韓国による米国の戦術核兵器の再配備について

米国のセイモア調整官は2/26、「韓国政府が戦術核の再配置を公式要請すれば、米国が応じるのは当然だ」と述べたという。これに対して韓国国内でも米国に戦術核の再配備を公式要請するか否かの議論が行われているようだ。戦術核兵器の再配備は軍事的には意味が乏しいが、いざとなれば「再配備するぞ」という政治的シグナルとしては意味があるかもしれない。そのことから日本国内への核兵器の「持ち込み」の是非まで考えてみようという話。
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fj197099 @fj197099

米、韓国が要請なら戦術核再配置(http://bit.ly/fc1vK7)・・・米ホワイトハウスのセイモア調整官が「韓国政府が戦術核の再配置を公式要請すれば、米国が応じるのは当然だ」と述べたとの記事。極めて興味深い。米国の戦術核兵器は冷戦終結直後の1991年に全面撤去されている。

2011-02-28 16:20:20
fj197099 @fj197099

しかし核実験が昨年挑発行動を繰り返し行い、更に現在三度目の核実験を準備しつつあるという状況を考慮すれば、韓国がこうした戦略環境の変化に対して再び戦術核兵器の再配置を米国に対して求めたとしても理解できる所である。事実、中央日報社説は戦術核の再配置を求める社説を掲げている。

2011-02-28 16:22:47
fj197099 @fj197099

これは日本で言うところの非核三原則で禁じられた「持ち込み」に当たる話であるが、「持ち込み」は別にNPT条約違反という訳ではなく、国際法規に違反しない抑止力強化の取り組みとして注目に値する。韓国では具体的に再配置されるとすればB61核爆弾であろう、という話も挙げられている。

2011-02-28 16:25:55
fj197099 @fj197099

可能性としてはこの他、核弾頭搭載型トマホーク巡航ミサイル(TLAM-N)、核搭載型空中発射型巡航ミサイル(AGM-86B)の二種類が考慮できる。だが前者は米国が昨年のNPRで退役を決定しているため、可能性があるとすれば後者の方であろう。これはB-52H爆撃機によって運用される。

2011-02-28 16:27:56
fj197099 @fj197099

米国高官の発言は本当に戦術核の再配置の問題が取り上げられる可能性を見据えての話ではなく、今ここで中国が本気で北朝鮮の核開発を阻止しないと、いずれはそうした結果を招くかもしれないという中国に対するメッセージ性の強い発言であると推測できる。しかし日本としても無視できない話と思う。

2011-02-28 16:29:10
fj197099 @fj197099

韓国への戦術核配備の話をもう少し深く考えてみる。まず配備される核兵器の種類についてだが、B-61とAGM-86Bを例示したが、実際には後者が配備される可能性もほぼないだろう。これは空中発射型巡航ミサイルであるから、遠くからのスタンドオフ攻撃が可能でわざわざ前線配備する必要がない。

2011-02-28 20:11:11
fj197099 @fj197099

しかも運用はステルス性のないB-52Hに依存し前方配備することで敵のミサイル攻撃や航空攻撃も受けやすくなるからリスクが大きい。AGM-86Bはグアムあたりから運用すれば軍事合理性の観点からは十分である。よって前方配備はあり得るとすれば航空機搭載のB-61核爆弾以外には考えにくい。

2011-02-28 20:12:50
fj197099 @fj197099

だがそれはやはり航空機(F-15, F-16, 将来的にはF-35 etc)による運用に依存するから、滑走路の脆弱性への懸念という要素は残り続ける。航空機が飛びたてなければ核兵器の使用も難しいのだ。北朝鮮に韓国の滑走路を破壊する能力があるとは思わないが中国にはある。そこが難しい。

2011-02-28 20:14:56
fj197099 @fj197099

また前方配備された戦術核で何を狙うのかという問題もある。平壌のような都市を狙うのなら戦略原潜のSLBMで十分だ。わざわざ小型の戦術核を配備するからには通常兵器では破壊困難な、しかし戦略核ではやり過ぎという具体的な標的が特定される必要がある。一応、北の核施設はそれに該当するだろう。

2011-02-28 20:17:57
fj197099 @fj197099

しかし例えば寧辺の核施設のような分かり易い地上の標的を狙う場合、核兵器に依存しなくても米軍の対地攻撃で十分だ。地下深くに埋没された施設なら核兵器が必要になるかもしれないが、そのような施設はあるとしても場所さえ特定されておらず、標的にはなり得ない。つまり理想的な標的は余りないのだ。

2011-02-28 20:20:02
fj197099 @fj197099

よって韓国への戦術核兵器の再配備は軍事合理性の観点からは余り正当化されないと考えることが出来よう。故に米国も1991年に戦術核を撤去した後(冷戦期間中は通常戦力で勝る北朝鮮軍を食い止める目的が戦術核にはあった。現在は韓国軍は十分に強い)、今日まで再配備の話が出なかったのである。

2011-02-28 20:23:09
fj197099 @fj197099

今日、再配備の話を考えるとすれば、それは専ら先に述べたように軍事的な措置というよりも政治的なシグナルとしての性格が強い。再配備を実際にやるかどうかも問題ではなく、再配備をするぞという脅しこそに意味があると考えられる。しかもそれは北朝鮮を対象とはせず中国を対象とする所がミソである。

2011-02-28 20:24:55
fj197099 @fj197099

韓国の戦術核再配備の話が興味深いのは、殆ど全く同じロジックが日本国内への米国の核兵器の「持ち込み」の話とも重なるからである。日本への核兵器の「持ち込み」も軍事的には然程の意義はない。が、政治的なシグナルとしては、北朝鮮というよりもむしろ中国に対して大きな効果を持ち得るであろう。

2011-02-28 20:27:36
fj197099 @fj197099

核の「持ち込み」そのものよりも、むしろ核の「持ち込み」の選択肢が維持されているという事実こそが仮想敵国に対する一定の抑止効果を持つのである。B-61核爆弾とはそうした性格を持つ兵器である。米国に対する日本への拡大核抑止は、TLAM-N退役で弱体化したのではとしばしば懸念される。

2011-02-28 20:32:40
fj197099 @fj197099

実際には必ずしもそう断定できる訳ではないが、かといってそうでないとも断定できないのが核抑止の厄介なところだ。それに伴い、日本も核抑止の政治的なシグナルとしての効果を高めるため、核兵器の「持ち込み」の選択肢を検討することも考えられるが、それは非核三原則に抵触するため話が進まない。

2011-02-28 20:35:00
fj197099 @fj197099

この点については昨年の安防懇報告書の「本来、日本の安全保障にとって最も大切なことは核兵器保有国に核兵器を『使わせないこと』であり、一方的に米国の手を縛ることだけを事前に原則として決めておくことは、必ずしも賢明ではない」(p.13)という記述を私としては支持するところである。

2011-02-28 20:37:55
fj197099 @fj197099

ちなみに。安防懇報告書は下記の記述の前段に「非核三原則に関して、当面、日本の安全のためにこれを改めねばならないという情勢にはない」とも記述しているが、これは内容が途中で(朝日新聞に)リークされたことで内閣官房の中で「政治主導」された結果である。当初は含まれていない記述であった。

2011-02-28 20:42:32
fj197099 @fj197099

非核三原則の話は「国是」とされているから改正には国会決議が必要であり、現在の政治の混乱を考慮すれば到底望み得ない話であることは確かだが、しかし韓国の戦術核再配備の話は十分に興味深い思考実験を可能にしてくれる話であるとは思うのである。抑止の話はよく議論してみるべき案件であろう。

2011-02-28 20:45:31