「キャラクターデザイン」に著作権は発生するのか

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uroak_miku @Uroak_Miku

1)同じネタをしつこく語ります。夏目ゼミで語ったとき、こんな事例を紹介しました。白土三平原作で東映がテレビアニメを作ったが、商品化印税収入の大きさに東映が欲を出して、その独占を図るために「もうオリジナル路線やから原作白土の名前を外させてほしい」と持ち掛け押し切った、と。

2016-10-28 12:00:42
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2)質疑応答の際に生徒さんから「白土のキャラクターはそのまま使っているのだから絵の権利が生きているはず。なのにどうして一切の商品化印税が東映の独占になるのか」と聞かれました。当時の私には理解できない質問でした。「絵の権利ってなんなの?」と聞き返したぐらいだから。

2016-10-28 12:02:23
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3)「キャラクターデザインという概念はこの1964年当時にはなかったの。それは70年代に入ってからだよ」と答えたのですが、生徒さんは納得いかないようでした。そこに夏目さんが割り込んできてこう述べた。

2016-10-28 12:03:32
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4)「これは白土の絵じゃないよ、別のひとの絵だよ」 pic.twitter.com/NdV3zXcwHK

2016-10-28 12:04:21
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5)私はずっこけました。東映のアニメーターが描いているんだから白土の絵と違うのは当たり前じゃないですか、と。テレビのサザエさんだって長谷川町子の原作絵とは違うのだし。 pic.twitter.com/CApHzF1li4

2016-10-28 12:07:26
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6)あのときのかみあわないやり取りは、今思うと「キャラクターとは何か」という根源的問題に迫るものでした。あの夏目さんでさえそこまでは洞察できなかった。それが印象的でした。

2016-10-28 12:08:40
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7)現代の作品でこの問題を考察してみます。これはラノべの表紙です。小学五年生の女の子チームがロックバンドを組むお話です。高校一年生の引きこもり少年がひょんなことでこの子たちを指導することになります。 pic.twitter.com/RDVM4EJZba

2016-10-28 12:10:51
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8)まんが版があります。まんが版は違う絵師さんの仕事です。 pic.twitter.com/OuBMQp2qs8

2016-10-28 12:15:04
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9)これもこのまんが家さんの手による絵です。 pic.twitter.com/cIcFvQ0eJ4

2016-10-28 12:15:57
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10)これは違う。原作小説の挿絵を描かれた方の絵です。 pic.twitter.com/hOu6Djg03V

2016-10-28 12:18:15
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11)原作の挿絵それに表紙絵として描かれたものが原本という扱いのようです。事実まんが版を見ると「キャラクターデザイン てぃんくる」と表記されています。てぃんくるというのは挿絵画家さんの氏名です。 pic.twitter.com/z0HBx8lZKI

2016-10-28 12:21:44
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12)もう一つまんが版があります。こっちは楽屋落ち的なギャグまんがです。絵師はてぃんくるでも水谷悠珠(先に紹介したまんが版の絵師さん)でもない、別の方です。ここにも「キャラクターデザイン てぃんくる」と表記されています。 pic.twitter.com/zheiVW0jQN

2016-10-28 12:24:49
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13)日本では「キャラクター」は著作物とはされていません。2003年の最高裁判断で「著作物やないよ」とされたのです。アメリカではミッキーマウスはそれ単体で著作物扱いなのですが、日本では著作権法の解釈がアメリカより厳格にされて、それで「著作物やないよ」と判断された。

2016-10-28 12:26:46
uroak_miku @Uroak_Miku

14)それでは「キャラクターデザイン」は法的にはどう解釈したらいいのでしょう。著作権法で定める「複製権」つまり「無断で他者に複製されない権利」を有するもの、なのでしょうか。

2016-10-28 12:29:39
uroak_miku @Uroak_Miku

15)キャラクターは動き回る存在です。紙の上の存在であっても、私たちの脳内では動き回っています。すると「キャラクターデザイン」とは違うポーズや表情だってします。そういうとき複製権を盾に「某まんが家が自作で私のキャラクターデザインを無断で複製した!」と訴えても、法理論上は弱い。

2016-10-28 12:32:12
uroak_miku @Uroak_Miku

16)訴えられた側がもしこう反撃してきたら、どうやり返したらいいのか。「あなたのキャラクターデザインを『複製』したつもりはない。ポーズも表情も違うではないか」

2016-10-28 12:33:39
uroak_miku @Uroak_Miku

17)私たちが「キャラクターが酷似」という場合、①見た目が似ている の意でそう言う場合もあれば、②同一人物としか思えない の意で言う場合があります。ミッキーマウスは架空の存在なのだから同一人物かどうかを論ずるのは本来おかしいのに、私たちは無意識に②で考えがちです。

2016-10-28 12:35:45
uroak_miku @Uroak_Miku

18)ちなみに今わたしが「キャラクター」と呼んでいるのは「実在ではなく生身の人間によって演じられているものでもない人物ないし人格またはドラマ性を強く感じさせるもの」のことです。ミレニアム・ファルコンも含まれます。

2016-10-28 12:38:07
uroak_miku @Uroak_Miku

19)このようにキャラクター論は法理論の視点から行うことが必須なのです。

2016-10-28 12:38:51
uroak_miku @Uroak_Miku

20)このすっきりしなさ、多重スタンダード性は、「キャラクター」という概念がまさに20世紀の申し子であることを示唆しています。工業技術に支えられた大量生産の時代、大衆消費社会の時代。

2016-10-28 12:40:39
uroak_miku @Uroak_Miku

21)そして地縁や血縁や社縁を超えた、仮想共同体感覚の時代の申し子。

2016-10-28 12:41:27
uroak_miku @Uroak_Miku

22)ツイッターでぐだぐだ論説を垂れ流すのだって、ツイッター民という仮想共同体を意識しているからこそ楽しいのです。

2016-10-28 12:42:11
uroak_miku @Uroak_Miku

←このアイコンは伊達ではない。

2016-10-28 12:42:41
uroak_miku @Uroak_Miku

24)今はまだ私がなにをくっちゃべっているのかわからない方がほとんどと思いますが、戦艦大和級というかデススター級の巨大思想が背後に控えております。

2016-10-28 12:44:26