月明りと

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あみ @ami_qitt25

1 今年も母親と母の友達を連れて二泊三日の温泉旅行...あたしは運転手兼添乗員さん 1日目を終え、今日1泊で解放されるけど 早めにホテルに入ると早々、2人は温泉に薄暗くなって来たホテルの部屋から 外を見ると...人が沢山歩いてる #月明かりと

2016-10-18 20:02:25
あみ @ami_qitt25

2 ちょっと眠たくなって来たし... 散歩でもして来よう フロントを抜けて外に出ると 昼間とは打って変わって肌寒い 人の波に付いて行くと奥の方に公園が 後1時間ぐらいしたらライトアップするんですよ...と、警備の地元の人が 屋台もありますから #月明かりと

2016-10-18 20:05:42
あみ @ami_qitt25

3 散策して来たら? 勧められるままに公園の中に川の淵を 歩く様な散策路...なんにも考えないで 歩くなんて何年ぶりだろう 人ひとりが通れる幅を前から来る人をやり過ごすのに横に避けて立ち止まると 『すんません、』 少し掠れた男の人の声で 「いいえ、」 #月明かりと

2016-10-18 20:15:42
あみ @ami_qitt25

4 それだけの筈なのにその声が耳に残って、、 通り過ぎたその人を確認しようとした でも、人の中に埋もれて微かに何人かの話し声は聞こえたけど... 前からの人が切れたからあたしも歩き出した水の流れる音と人のざわめきの中 「...さむっ、、」 #月明かりと

2016-10-18 20:41:44
あみ @ami_qitt25

5 流石に水辺だけあり風が冷たくなり その先に進むのを諦め来た道を戻る 気の早い数件の屋台は営業をはじめ、 それを冷やかしながらホテルに戻る道路の向かいの大型のホテルの向かい こじんまりして居るけど、年配者には人気の気配りが行き届いた宿 #月明かりと

2016-10-18 20:42:38
あみ @ami_qitt25

6 門を潜って中に入ると囲炉裏に 甘酒の鍋がかかっており冷えた身体を ほんのり温めてくれた 食事が終わったらもう一度... 今度は暖かい格好で行って見よう なんとなくさっき聞いた、あの声を思い出した どんな人だったんだろう... #月明かりと

2016-10-19 10:35:25
あみ @ami_qitt25

7 食事が終わり、、今度はカーディガンをバッグに入れて まだ、人で賑わう外に... さっきと同じ様に公園に向かって歩くと ...もう少しでライトが消えるからね、、 余り奥まで行ったら危ないから と声をかけられる #月明かりと

2016-10-19 10:36:19
あみ @ami_qitt25

8 さっきと同じ経路で歩くと確かに屋台は閉まり始めそろそろ祭りも終わりと思わせる 食事で少しアルコールを飲んだせいか 少し歩いただけで汗ばむようで 川辺りの風が心地よくて立ち止まり 川向こうのホテルの明かりをぼんやり 見ていた #月明かりと

2016-10-19 10:37:22
あみ @ami_qitt25

9 不意に周りの明かりがポンと消えて 「あっ、、」 驚いて声が出てしまった 『大丈夫です、今日は月が綺麗に見えとるから...』 横から聞こえたその声に... 「さっきの、、」 イントネーションと掠れた声 『えっ?、、』 #月明かりと

2016-10-19 10:39:16
あみ @ami_qitt25

10 暗闇と月明かりにやっと目が馴染んで 『ああ、さっきの、、』 こちらを見ている彼はすーっと 背が高くてさっきとは違い浴衣姿で 「さっきはどうも、、」 『いや、こちらこそ…』 なんとなく気恥ずかしく2人で そんな事を言い合い 「くしゅん!」 #月明かりと

2016-10-19 10:39:56
あみ @ami_qitt25

11 吹いた風に身体が冷えたらしく 『湯冷めしたんとちゃうの?送って行くから...』 そう言うと階段の手前で手を差し出す 月明かりにぼんやり浮かんだその手を 綺麗だとふ思って見入ってしまった あたしの手を掴むと 『気を付けて、段差...』 #月明かりと

2016-10-19 10:40:40
あみ @ami_qitt25

12 そう言って歩き出した... 繋いだ手はそのままにあたしのホテルの前で 『それじゃ...』 「あ、あの...」 まだ、手が繋がれたままだから 『...、、』 次の言葉が見つからなくて... でも、離れがたくて #月明かりと

