弁護士らめーん先生による「性犯罪被害者が被害を申告したら起こること」

ということで、どうぞ。
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らめーん @shouwarame

東京の弁護士です。カラオケバカ一代。 安全ピントラブル対策弁護団に参加しています。

らめーん @shouwarame

性犯罪の被害者が、起訴前に被害弁償を受領して不起訴になることについて、非難するツイートをここ数日散見するので、「性犯罪被害者が被害を申告したら起こること」をツイートしていきます。(本業の都合で時々途切れます)

2019-01-30 10:06:21
らめーん @shouwarame

性犯罪被害者が警察に相談したら、起訴前に、最低限でも警察で1回、検察で1回事情聴取をします。弁護士の目で見れば、ここ10年の間に捜査機関の性犯罪被害者に対する配慮の状況は格段に進歩していますが、行為そのものについての質問には答えないと証拠になりませんから、被害者にはキツいです(続

2019-01-30 10:10:58
らめーん @shouwarame

性犯罪の被害者は、ほぼ急性ストレス障害かPTSDになっているので、解離症状が事情聴取の最中に出れば、起訴に必要な供述をすることができませんから、何度も事情聴取をするか、立件されないかの二択です。

2019-01-30 10:14:01
らめーん @shouwarame

捜査機関も被害者の生活に配慮してくれるので、仕事や家庭に響かない時間帯に聴取してくれようとしますが、場合によっては仕事を何度も休まなければならないリスクもあります。(何度も休めば、職場でバレるかも?と心配にもなります

2019-01-30 10:17:47
らめーん @shouwarame

起訴された場合、加害者には起訴状が示されます。起訴状には被害者の氏名と、性犯罪の場合は年齢が記載されています。 起訴状に被害者の氏名を記載しない運用が5年程前に始まりましたが、その翌年当たりに被害者氏名を起訴状に記載しないことを違法とした地裁判例が出て以来、検察は必ず記載します(続

2019-01-30 10:23:25
らめーん @shouwarame

被害者にとって見れば、わざわざ氏名を加害者に知られることの恐怖は強く、起訴を断念する被害者は当然います。

2019-01-30 10:25:26
らめーん @shouwarame

「起訴前に示談金を受け取らないと、被害者は公判廷で供述しなければならない」と言う弁護士がいますが、正直ピンときません。起訴前に被害弁償の申入れをするのは、殆どが自白事件であり、性犯罪の自白事件の公判で被害者が証人尋問されることは殆どなく、供述調書での立証が通常です(続

2019-01-30 10:29:39
らめーん @shouwarame

被告人は自白したら刑が軽くなることを期待しています。調書に同意せず、被害者を法廷に引っ張り出したら裁判所は嫌な顔をしますから、普通は同意しますね(続

2019-01-30 10:33:08
らめーん @shouwarame

逮捕段階で示談の申入れがあったのに、被害者が公判廷で証言しなければならないのは、「被疑者が起訴後否認に転じた場合」「被害者が自白はしないが、早期解決を望んで、見舞金解決金を提示する場合」の2つです。(続

2019-01-30 10:36:02
らめーん @shouwarame

後者は、民事訴訟の相場と比べて非常に高額である場合が多いです。

2019-01-30 10:36:55
らめーん @shouwarame

性犯罪被害者を証人尋問する場合、検察は遮蔽かビデオリンクの請求をします。この請求は、まず認められると言っていいでしょう。(続

2019-01-30 13:00:45
らめーん @shouwarame

遮蔽が入ると、被告人や傍聴席から、被害者の姿は見られなくなりますが、被告人と同じ空間にいること自体、被害者にはとても恐ろしいものです。また傍聴席に声は聞こえますので、声で知り合いにバレたらどうしようと思う被害者もいます。

2019-01-30 13:06:53
らめーん @shouwarame

ビデオリンクだと、証人には質問者の顔しか見えません。法廷で証人尋問をする場合、反対尋問の際は、味方である検察官、中立の裁判官の顔を見て心を落ち着けることも可能ですが、ビデオリンクだと、被告人の味方である弁護人の顔しか見えません。これはなかなかきついです。(続

2019-01-30 13:11:05
らめーん @shouwarame

被害者に弁護士がついている場合は、一緒にビデオリンク室に入ることによって被害者の緊張を緩和することができますが、ビデオリンクがあるから証人尋問の負担は少ないだろうという言説は、机上でものを考えすぎです。(続

2019-01-30 13:13:23
らめーん @shouwarame

性犯罪の被害者は大抵PTSDですから、「公判廷に来られない」「公判廷で解離を起こして話せない」のが最も恐ろしい事態です。 被害者は検察側の証人ですから罪となるべき事実を立証できなければ無罪です。(続

2019-01-30 13:17:13
らめーん @shouwarame

私や私が尊敬する被害者系の弁護士は、尋問の事前練習をして想定できるストレスは全て事前に体験してもらっていますが、このようなことをする知識がない弁護士もいます。

2019-01-30 13:20:19
らめーん @shouwarame

以上の裁判のスケジュールは、被害者のPTSDの治療の進行とは無関係に組まれます。性犯罪被害者を多数診ている精神科医は、被害者が司法手続に関与した場合、一時的に状態は悪化すると仰います。同時に、このような場合、刑事裁判が終了したとき「予後が良い気がする」とも仰いますが(続

2019-01-30 13:25:46
らめーん @shouwarame

母数が少ないので統計上明らかとまでは言えません。

2019-01-30 13:26:25
らめーん @shouwarame

以上、わかりやすくするため、アウトラインのみ説明しましたが、今後、ちょっと細かいことも説明します。

2019-01-30 13:27:57
らめーん @shouwarame

私が逮捕直後あたりに被害者の代理人についた場合の話をします。(続

2019-01-30 13:30:35
らめーん @shouwarame

弁護人から示談の申入れが来た場合、先程ツイートした事情を被害者に説明して、起訴に耐えられるかをメインに確認し、被害弁償を受けるかを検討します。 弁償を受けたら不起訴となり、前科もつかないことも説明します。(続

2019-01-30 13:32:51
らめーん @shouwarame

被害弁償を受け取らずに有罪判決が出た場合、被害者が回収リスクを負うことは丁寧に説明します。(続

2019-01-30 13:35:51
らめーん @shouwarame

前科もつかないのは嫌だけれど、回収リスクを負うのも嫌という場合、起訴後判決前に被害弁償を受領するのが基本になりますが、事件の筋により受領すべき時期に、色々バリエーションがあり得ます。(続

2019-01-30 13:37:49
らめーん @shouwarame

起訴前には、被疑者の弁護人も被害者の代理人も、事件記録を閲覧謄写することができません。そこで、お互いに、自分の依頼者から聞き取った事情を元に、腹の探り合いをします。逮捕当初、自白事件と言われ、被害者と被疑者の供述の一致点が多い場合でも、重要部分の供述が異なる場合(続

2019-01-30 13:40:38