『YU-NO』のADAMSとシナリオ構成について

以前、シナリオ構成で「シングルスタート/マルチパス/シングルエンド」がゲームシナリオでは非常に効果が高い(http://togetter.com/li/52336)というツィートをした件の続き。 今回は『YU-NO』のADAMSを例にとっています。 「シングルスタート/マルチパス/シングルエンド」は「世界がプレイヤーによって変えられる」ということを体験させるには非常によい形式なのですが、これをシナリオ的に受け止めるにはマルチパスの分岐上で発生する様々な可能性世界を集約しうるだけの仕掛け(世界観/題材)が必須であるという結論になってます。 では、シナリオ構成的にマルチパス分岐をどう制御するかについては、またいずれお話しようと思います。
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Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

先の採点法なのですが、どんなゲームでも毎回仕掛けや趣向というのがあって、そこが分かりやすくなっているかどうかは重要ですが、同時に作り手側としてはそこが評価されるか否かはやはり関心のあるところです。そういうところをちゃんと見てくれているレビューはやはり信頼するに足ると思うものです。

2011-04-17 02:48:45
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

かつて岡田斗司夫氏が、作品評価を「通の目(その作品の歴史的な位置づけやスタッフの過去作等の関連性の理解)/粋の目(その作品独自の趣向の評価)/匠の目(その作品で使われている技術への理解と評価)」で見るということを書いていましたが、こういうレビューが一番優れてると思うんですよね。

2011-04-17 02:53:10
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

例えばですが、僕は『YU-NO』という作品が大好きですが、同時に1.ADAMSというシステムは本当にシステムなのか?これはシステムと言うよりはシナリオなのではないか? 2.今『YU-NO』を出したとして、本当に自力で解くことができる人がいるのか? という疑問を常々持っていました。

2011-04-17 03:06:46
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

1は『YU-NO』がADVの傑作であるといわれる割には類似のものが見あたらないという事実、2に関しては自分自身が『YU-NO』を自力でクリアしたことがある経験から言って、このゲームはクリアにかなりクセがあるということを知っていたことなどがあります。

2011-04-17 03:11:02
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

でも『YU-NO』のシステム/シナリオには構成上見事な仕掛けが施してあり、それはまさに、ゲームプレイヤーに世界が自分の選択によって大きく変わることを理解させられることなのですが、同時にこのゲームを作ることはADVの中でも最難関であろうとずっと考えていた訳です。

2011-04-17 03:13:51
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

同時に当時『YU-NO』の制作に関わっていた人から人づてに制作の状況を聞くような経験もあり、いかにこのゲームの制作が大変だったかも知り、じゃあ仮にこのゲームを今復活させるならば、どんな作り方をするべきかとずっと考えていた訳です。

2011-04-17 03:16:48
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

つまりあるひとつの傑作ゲームがあったとして、それが単なる偶然や奇跡の結果ではなく、再び同じ面白さを作れることを証明できなければ、それは産業ではありません。それが作り手側から見た、『YU-NO』のADVにおける「通の目」というものかと思っています。

2011-04-17 03:20:03
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

まあ、僕が『YU-NO』みたいなゲームを作れる機会が仮にあったとしたら、そういうことをしようと、ずっと考えていた訳です。

2011-04-17 03:21:04
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

さて『YU-NO』のADAMSがシステムというよりはシナリオではないか?という件に関しては、作り手の方はすぐにわかると思います。あのシステムの特徴はある一本道のルートで後に立つフラグがその前のイベントでの分岐に大きく影響するというのがポイントです。(続く)

2011-04-17 03:25:02
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

しかしコレは普通、バグとして扱われるもので、このような状況が許されるシナリオもしくは世界観というのは滅多にありません。しかもそれがシナリオ上、爽快感を持って受け入れられるとまでなるとさらに稀と言えるでしょう。

2011-04-17 03:26:30
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

逆を言えば『YU-NO』が優れているのは、そのシステム的にはバグと思われるような状況すらも世界観に取り込み、さらにプレイヤーに世界を変えることが出来たという爽快感すら与えられたことにあります。となりますとポイントはこのようなシステムを許容できるシナリオ構成にあることがわかります。

2011-04-17 03:28:54
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

そのようなシナリオ構成を突き詰めていくと、『YU-NO』型のシナリオ構成はある一平面上に展開されるストーリーマップ上で複数ルート分岐という形で存在している全てのプレイ結果を、プレイヤーのクリア順と関係なしに、その次のストーリーマップへと持ち越せるということがわかってきます。

2011-04-17 03:34:18
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

その結果として完成するものは、『シングルスタート/マルチパス/シングルエンド』と呼ばれる、ゲームのストーリー展開にとってもっとも最適と言われる形です。これが自然に実現できるのが大きい。

2011-04-17 03:40:40
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

ただその代償としてクリアするのが非常に難しくなるわけで……しかもゲームというのはあくまでプレイヤーが自力で解けて初めて面白いものです。――だったらどうするか?、それが2つめの課題な訳です。そこを考えないで作るのは、やはりアホのやることだろうと思ってます。

2011-04-17 03:45:42
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

これは僕の勝手な想いかもしれませんが、やはり20世紀の傑作を21世紀に伝承できなければ、この先に進めないです。しかもゲームがシステマチックに作られるようになってきたのはこの10年というところですので、もう一度現代の手法で一度顧みる必要があると思ってます。

2011-04-17 03:50:37
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

最後に『追想』の次元ブックマーカーが『YU-NO』のADAMSと同じものかと言うと、残念ながら違います。ADAMSは1分岐1選択ですが、次元ブックマーカーは1分岐1因果です。だから選択の意味がより重要になってます。気にしてる方がいらっしゃるようなのでちょっとだけ書いておきますねw

2011-04-17 04:24:47
市川望 @ichikawanozomu

@nyaa_toraneko 小林さんの解説で、この時期になってようやく追想の形がわかってきましたw 次元ブックマーカーってそういう風に利用するんですね。

2011-04-17 04:29:02
Nobuyuki Kobayashi @nyaa_toraneko

@ichikawanozomu 次元ブックマーカーの分岐は、その選択が世界を変えるかどうかで分岐するので、例えば分岐が2つあるとしてもプレイヤーの目の前にある選択肢は2つじゃないんです。しかもフェイズという概念があるので、多分この手のゲームが好きな方には面白いと思いますよ。

2011-04-17 04:32:28