「200年ぶりの新しい青」への疑問とエジプシャンブルーについて。
- hashimoto_tokyo
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「新しい青」200年ぶりに発見、クレヨンとして年内発売へ(The Telegraph) - Yahoo!ニュース headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170516-… @YahooNewsTopics
2017-05-18 18:59:13引用「新たな青い色素が作られたのは、1802年にフランス人化学者のルイ・ジャック・テナール(Louis Jacques Thenard)がコバルトブルーを発見して以来。」ムチャクチャ言うなぁ。
2017-05-18 19:02:58例えば東海道新幹線の青、フタロシアニンブルーは1920年代にスコティッシュダイ社が偶然見つけた色だし、コバルトのブルー、紀元前の古代メソポタミアのころから知られている。より狭義のコバルトブルーはアルミン酸コバルトだが、その後に出た青色の染料顔料はいくらでもある。
2017-05-18 19:11:40C. I. に登録される無機顔料の青、という意味なのかな・・・?それでもまだおかしい。ピグメントブルー36とかの複合酸化物がある。
2017-05-18 19:27:44デイリーテレグラフの記者さんは、どういうつもりで200年ぶり、と書いたのだろう。染料や顔料など色材の開発してる化学者が山のようにいて、いくらでも青い色素が作られているというのに。
2017-05-18 19:29:53どうも、スピネル型の結晶構造の類似点、複雑な固溶体を作りだせる構造様式、色味の類似性から、アルミン酸コバルトのコバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28)と対比すべきものであり、そこから数えて200年経った、ぐらいの意味合いでしゃべったのを、テレグラフの記者が間違えたみたいね。
2017-05-18 19:38:16量論の Y2O3 と、In2O3 と、Mn3O4 を混ぜて 1150-1300℃で6時間焼け、とある。んで、In-Mn 系の固溶体で、モル%で In 95%、Mn 5% にしろ、と。簡単じゃん。
2017-05-18 19:50:00ただ、日本だと YInMn 顔料の粉体販売はキビシイかもしれん。インジウムおよびその化合物は特定化学物質に指定され、これも例外ではないだろうから。封止してあるディスプレイ電極は勘弁してもらっているのだけれども。
2017-05-18 19:53:13インジウム材料は、粉じん、ミスト、ヒュームになる形態だと、アウトなのよね。それもあって、YInMn ブルーは、生の粉体顔料では日本では特定化学物質になってしまう。In/Mn のモル比は大きいほど色が鮮やかな青だから、なおさら。日本ではおそらく顔料瓶詰め売りはしないだろう。
2017-05-18 19:56:28インジウムの有害性については、ちょっと前の現代化学の連載に書いた。大昔いっぱい使ってた立場としては、ちょっと騒ぎすぎな気もするけど、まあマジメに従おう。
2017-05-18 19:58:44前3RT:「新しい青」200年ぶりに発見」headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170516-… の件。だぶさんのコメントを聞きたいと思っていたところだったのでありがたい。
2017-05-18 21:26:24ツタンカーメン展図録の「ガラス」と、「ファイアンス」の差について悩んでいる。エジプシャンブルーは、結晶性化合物なので、ガラスではない。しかし、ソーダ分を増やしていくと、あるところからガラスになる。支持担体がないエジプシャンブルーは、ガラスだろうか。
2017-05-18 21:30:48こっから先は、自分でエジプシャンブルーを作ってみないとわからない。結晶性エジプシャンブルーでも、担体の無い加工可能なエジプシャンブルーができるんだろうか、それとも、粉体の焼結体にしかならないんだろうか。まあでも、ガラス質なんだろうな。ツタンカーメンのマスクに使われていたのは。
2017-05-18 21:34:21せっかくだから、紀元前5世紀のファイアンス、割って断面の写真を撮ってみましょうか。結晶性エジプシャンブルーがいるのか。 pic.twitter.com/on7QYojpXm
2017-05-18 21:41:54@fluor_doublet 私もさすがにそれ断言していいのかしら、と思っていたのですが…。いつものことながら、解説をありがとうございます。
2017-05-18 21:47:32@hashimoto_tokyo 「色素」というと、染料も顔料も含んでしまうんですよね。光を使う技術用途に、科学者や技術屋が機能性色素をはじめ、ものすごくたくさんの色素を世に送り出しているので、主語がでかすぎるとそこらへんの人が怒り出すかもしれません。
2017-05-18 21:54:09@fluor_doublet 古代エジプトは面白いですね。ご興味があれば、ツタンカーメンの黄金のマスクについては、X線分析が早稲田大学の宇田応之先生によって行われています。jstage.jst.go.jp/article/materi…
2017-05-18 22:50:20@fluor_doublet 古代エジプトのファイアンスやガラスについては、東海大学の山花京子先生がご専門で、SPring-8などを使った研究もされています。ファイアンスの定義と分類についてはリンク先が分かりやすいと思います。jswaa.org/jswaa/JWAA_06_…
2017-05-18 22:51:11@fluor_doublet ガラスとファイアンスについて最も纏まっているのは、P. Nicholson & I. ShawのAncient Egyptian Materials and Technologyに書かれてあります。ご参考になれば。cambridge.org/jp/academic/su…
2017-05-18 22:51:56@yukinegy ありがとうございます!やっと謎がとけました!ファイアンスの上のガラス質釉薬は組成が不定比で、エジプトブルーは結晶質でなければならず、その場合は表面がザラザラしていることが多い、ただし表面がザラつくガラスもある、ということですね。大変参考になりました!
2017-05-18 23:23:37