LGBTQとかダイバーシティーとかに違和感を覚える理由が見えてくるかもしれない千葉雅也氏のつぶやきをまとめてみた。

LGBTQ、多様性、ダイバーシティ、と盛んに言われることに対して、少し違和感を覚えている人は、もしかしたらその理由の一端が見えてくるかもしれない千葉雅也氏のクリスマス直前の一連のつぶやきを時系列でまとめてみました。 難解な部分も少なくないですが、納得できる部分を見つける人も少なくないのでは? と思います。
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千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

話が変わりますが、今日考えていたもう一つのこと。

2017-12-23 13:34:59
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

マイノリティでもマジョリティでも、互いの性的欲望に共感をもつのは難しい。それは、性的欲望の形式はしばしば、他の形式に対して否定的な関係にあるから。「他の形式」をいちおう理論的に理解し、そういうものなのかあ、と思うことは可能。が、「共感ができなければ共存できない」となったら大変だ。

2017-12-23 13:36:29
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

たとえば、女性の一部は、自分の身体が初期設定として「挿入される側」であることに不満をもつが、まさにそのようになりたいMTFや、被挿入を楽しむゲイのネコからすれば、そうした女性の不満に心底は共感できないだろう。

2017-12-23 13:39:10
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

また、性的アイデンティティを固定したくないXジェンダーと、何らかの「女性らしさ」「男性らしさ」に(遊戯的に/真剣に)こだわる他のマイノリティの立場は相容れない。(とはいえ、Xジェンダーのなかでも、ジェンダーの紋切り型に関心をもつ立場もあると思うので、ケースバイケースだろう。)

2017-12-23 13:42:17
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

性の議論において、男性のマッチョさは最も批判対象になるものだが、ゲイはそれを否定せず、男性の「いかにも」な特徴と戯れようとする。そもそも男こそを欲望するのだから、それはそうだ。FTMも、男性性を得たいからこそFTMなのだろう。ゲイやFTMには「マチズモ批判に抵触する欲望の現実」がある。

2017-12-23 13:46:14
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

性的欲望の対立はなぜ起こるのか。それは、一定の「カテゴリー」(あるいはジェンダー)を欲望するからだ。ゲイには「男であること」が大事で、レズビアンには「女であること」が大事。あるいは「〜系」とか。もちろん一人一人の特異性が大事だが、それと合算的にカテゴリーが大事だということ。

2017-12-23 13:59:48
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

あらゆるセクシュアリティは揺らいでいるので、極論すれば、欲望の対立関係は霧散する。もし「欲望の対立は必然だ」という命題がイヤで、対立はなくなるべき、というのなら、規範化によって「あらゆるセクシュアリティは揺らいでいる べ き」という向きへ行く手がある。(続

2017-12-23 14:01:14
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

それはつまり、そもそもカテゴリーによって性愛の相手を選ぶべきではない、「特異的な出会い」で の み 選ぶべき、性欲はそのつど再発明すべき、ということになろう。これを「ノンカテゴリー性愛」と呼んでみる。これは、性愛における人の集合化をやめる、ということだ。

2017-12-23 14:02:31
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

反応すべきは特異性。集合ではない。これは、詳細は略するが、ラカン的に言えば「女性の享楽」の側である。少なくともラカンはそう言った。仮に「女性文化」という言い方に意味があるとするなら、「女性文化はノンカテゴリー性愛に向かう傾向がそもそもある」ということなのかもしれない。

2017-12-23 14:07:12
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ラカンによれば、「男性の享楽」は、「集合とその例外」によって作動する。あるカテゴリー(たとえば「男」)があって、そのメンバー全員を「超える」ような例外者(「男のなかの男」)を発見したい、というのが「男性的」欲望だ、ということになる。これは「カテゴリー性愛」と呼べるだろう。

2017-12-23 14:14:00
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

カテゴリー性愛(男性の享楽)と、ノンカテゴリー性愛(女性の享楽)がぶつかる。ネット上ではさまざまな性の価値観の対立が見られるが、それらは、この大きな対立に関係していると思われる。

2017-12-23 14:16:32
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ラカンによれば、女性の側は二重になっていて、女性は「女性の享楽」と、女性側での「男性の享楽」に関わっている。しかし男性は単純で、「男性の享楽」だけ。

2017-12-23 14:20:57
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

リベラルなヘテロ男性がノンカテゴリー性愛的な主張をするのを見るのだが、その場合は通常、自分のカテゴリー性愛(女性が好きだということ)を掘り崩そうとはしていない。まあ、リベラルを自認するなら全員実際にノンカテゴリー性愛になるべき、という「性の革命論」みたいなのもおかしいとは思う。

2017-12-23 14:28:07
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

おそらくそういう場合では、カテゴリー性愛を無化したいのではなく、ただそれに「開き直る」のをやめて「ノンカテゴリカル方向に柔軟化する」ことが必要なのだ、といった主張をしているのだろう。

2017-12-23 14:28:32
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ヘテロ男性のカテゴリー性愛はデフォルトとしてあまりに強固なので、「たんに積極的に」そのノンカテゴリカル化を言えば、政治的に正しいことになるのだろう。が、ゲイなどのカテゴリカルなマイノリティの場合は、自分自身のカテゴリー性愛がそもそも不安定なので、マジョリティとは異なる問題をもつ。

2017-12-23 14:41:55
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ゲイなどの場合は、カテゴリー性愛がそもそも不安定だという意味で、最初からノンカテゴリー性を生きている。だから、「たんに積極的に」ノンカテゴリカル化を言うわけにはいかない。むしろ、ノンカテゴリー性がすでにある上で、それと拮抗する(パロディ化された)カテゴリー性を保護する必要がある。

2017-12-23 14:46:26
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

それがゲイやFTMによる男性性肯定でありフェム・レズビアンによる女性性肯定である。カテゴリカルなマイノリティがカテゴリー性に対して持つ切実な思いがマジョリティにはわかりづらい。そこから、「マイノリティなのにアンチポリコレ的に保守的な性幻想を支持している」といった結論に至りかねない。

2017-12-23 14:48:43
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

男性の享楽というのは、もっと精神分析的な言い方をすれば、「ファルス享楽」です。

2017-12-23 14:49:53
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

結局、リベラルなヘテロ男性も自分のカテゴリー性愛を捨てないように、ファルス享楽は脱構築されるべきだとしてもやはり維持されるし、もっと言えばそれは「存在すべき」ものなのである。脱構築されつつもそれでも「残る」ファルス享楽という論点が、たいていのヘテロ男性の論客からは抜け落ちている。

2017-12-23 14:53:44
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

リベラルなヘテロ男性が、男らしさなど批判し切ってしまえばいいとでもいうような「殊勝な」態度をときに見せるのは、自分の男らしさが盤石で揺るぎないからにほかならない。

2017-12-23 14:54:12
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

ファルス享楽を脱構築し、女性の享楽の方へ行く、つまり、特異性をそのつど愛するという方へ行きながらも、それでも残るカテゴリー性愛というのは、以上の構図においては、「女性の側のファルス享楽」に当たる。たとえばゲイが「もっと男になりたい」と思うのは、「女性の側のファルス享楽」だろう。

2017-12-23 14:58:10
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

これはどこかで書いた方がいいな。。。

2017-12-23 15:07:23
千葉雅也 Masaya Chiba @masayachiba

こういう話が伝わるかどうかわからないけど、

2017-12-24 00:19:53