ヨグヤカルタ・ナイトレイド #7
◆「イヤーッ!」「グワーッ!」強烈な頭突きがロングゲイトの額を砕いた。離さぬ。逃がさぬ!「イヤーッ!」「グワーッ!」膝蹴りを叩き込む。ロングゲイトが身を守ろうとする。ニンジャスレイヤーはロングゲイトを掴んだまま、死の拳を決断的に振り上げる!◆
2016-11-24 22:00:29「イヤーッ!」「グワーッ!」さらに一撃!もはやロングゲイトの意識は朦朧となっている。殴るほどにニンジャスレイヤーは感じる。内なるナラクの炉が怒りに満ちた炎を吐き出すのを。 1
2016-11-24 22:04:58(怒りだ。怒りが、おれとナラク・ニンジャを繋いでいる)ニンジャスレイヤーの目が燃えた。マスラダ。ナラク。奪われ、砕かれ、なおこの世に在る者同士だ。怒りがサツガイに至る道を拓く。だが呑まれてはならないのだ……。「イヤーッ!」「グワーッ!」 2
2016-11-24 22:07:59イクサは流れだ。拮抗が堰を切れば、一方の破滅へ容易に雪崩を打つ。拮抗をいかに崩し、怒涛めいて相手を圧倒するか……それがカラテなのだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」ロングゲイトは追い詰められている。ゆえに起死回生の反撃の機をうかがっている。決してそれを許さぬ!「ニンジャ殺すべし!」3
2016-11-24 22:16:48「イヤーッ!」ロングゲイトがショートアッパーを繰り出す!ニンジャスレイヤーは首を反らして至近カゼ打撃を回避した。背後でバンブーが砕け、倒れた。ワンインチ距離、かつ追い詰められた状況下でロングゲイトが取り得る行動は容易に絞り込める。終わりだ。その顔面を掴み、持ち上げ、叩きつけた。4
2016-11-24 22:28:17「グワーッ!」後頭部から庭の石に叩きつけられたロングゲイトの頭が爆ぜた。「サヨナラ!」ロングゲイトは爆発四散した。時同じく、クローンヤクザの銃撃によって鉄屑と化したリムジンの車内からこちら側へコトブキが転がり出る。KABOOM!燃料タンクが爆発した。 5
2016-11-24 22:29:38「か、勝ちましたね?」倒れ込むように駆け寄ったコトブキの首根を掴み、ニンジャスレイヤーは付近の石灯籠の陰、ひとまずの安全地帯へ投げつけた。オイランドロイドは猫めいて空中で回転し、しなやかに着地する。ニンジャスレイヤーは塀を振り返り、一列に並んだクローンヤクザにスリケンを投げる。6
2016-11-24 22:33:49「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」射的の的めいて、左から右へ、塀の上に並んだクローンヤクザは次々に倒れ、反対側へ落ちていった。「お見事です!」アサルトヤクザが全滅すると、コトブキが駆け寄って来た。当然無傷ではない。銃創が複数。「でも、まだ来ますよ!」7
2016-11-24 22:35:46「無茶な真似を」ニンジャスレイヤーは呟いた。「平気です。これはガレージで治せますから」コトブキは裂けた左上腕の傷に触れた。「それより、ほら!」指をさすと、門をくぐって突入してくるのはカロウシタイの者達!「ブヌー!」「メネワスカン!」口々に叫び、早回しの人形芝居めいて襲い来る! 8
2016-11-24 22:39:15「裏から逃げるぞ」ニンジャスレイヤーが促したが、コトブキは首を振った。「迎え撃って、正門を突破しないとダメです。門の外に駐車されているクルマが大変なんです!」理由を問いただす時間などない。カラテを構え直すと、たちまち半月刀で武装したカロウシタイとの白兵戦が始まった。9
2016-11-24 22:43:18「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「ハイヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーが二人倒すうちにコトブキはカンフーで一人倒す。奥の者達が銃撃を始めたが、ニンジャスレイヤーはスリケンを投げ返して殺していった。最後の一人をコトブキが飛び蹴りで仕留めた。 10
