アセイルド・ドージョー #2
◆ドラゴン・ニンジャがギリと歯を食いしばる音をサツバツナイトは聴いた。ケイトー・ニンジャはレッドドラゴンを見た。「貴殿は何を所望だ?」「ヌンチャク・オブ・デストラクションを」影から無数のコウモリが羽ばたき、背に繋がり、マントを形成した。「ワラキアの我が民に、よき土産となろう」◆
2016-12-03 18:01:42◆「あれも、そうか」サツバツナイトがドラゴン・ニンジャに確認した。彼女は頷いた。「然り。経緯はわかりませんが、彼らは皆、かつてありしリアルニンジャ達……私にはわかります」「当然、友好的な訪問では」「ありませんね……!」二者は三者を睨み、ジュー・ジツを構えた!◆
2016-12-03 18:02:07「貴殿はどうだ、ムカデ・ニンジャ=サン?」ケイトー・ニンジャは身構えたドラゴン・ニンジャらを前に依然くつろいだ様子で、身内に訪ねた。ただならぬニンジャはヴェールの奥から答えを発した。「……SHHH……メンポ・オブ・ドミネイション……あれをいただこう」「ほう!何に使う」「国よ」1
2016-12-03 18:07:23「国か!アッパレ」ケイトーは喉を鳴らした。「では俺はブレーサー・オブ・リジェクションにしておけば、ちょうど収まりがよいか?……ほう、ブレーサーは無いか。そうか」ナムサン……ドラゴン・ニンジャの微かな瞳孔の動きから、ケイトーは問いの答えを得てしまった。なんたるニンジャ洞察力か。2
2016-12-03 18:10:09「皮算用はそこまでです、盗人ども」ドラゴン・ニンジャが言った。ケイトー・ニンジャは目を光らせる。「なに、拝借するだけだ。よいではないか……見たところ、貴殿らからは我らに比するカラテは感じぬ。だから、仕方がないと思わんかね?我らは謳歌したいのだ。時経たこの鮮やかな世界をな……」3
2016-12-03 18:17:51「宝はどこにある」レッドドラゴンの問いにムカデ・ニンジャが答えた。「霊廟だ……ドラゴン・ニンジャはこの山を深くくり抜き、ハトリの宝を納めておる……宝……SHHHH……」「そう、それを我らが役立ててやる。よかろう?」「霊廟は宝物殿ではない」ドラゴン・ニンジャが否定した。 4
2016-12-03 18:31:19サツバツナイトとドラゴン・ニンジャは視線をかわした。霊廟はたしかにこのドージョーにある。遥かな昔に作られた禁断のダンジョンだ。そこには過去のドラゴンニンジャ・クランの者たちがミイラ化していまだ防衛の任につき、強大なシークレット・レリックの拡散を防いでいる。 5
2016-12-03 18:33:43ドラゴン・ニンジャはかつてオヒガンのキョート城へ冒険の旅に向かい、様々な苦難を経て、ヌンチャク・オブ・デストラクションとメンポ・オブ・ドミネイションを持ち帰った。ブレーサーはいまだキョート城主のもとにある筈だ。以来、ヌンチャクとメンポは霊廟深部に収められ、封印保管されている。6
2016-12-03 18:36:58「ああ、霊廟の防衛や罠の類に気をつけねばならんぞ?」ケイトーが言うと、レッドドラゴンは前へ踏み出した。「どうという事はあるまい。行くとしよう」「SHHH……未熟なニンジャのどもの肉と血……」ムカデ・ニンジャが言った。「瑞々しい命……まずワシはそれを楽しむとして」「イヤーッ!」7
2016-12-03 18:42:40ドラゴン・ニンジャがムカデ・ニンジャに仕掛けた。サツバツナイトが跳び、レッドドラゴンの加勢を阻んだ。木人拳めいた打ち合い。一方、ムカデ・ニンジャはドラゴン・ニンジャの打撃とマストダイ・ブレイドの連続攻撃に晒された。怪しき法衣が斬り裂かれて宙を散ると、長虫めいた影が地を滑った。8
2016-12-03 18:48:11ミガワリ・ジツだ!地面の隆起が稲妻めいた軌道を描いて奥へ逃れてゆく。その先に霊廟が、そしてタイセンたちが避難した洞穴がある……!「おのれ!」追おうとしたドラゴン・ニンジャにケイトー・ニンジャが立ちはだかった。「自由にさせてやらんか!はははは!」 9