2016-10-19 10:41:20
あみ @ami_qitt25

13 『...良かったら、、僕のホテルのBARで呑みませんか?』 「え?」 『そこなんで...』 彼が振り向いた先は向かいの大型ホテル 「あ、そこの浴衣...」 『気が付いてへんかったん?』 言われて初めて気が付いた #月明かりと

2016-10-19 10:42:06
あみ @ami_qitt25

14 『行かへん?』 彼の声が更に掠れたのは... 小さく頷くと握ってた手を強く引かれ 引き返す形で歩き出した #月明かりと pic.twitter.com/5Dw5oWxg37

2016-10-19 10:53:49
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あみ @ami_qitt25

15 『ゴルフコンペ...て、言っても会社の おっさんらのお守りなんやけどな』 BARのカウンターに並んで座り 彼が話す声が心地いいって思いながら 『君は?』 「え、ああ、あたしも母親との 温泉旅行...と、言ってもお守りだけど」 『お互いお守りか』 #月明かりと

2016-10-20 02:10:09
あみ @ami_qitt25

16 ガハハと笑うと白い歯が覗く 『普段は沖縄に行くんやけど… 今年は何故か北海道だったんよな』 「やっぱり、ゴルフ?」 『ゴルフもやけど、ダイビングがメインかなぁ』 「じゃ、こっちならつまらないでしょ?」 『そんな事あらへんよ、君に会えた...』 #月明かりと

2016-10-20 02:11:20
あみ @ami_qitt25

17 そう言ってカウンターの下のまだ握られていた手を 「いつ、帰られるんですか?」 『ん、明日...夕方の飛行機、、』 軽く手を添えて居たグラスを持ち上げ 全てを喉に流し込み 『部屋...行かへん?』 彼が立ち上がるからつられて立ち上がった #月明かりと

2016-10-20 02:12:20
あみ @ami_qitt25

18 軽く身体を動かすと、彼の腕があたしを引き寄せる 『どこ行くん?』 掠れた声で 「もう、帰らなきゃ...」 『ああ、そやな...送ってく、』 「良いよ、大丈夫」 彼の腕をすり抜け散らばった衣服を身に付けて #月明かりと

2016-10-20 02:13:11
あみ @ami_qitt25

19 「じゃ、気を付け...」 なんでだろ、、言葉に詰まって声が出ない 『そんなんで帰せへんやんか』 後ろから両肩を掴まれて後ろに引き寄せられる 「大丈夫、、だから...」 彼の息がうなじに掛かり...それだけで離れ難くなる だから、早く... #月明かりと

2016-10-20 02:14:30
あみ @ami_qitt25

20 「じゃ、、」 振り切る様に彼の手から逃れて部屋を 出ようと 『待ってや...連絡』 聞いてどうするの? もう会えないのに... 『また、会いたいやん... こんなんで終わらせたく無い、、』 #月明かりと

2016-10-20 02:15:39
あみ @ami_qitt25

21 彼の手をそっと外して 「ありがとう、、」 そう言って部屋を後にした… 薄らと明るくなり始めた空には ぼんやりと遠くに残ってる 月明かり... 薄くなったのにまだそこにある まるで、思いを残すみたいに 今のあたしと同じ... #月明かりと

2016-10-20 13:38:13
あみ @ami_qitt25

22 たった1度、、そう思ったのに もう...彼が恋しい 部屋に戻り帰りの支度を済ませ 早々に宿を後にして帰路に着いた 予定より早く自宅に着いて荷解きを始める 少し片付けては時間が気になる... 『夕方の飛行機...』 #月明かりと

2016-10-20 13:38:17
あみ @ami_qitt25

23 彼の声が耳から離れない 「やっぱり、、」 独り言を呟き立ち上がると車に乗り込む ****** 人でごった返した空港の中 こんな所で見つけられる訳ない アテなんて無い、、 航空会社だって聞いてない... #月明かりと

2016-10-20 13:38:22
あみ @ami_qitt25

24 だけど、もう一度... 受け付けカウンターから1番近い保安所に向かって歩いて居ると 『あ、、』 ざわめきの中で一瞬聞こえた声 振り向くと... 『...なんで、、』 「会いたかったから...」 #月明かりと

2016-10-20 13:38:54
あみ @ami_qitt25

25 彼が手を伸ばしあたしの手を掴むと 『...俺も、、』 そう言って腕の中に閉じ込めて 『会いたかった...』 あたしの髪に顔を埋めた #月明かりと pic.twitter.com/iuJsetlXKu

2016-10-20 13:41:46
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