アセイルド・ドージョー #5

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リンク note(ノート) 第5話【アセイルド・ドージョー】 | ダイハードテイルズ | note 「ボロブドゥール」「企業のポータルを使う」「あれは……何者だ……!」「駄目だ、ナラク!」「王様です」「ヨグヤカルタに来ている。ちょっとしたビジネス」「決済できました」「血を抜くにはやはりボトルネックカットチョップが最も新鮮です」「Wasshoi!」「あれはサツバツナイト。太古の暗殺術、チャドーの使い手よ」「スゥーッ……フゥーッ」「二度触れた者……!」(怒りが、おれとナラク・ニンジャを繋いでいる)「こんな事をしたところで、きりがないんだぞ」「義を見てせざるは勇無きなりです」「奴がかつてのニンジャスレイヤーだ
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「貴様、セストーダル=サンを殺したのか」「殺した」サツバツナイトはジュー・ジツを構えた。「次はオヌシだ。オヌシの右手をもらう」「バカな……つい今、貴様は!」「"火より早く攻めよ"」彼は引用めいて言った。◆

2016-12-12 22:27:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「セストーダル=サンは私の第二の標的であり、同時に陽動でもあった。これはイクサだ。あらかじめ練り上げた攻め手、侵攻ルートだ」ジェット・ブラックの装束がブスブスと音を立て、橙色の火がくすぶった。「この機は逃さぬ」サツバツナイトの後ろでは数名のカロウシタイが死んで横たわる。◆

2016-12-12 22:28:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆「オヌシのセンセイに伝えるか?サツバツナイトが来たと……ドージョーを破りに来たと!」「笑止!」ゲオフィルスは黒い目を見開き、ムカデの髪をざわつかせた。「ならばこの私が相手だ。このゲオフィルスが!」睨み合う二者の間の空気が陽炎めいて歪んだ。城郭が不穏に鳴動を開始した……。◆

2016-12-12 22:30:28
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ゲオフィルスはサツバツナイトのジュー・ジツを吟味する。ニンジャ第六感が警告している。ただならぬアトモスフィア。打ちかかれば返される兆しが放射されている。そして、どこか奇妙だ。己とは異質なものを感じた。むしろシャン・ロア王に似た印象だ。王の強大さに比するべくもないが、不可解だ。1

2016-12-12 22:35:48
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その不可解感は、正確にはゲオフィルスに憑依融合したムカデニンジャ・クランのソウルがもたらしている感覚かもしれない。強さの感覚とは軸の違うなにかだ。ゲオフィルスは慎重に間合いを調節する。サツバツナイトも安易な牽制を仕掛けてはこない。ゲオフィルスのカラテを感じているのだ。 2

2016-12-12 22:40:15
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ゲオフィルスは武芸に長けるニンジャであり、赤道直下で海賊を殺しては賞金を稼いで暮らしていた。海賊の中にはニンジャもいたが、彼が勝ってきた。記憶にある相手と眼前のサツバツナイトを引き比べると、なかなかの強敵とわかる。だが最強の相手ではない。「「イヤーッ!」」二者が同時に動いた。3

2016-12-12 22:45:49
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両者の蹴りがぶつかり合い、更にチョップがかち合った。間合いを離し、サツバツナイトがスリケンを投擲する。ゲオフィルスは首を動かし、ムカデの髪を鞭めいて打ち振った。ムカデの顎がスリケンをとらえ、噛み砕く。さらに無数のムカデのうち数匹が関節を伸ばし、サツバツナイトに直接襲い掛かった。4

2016-12-12 22:50:03
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「イヤーッ!」「アバーッ!」サツバツナイトは襲い来たムカデの顔面に瞬間的なジャブを当てて砕いた。素早く引き戻す拳は他のムカデに絡まれる事がない。「イヤーッ!」「アバーッ!」見えぬほどの軽く速いジャブがムカデ攻撃を打ち払い、紫の体液が胸壁に撥ねる。 5

2016-12-12 22:54:27
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「イヤーッ!」「アバーッ!」更に数匹のムカデが地面を張って足下に到達しようとしていたのを、サツバツナイトは意識的にフットワークを用いて踏み潰し、攻撃を未然に防いだ。それらはゲオフィルスの頭から抜け落ちたムカデどもだ。注意力が僅かに奪われたその隙を突いて、重い蹴りが飛んできた。6

2016-12-12 22:56:49
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「イヤーッ!」「グワーッ!」ヤリめいたミドルキックを胸に受け、サツバツナイトは回転しながら吹き飛び、三点で着地する。その姿勢のままタタミ3枚分後ろに滑った。石床についた指が摩擦で橙の火を発し、燃える痕をひいた。彼は向かってくるゲオフィルスを睨み据えた。 7