2016-12-03 18:52:31サツバツナイトはレッドドラゴンとワン・インチ距離で向かい合い、木人拳めいて打ち合いを続けていた。サツバツナイトは既に三打を受けている。「イヤーッ!」「グワーッ!」四打。レッドドラゴンの脇腹に蹴りを見舞うが、赤い鎧が衝撃を防ぎ、黒いマントが脚に絡んで投げ飛ばした。「グワーッ!」10
2016-12-03 18:54:35サツバツナイトは空中で回転しバランスを取る。レッドドラゴンはそこをめがけ黒いスリケンを放つ。それらはクナイ状に身を尖らせたコウモリたちだ。サツバツナイトはスリケンを連射してコウモリを迎撃する。更に回転の中からフックロープを放つ。狙いはレッドドラゴン、否!ケイトー・ニンジャだ。11
2016-12-03 19:00:44ケイトー・ニンジャは既にドラゴン・ニンジャに二度打撃を加え、首を切断すべくチョップを振り上げていた。そこにフックロープが絡みついた。ケイトーは一瞥し、緋色の雷光を腕に纏わせ、焼き切った。ドラゴン・ニンジャは刃を繰り出した。ケイトーは指先で刃を挟み、止めた。 12
2016-12-03 19:02:55ドラゴン・ニンジャは刃を捨て、奥を目指して走り出した。サツバツナイトは跳び蹴りでケイトー・ニンジャに挑みかかった。ケイトーは蹴りを腕で弾き、掌打で顔面を破壊しにゆく。サツバツナイトは側転で躱し、チョップを繰り出す。打ち合う二者を無数のコウモリが包む。レッドドラゴンの変化だ。13
2016-12-03 19:06:22「サツバツナイトとやら」打撃を防ぎながらケイトー・ニンジャが問う。「我らは目覚めていまだ日が浅い。今の世のありようを早く知りたいのだ」サツバツナイトは打撃の中でこの者の恐るべき圧力を、そのカラテのほどを測ろうとした。確かに相当の使い手。そして「時の力」とでもいうべき迫力。14
2016-12-03 19:14:16「イヤーッ!」身を沈めてチョップを躱したサツバツナイトは、狙いすましたポン・パンチをケイトーの腹に叩き込んだ。殴られながらケイトーは両手をサツバツナイトの腕に当てて威力を殺す。キリモミ回転して吹き飛ばされるも、受け身を取って着地する。「故にまずドラゴン・ニンジャを訪ねたのだ」15
2016-12-03 19:19:15サツバツナイトは背後から胸を貫かれ、心臓を掴みだされる感覚を覚えた。ニンジャ第六感が伝えてきたコンマ数秒後の予兆だ。振り返りながら肘打ちを繰り出すと、背後で凝集して再び人の形を取ったレッドドラゴンが舌打ちして打撃を防いだ。「貴様の名は何だ?サツバツナイト=サン」彼は問うた。16
2016-12-03 19:22:37一方、洞穴にニュービーニンジャを潜り込ませたタイセンは、己はイクサに加勢すべく、外から岩戸を閉じようとしていた。ふと振り返ると、今まさに土の隆起が迫って来ていた。「何だ……?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」弧を描いて飛んできたスリケンが肩に突き刺さり、タイセンは倒れ込んだ。17
2016-12-03 19:27:47スリケンを投げたのはドラゴン・ニンジャである。タイセンは負傷して洞穴の中に倒れ込んだ。「岩戸を閉じよ!タイセン=サン!」土の隆起を追って走りくるドラゴン・ニンジャが厳しく命じた。タイセンは……「AAARGH!」土が爆ぜ、無数の関節を持つ禍々しいニンジャが飛び出した!ナムサン!18
2016-12-03 19:29:19「瑞々しい!肉!」「キエーッ!」「グワーッ!」ドラゴン!間一髪、強烈な跳び蹴りがムカデ・ニンジャを背後から襲い、岩戸の横の岩肌に叩きつけた。タイセンはもはや愚かな考えを抱かなかった。失禁しながら岩戸を内より閉じた。ムカデ・ニンジャは身をよじり、ドラゴン・ニンジャを見た。19
2016-12-03 19:32:33「SHHHH……!」「通すものか!」ドラゴン・ニンジャはジュー・ジツを構えた。ムカデ・ニンジャが襲い掛かった。ムカデ・ニンジャは多くの関節を備えた腕を無数に生やしており、これに対処するのは至難であった。ドラゴン・ニンジャは極限状況で太古のイクサの記憶を引き出そうと必死だった。20
2016-12-03 19:37:31