東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa による放射線の解説

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東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

東大病院で放射線治療を担当するチームです。医師の他、原子力工学、理論物理、医学物理の専門家がスクラムを組んで、今回の原発事故に関して正しい医学的知識を提供していきます。

2011-03-15 20:01:29
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

東京大学医学部附属病院放射線科の中川恵一です。放射線治療部門の責任者をしています。東北関東大震災の被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。今回の、福島原発事故に関して医学的見地からコメントをお届けしたいと思います。

2011-03-15 22:33:08
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

放射線とはものを突き抜ける能力が高い光や粒子のことです。そしてこれをあびる量が多くなると、遺伝子にダメージを与え人体に影響を及ぼすことがあります。放射線を出す能力を放射能それを持つ物質を放射性物質と呼んでいます。

2011-03-15 22:34:48
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

今回の原発事故では原発から放射性物質がまき散らされています。これは大きな杉の木から花粉が飛散している状態と似ています。ただし、放射性物質は目に見えません。

2011-03-15 22:35:58
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

[承前]花粉を避けることは窓を閉めて花粉を部屋に入れないことです。しかし、この放射性物質からの放射線は窓や壁を突き抜けるため、花粉から出る放射線を避けることは、原理的にはできません。深刻なのは体の中に吸い込むことです。[続く]

2011-03-15 22:39:08
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

[承前]体の中から被ばくする事を内部被ばくと言います。体の外からあびる外部被ばくより危険です。体の外は洗えますが、体の中は洗えないからです。花粉と同じように放射性物質を体にたくさんついた状態で帰宅されたら、服を脱ぐ事、体を洗う事が重要です。

2011-03-15 22:44:22
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

今日は地震の為、出演は微妙になりました。@hayano先生のおかげで今回の事故を客観的に見れる人が増えてきました。それをお手伝いしたいと思います。

2011-03-15 23:13:49
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

窓を閉めても意味がないというのは勘違いです。窓を閉めることは大きな意味があります。さえぎる物があると放射線物質の侵入を防げます。外からの放射線の影響も弱まります。

2011-03-15 23:17:29
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

福島原発の放射線被ばくに関して、医学的見地から昨日に引き続きお伝えして行きます。

2011-03-16 09:12:40
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

そもそも放射線被ばくがある、ない、という議論は無意味です。なぜなら、ふつうに生きているだけで、私たちはみんな”被ばくしている”からです。世界平均で1年間に2.4mSv「ミリシーベルト」という量の放射線をあびます(大気、大地、宇宙、食料等から発せられる放射線を自然被ばくと言います)

2011-03-16 09:19:51
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

mSvは「ミリシーベルト」と呼びます。ミリシーベルトは、放射線が人体に与える影響の単位です。ミリ(m)はマイクロ(μ)の千倍です。1mSv = 1000 μSvです。

2011-03-16 09:25:46
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

自然被ばくは国や地方によって違い、イランのラムサールは10.2mSvの放射線を一年間であびています。つまり年間10200μSvの被ばくがあります。逆に少ない所もあります。

2011-03-16 09:31:50
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

昨日(2011年3月15日)、東京周辺では、1時間当たり1μSv程度の放射線が観測されています。これは、大気、食料などから普段あびている自然被ばくと比べるとどの程度のものになるでしょう?現在の東京に100日いると、2.4mSv=2400μSvあびることになります。

2011-03-16 09:48:19
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

つまり、昨日の状況が続くと、普通は1年であびる放射線量を100日であびることになります。通常の3倍程度の放射線をあびることになるということです。まず、この放射線量が医学的にどの程度の影響を持つ量なのかを考えたいと思います。

2011-03-16 09:59:44
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

長らくお待たせしました。午前中の続きからです。つまり、昨日の状況が続くと、普通は1年であびる放射線量を100日であびることになります。通常の3倍程度の放射線をあびることになるということです。まず、この放射線量が医学的にどの程度の影響を持つ量なのかを考えたいと思います。

2011-03-16 16:51:00
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

200mSv(ミリシーベルト)つまり200,000μSv(20万マイクロシーベルト)が医学の検査でわかる最も少ない放射線の量と言われています。症状が出るのは、1,000mSvすなわち1,000,000μSv(百万マイクロシーベルト)からです。

2011-03-16 17:31:18
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

極端な例ですが、全身に4,000,000μSv(4百万マイクロシーベルト)あびると、60日後に50%の確率で亡くなります

2011-03-16 17:31:47
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

もっと低い放射線量では、症状もなく、検査でも分かりませんが、発がんのリスクは若干上がります。ただし、およそ100mSv(ミリシーベルト)の蓄積以上でなければ発がんのリスクも上がりません。危険が高まると言っても、100mSvの蓄積で、0.5%程度です。

2011-03-16 17:41:12
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

そもそも日本は世界一のがん大国で、2人に1人が、がんになります。つまり50%の危険が、100mSvあびると50.5%になるわけです。タバコを吸う方がよほど危険です。現在の1時間当たり1μSvの被ばくが続くと、11.4年で100mSvに到達しますが、いかに危険が少ないか分かります。

2011-03-16 17:52:28
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

さて、放射線の量をお風呂のお湯に例えてみます。「1時間当たり何ミリシーベルト」といったりする場合、その量は「蛇口から流れ出るお湯の出方」を意味します。値が大きければ、激しく流れ出ていることになります。そして、たまったお湯の量が、「何ミリシーベルト」という値です。

2011-03-16 18:15:52
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

先程の例では、11.4年かけてぽたぽたと100mSv(ミリシーベルト)のお湯がたまったことになります。でも、ここで注意が必要です。数分で、一気にためたお湯と、11年かけてためたお湯では、量は同じでも、放射線の場合には、人体に与える影響は、全く違うのです。

2011-03-16 18:38:32
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

1μSv/h(マイクロシーベルト/時間)という「線量率」では、傷つけられたDNAは、ほとんど回復するため、医学的にほぼ影響がありません。もちろん、今後も影響が全くないとは言えません

2011-03-16 18:51:35
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

妊婦の方へ。放射線は、妊娠後4ヶ月以内が最も胎児に影響を与えるといわれています。100mSv(ミリシーベルト)未満の蓄積ならばその後の胎児には影響がでないことが示されています

2011-03-16 23:11:07
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

妊婦に関する放射線防護についてのデータは、国際放射線防護委員会がまとめています。

2011-03-16 23:41:25
東大病院放射線治療チーム @team_nakagawa

放射線の人体への影響は、外部被ばくも内部被ばくも同等です。ただ、いったん放射性物質を体内に取り込んでしまうと、被ばくから逃れられないので、内部被ばくの方がより危険といえます。

2011-03-16 23:54:19