「わたしたちの自戒の歌」  / 「ゆえいの季節における手記」

吉本隆明、1951
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m_um_u @m_um_u

吉本隆明「わたしたちの自戒の歌」

2011-04-24 17:47:54
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六月の鳥の翼となって 鉛の色の空のきめのなかで反転しよう

2011-04-24 17:48:15
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わたしたちによって動かすことのできない世界の暗い中心が 季節のなかの樹液や風に固定されてゐるので 視やうとすればそれは視える処で わたしたちの異様な視覚をまってゐる

2011-04-24 17:49:27
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わたしたちは軽々と動き しかも用意された方法を用ひることをしない

2011-04-24 17:49:54
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世界のなかから少数のひとが戒しめた言葉で わたしたちの宿命の血の色をつくらう

2011-04-24 17:50:38
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やがてわたしたちのゆくところは いたるところ戦火や悲しい想像に閉ざされた夜をむかへる

2011-04-24 17:51:16
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わたしたちはその雰囲気によって拒否される 固い固い孤独者のひとりにならう

2011-04-24 17:51:44
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星がわたしたちの翼を とぎ澄まされた光によってかすめ 膨らんだ風が美しい想像を死によってとりかへるときも

2011-04-24 17:52:27
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わたしたちは幾分かの謙譲を投げうって 異端の爪を立てよう

2011-04-24 17:53:08
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同 「ゆえいの季節における手記」

2011-04-24 17:53:37
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わたしたちが刻々すり減らすのは 無為や辱忍によって鉄格子のなかでたくはえた鋭利な反逆や 屈従することのないできない倫理である

2011-04-24 17:54:40
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時がわたしたちの衰弱を願ふもののために 風や夜空の星や神話になって創りあげられた征服の物語を わけあたえる

2011-04-24 17:55:25
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そのうへ世界のあらゆる循環の法則は彼等の掌に握られてゐる

2011-04-24 17:55:54
m_um_u @m_um_u

だから刻々殖えてゆくわたしたちの仲間と 次第に鋭くなってゆくわたしたちの貧困とに マルサスのPがやってくる

2011-04-24 17:56:48
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わたしたちの生存によってあがなはれた文明と孤独とが 彼等の破壊や収奪のために 暗い空洞の季節をとほり過ぎやうとする

2011-04-24 17:57:46
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わたしたちは既に彼等の所有となった風景を視ないために しだいに深い時間のなかに位置を占める

2011-04-24 17:58:17
m_um_u @m_um_u

ゆえいの季節が 硝煙と乾いた風との夜にわたしたちの予感をおとづれる

2011-04-24 17:58:59
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旦て記録されたどんな事例にも わたしは自分を販りわたさないために

2011-04-24 17:59:51
m_um_u @m_um_u

わたしたちの指さす方向は 未知の未明によって充たされてゐる

2011-04-24 18:00:22
m_um_u @m_um_u

わたしたちは磁極のやうにかたく わたしたちの愛と憎しみをふりわける

2011-04-24 18:00:53
m_um_u @m_um_u

わたしたちにとって愛するものはこの季節を生きつくさねばならない

2011-04-24 18:01:26
m_um_u @m_um_u

わたしたちは わたしたちのすべてをかけて それを祈る

2011-04-24 18:01:44