【ガラムマサラ】福間健二 #k2fact155

福間健二 @acasaazul

何を言っているのかわからない箱を運ぶ手段。いつも迷う。香りのなかを二人で歩いて、迷ったら迷った二人、汚れたら汚れた二人。そうなればいいのだが、そしてそれは簡単そうだが、この箱、構造が若くない。「考えなおしてくれよ、ベイビー」が忍び込んでいる。（ガラムマサラ１）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

どういうことか。「考えなおしてくれ」に血が通っていない。気さくな態度の、親切な怪物を、まちがって退治している。「このむこうには何もない」と「人生はきつい」が同盟を組んで座り込み、箱の鼓動が速くなる。シャイな翻訳者たち、やっと皮膚で接している。（ガラムマサラ２）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

小さな母さん。泥だらけの顔の、年上のマギーからそう呼ばれた。尾行されながらの、家路。一度ではあかない玄関の鍵。あのとき、わたしはまちがっていなかった。思い出している半島の夜、けものの部分から彼女はなにかはぎとり、自分もなにかはぎとられている。（ガラムマサラ３）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

尾行する者をどうまいたのか。遅れついでに、秋の雲から降りてくる白い体と入れかわって野原を歩きまわり、クローズアップ大丈夫となったいま、ガラムマサラが彼女のブーム。野菜炒めにも、かぼちゃサラダにも、それを使う。すっぴんの「南の文学」が必要だ。（ガラムマサラ４）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

地面に落ちた新しい帽子が踏まれる。それを拾って狭い心と土を払い、形もなんとか元通りにしてくれる七人の味方。世界の果てからの、その七人が全員、ガラムマサラ風味を好きになるなんてことはない。「窮屈すぎるよ、そんな考え」と、もう新しくない帽子だ。（ガラムマサラ５）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

誘惑する彼女の山とちがって、ぼくの問題は登って降りればいい。裾野に「荒川さんのように冷静に」どうしてなれないのか。胸の箱を叱って、二〇一六年十月二十日、日野駅から立川駅に向かう。うしろから四両目。二人、言えることは言ったという顔を窓に映して。（ガラムマサラ６）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

【訂正】ぼくの問題は登って降りればいい。裾野に →　ぼくの問題は、登って降りればいい、じゃない。裾野に （ガラムマサラ６）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

電車で多摩川をわたり、ジビッ、ジビッ、ジビッ、同時にパンツだけになって黒い空の川を暴れながら進むお兄ちゃんのことが心配なのだ。妹の役、やめたと言った。やめても澄まない水。汚れる器。声を失う箱。立川だ、ネズミたち。隠れているだけでいいのかな。（ガラムマサラ７）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

だれにでも言い分がある。くりかえし読んだ手紙がある。封筒の角が擦りきれている。そして午後七時から八時くらいまでの「この目を見なさい」。その言い分と濃度に別々の旅をさせる社会。複数で入りみだれ、揺れ動いて、何を生かしてきたことを隠しているのか。（ガラムマサラ８）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

音を立てるのは、生きている者と死んだ者がたがいの「愛している」を盗みあう制度じゃない。読者よ、渦巻きだ。ふだんやっている箱の壊し方からはじめて、緩やかな上り坂と見えたものに裏切られ、時間に妙なシール貼られている男を飲む渦巻きに気づいてほしい。（ガラムマサラ９）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

彼女の問題、ぼくの問題。その中間でパンが焼ける。箱を落ち着かせるために。すべてを言いつくさなくていいとするために。パンを食べ、野菜を食べる。思い出よりも彼女のブーム、ガラムマサラの出番だ。指示よりも多く使ったけれど、気がつかなかったようだ。（ガラムマサラ10）#k2fact155

福間健二 @acasaazul

【訂正】（最近多くて、すみません。） 気がつかなかったようだ。→　気がつかないみたいだ。 （ガラムマサラ10）#k2fact155