2016-11-24 22:49:48「これです!」コトブキが走っていった先には、並んで止められた三台の黒塗りバンだ。バックゲートを拳で叩き、「中に人が居ます!泣き声が!」耳をつけ、施錠パネルに手で触れる。「わたし経由でタキ=サンにパネルをハック……」KRAASH!ニンジャスレイヤーが錠を破壊。こじ開けた。11
2016-11-24 22:54:59力任せにゲートを引き開けると、巨大なバンの車内には、絶望したうら若い娘たち。恐怖とともに二人を見返す。ニンジャスレイヤーは顔をしかめる。経緯の詳細は天井裏でよく聞いた。あのサツバツナイトは何者だ?グレイウィルムを倒したのか?首を振り、隣の車両の錠を破壊しにゆく。 12
2016-11-24 22:59:40「みんな、逃げて!はやく!」コトブキが外を指さし、手ぶりで急がせると、娘たちはおずおずと車外へ降り立ち、互いに顔を見合わせる。ニンジャスレイヤーは三台目のバックゲートを破壊し、コトブキを睨んだ。「こんな事をしたところで、きりがないんだぞ」「義を見てせざるは勇無きなりです」 13
2016-11-24 23:03:39「お前ら。悪いが後は自分で面倒を見ろ」ニンジャスレイヤーは娘達に言い放った。コトブキは不満そうにしたが、実際、できる事はここまでだ。滞在を延ばせば、シャン・ロア、即ち国家そのものが牙を剥いてくる事にもなろう。「お気をつけて」コトブキは頭を下げ、ニンジャスレイヤーの後を追う。14
2016-11-24 23:10:33ブガーブガー……料亭の警報が鳴り響く中、彼らは坂道を駆け下り、雑多な街路へまぎれた。花火が夜空に散り、水路をボンボリ船が流れて行った。『ヨー、何かゴチャゴチャやってやがったか?終わったかよ』タキの通信が入った。『ポータルをくぐる時間はキッチリ合わせていくぞ。いいか』「ああ」 15
2016-11-24 23:15:24『お前らの出現に合わせて、こっち側……つまりネオサイタマ側の施設の攪乱をオレがやる必要があるんだ、わかるよな?』「わかっている」『ミヤゲはそっちのサイバーシーシャだな』「ふざけるな」ニンジャスレイヤーは物陰で装束を捨てて旅装姿になり、何食わぬ顔で巡回カロウシタイと交差する。16
2016-11-24 23:22:32歩きながらマスラダは拳を握り、開いた。ロングゲイトのヒサツ・ワザを打ち破った瞬間のあの感覚が、ニューロンにいまだ焼きついていた。本能のままの戦いでは、いずれ望まぬ死が待つか。考えるべき事は多くあった。「ナラク。サツバツナイトを知っているのか」(((知っておる))) 17
2016-11-24 23:33:01ナラクは答えた。(((奴がかつてのニンジャスレイヤーだ、マスラダ)))マスラダは足を止めた。後ろでコトブキがつんのめった。マスラダは眉根を寄せた。「かつての?何故このボロブドゥールにいる」(((知らぬ。時を経たゆえに。奴はサツバツナイト。厄介なリアルニンジャだ)))「そうか」18
2016-11-24 23:40:37(((奴にサツガイのにおいは感じぬな)))「ああ」マスラダは歩き出した。ロングゲイトの死に際の言葉が気になった。二度サツガイに接触したニンジャがいる……新たな情報だ。サンズ・オブ・ケオスの連中がニンジャスレイヤーに対する警戒を共有する前に、その者を捉える必要があるか。 19
2016-11-24 23:44:48『ザリザリ……畜生、どこにいる?ノイズがキツい』ナラクが沈み込むと、砂嵐の中からタキの通信音声が聞こえてきた。『時間を言うぞ。間違えンなよ』「ああ」夜市にさしかかると、薄汚れた子供が「観光案内するよ!」と近寄って来た。「お小遣いをくれてもいいよ!」 20
2016-11-24 23:51:15「要らない」マスラダは首を振った。子供は諦めなかった。「お小遣いくれよ!」マスラダは不意に思い立ち、懐からワ・シを一枚取り出し、渡した。「自分でやってみろ」不思議そうに見上げる子供に、マスラダはフクスケの折り方を教えた。そうするうち、コトブキがスーツケースを持って戻って来た。21
2016-11-24 23:58:03