2016-12-12 22:58:26
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ゲオフィルス。強力なニンジャだ。しかしシャン・ロアに魅入られ、もはや奴隷めいた立場に身を堕としている。サツバツナイトの目に橙の火が閃き、装束の縁がブスブスと音をたてた。 8

2016-12-12 23:01:43
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スゴイタカイ・ビル屋上でダークニンジャをかろうじて退け、その後、約十年。長いようで短いものだ。ダークニンジャの痕跡を求めた旅は報われず、年月のなかで、やがて世界そのものを巡る旅、彼自身の修行の旅に変質していった。彼はカラテの欠落を鍛錬で徐々に補い、克服せねばならなかった。 9

2016-12-12 23:06:56
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旅の中で様々なタツジンに出遭い、様々な景色と出遭った。旧知の者と思いがけず出遭い、別れた。サツバツナイトはゲオフィルスを注視する。血中カラテの高まりに敏感に反応し、マフラーめいた布の先端部が橙色の火を伴って爆ぜる。「イヤーッ!」ゲオフィルスがスリケンを複数投擲した。 10

2016-12-12 23:14:51
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それらはただのスリケンではない。丸まったムカデだ。防御すれば四肢にそのまま巻きついて動きを封じ、ジャブで撃ち落とせばその隙をついてゲオフィルスが必殺のカラテを叩き込む。ゲオフィルスは地面スレスレまで身をかがめ、スリケンからやや遅れて突進してきている。 11

2016-12-12 23:16:48
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前蹴りで迎え撃つか?飛び越えて回避するか?或いは?無数の選択肢の中から行動を選び取ると、彼は石床を蹴って跳んだ。「イヤーッ!」膝を抱えた回転ジャンプ。豆粒めいて小さく丸まった姿勢を空中で解き放ち、狙いすました蹴りを放つ。「アバーッ!」ムカデスリケンを蹴り潰し、反動で跳ねる。12

2016-12-12 23:22:57
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トライアングル・リープした先にもうひとつのムカデスリケンがある。「イヤーッ!」「アバーッ!」それを蹴って潰し、反動で更に跳ねた。その直線状に、ゲオフィルスの身体がある。ゲオフィルスが黒い瞳を見開く。この間、コンマ何秒であろう。サツバツナイトは襲い掛かった。 13

2016-12-12 23:24:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

回転しながら振り上げた拳は溶鉄めいて橙色に燃えていた。鍛冶場で打ち据えられるカタナめいて燃えるチョップを、彼はゲオフィルスの延髄に叩き込みにいった。ゲオフィルスのムカデの髪が食らいついた。溶鉄のチョップはそれを焼き切りながら迫る。ゲオフィルスは腕を首に添わせてガードする。 14

2016-12-12 23:28:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

チョップはゲオフィルスの手甲に阻まれるが、サツバツナイトの回転の勢いは衰えず、手甲を中心に遠心力を発揮、さながら彼自身が炎のマフラーめいてゲオフィルスの手首の周りを旋回した。「イヤーッ!」「グワーッ!」ゲオフィルスが怯んだ。15

2016-12-12 23:31:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

炎のマフラーはギュルギュルと空気を裂いてゲオフィルスに巻き付き、やがて回転が収まると、サツバツナイトはゲオフィルスの背中におぶさるようにして組み付き、首筋をガッチリとロックしていた。「ヌウーッ!」もがくゲオフィルスの右手首に橙色の筋が光ると、焼き切れた右手がボトリと脱落した。16

2016-12-12 23:35:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

勝負あったか。さながらイアイ抜きじみた両者のイクサであった。ゲオフィルスが食らわせたミドルキックは強烈だった。ムカデスリケンを投擲した瞬間の判断を誤れば、こうなっていたのはサツバツナイトの方であったやもしれぬ。薄氷を踏むような判断の応酬の果てに、圧倒的な結果がもたらされる。17

2016-12-12 23:37:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「右手は頂く」サツバツナイトは締め上げた。「オゴッ……笑止……!」ゲオフィルスは血涙を迸らせ、なおも抗う。「主君のもとには決してゆかせはせぬ……命に代えてもな……!SHHHHH!」ムカデの髪がメデューサめいてざわめき、後ろのサツバツナイトに一斉に食らいついた。「イヤーッ!」 18

2016-12-12 23:39:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ボギン。サツバツナイトの腕に力が籠り、ゲオフィルスの首がへし折れる音が響いた。ムカデがサツバツナイトを喰らい尽くすよりも、ゲオフィルスの命の終わりは早かった。「サヨナラ!」ゲオフィルスは爆発四散した。サツバツナイトはザンシンしたのち、ズタズタに崩れたニンジャ頭巾を振り払った。19

2016-12-12 23:42:03