59
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-23 大和男子という言葉があるが、青年将校は正にそれを体現するに値する伝説を持つ人物であった。何を隠そうこの男、深海棲艦を自身の太刀で斬り伏せた過去を持つ英傑なのだ。

2016-10-11 14:29:11
ななみわかめ@創作 @S_Wakame_S

4-24 と言えば聞こえはいいが、元々は若輩ながら采配の才を持つ程度のいち提督でしかなかった。深海棲艦を斬ったというのも偶然に偶然が重なった結果で、砲撃を食らいながらも死に物狂いで特攻をかけた敵駆逐艦を、どさくさ紛れに剣を抜いたら致命傷を与えてしまっただけであった。

2016-10-11 14:29:22
1 ・・ 5 次へ