中国のグワダル（インド洋）進出の地政学的重要性について

fj197099 @fj197099

パキスタン、中国に海軍基地建設を要請　米印を牽制か（http://bit.ly/jLOlv9）…これは重大ニュース。グワダルというのは地図で見れば分かるがホルムズ海峡の外にあたり中東からの原油輸送ルートを扼する位置にある戦略的に極めて重要な地点だ。そこに中国が進出するというのだ。

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この記事はFT紙の報道の一部しか触れていないが、本当は中国とパキスタンはグワダル港の管理運用を現在それを担当しているシンガポール港湾当局との契約が切れ次第、中国が担うことで合意したのだ。軍事的というよりはまず物流の重要拠点を中国が抑える姿勢を見せたという意味で重要なニュースだ。

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その上でパは中国に海軍基地建設を要請した訳だがこれには中国はまだ答えていない。が、J-17の50機供与など中パの軍事協力が深まる中でパがこういう要望を中国に示したことは米国、インド、それに当然海上交通路を抑えられる可能性のある日本も刺激せずにはおかない。地政学的重要性がある話だ。

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中国には地政学的に「マラッカ・ジレンマ」と呼ばれるジレンマがある。すなわち中国の中東方面からの物流、特にエネルギー供給の大半は海上輸送に依存している訳だが、それはマラッカ海峡を経由して運ばれてくることになる。しかし中国はインド洋における海上覇権を持たず、有事の際に脆弱性がある。

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インド洋を支配するのは米海軍とそれに中国とはしばしば敵対するインドだ。よって中国は西太平洋方面で攻勢に出ようとしても、このマラッカ・ジレンマがある限り長期戦を米国とは戦えないのだ。故に中国は地政学的にインド洋における脆弱性を克服すべく、2006年頃から陰に陽に進出を開始している。

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それがインド洋の周辺のインド以外の国家の港湾の整備に中国が支援を行うという所謂「真珠の首飾り」と呼ばれる戦略（政府による意図的なものとは確認されていないが）なのであるが、グワダル整備はその最重要の拠点のひとつなのだ。中国にとってパキスタンとの協力は価値の高いものである。

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中国はパキスタンと協力することで南アジアにおけるインドの影響力をけん制することが出来、インド洋における脆弱性を低下させることが出来る。またグワダルはホルムズ海峡の口を抑えるものであるから、逆にここを軍事基地化すればインドや日本等のエネルギー供給を制約することもできるのである。

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パキスタンは現在、無人機攻撃やビンラディン殺害に端を発する騒動で米国との関係が大きく揺らいでいる。インドとの関係も悪化の恐れがあり、孤立無援だ。中国との提携をぜひ拡大したい状況におかれている。故にこのタイミングで中国によるグワダル整備の話が出てきたことは極めて良く理解できる話だ。

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だが中国のグワダル整備を初めとする「真珠の首飾り」戦略はどこまでうまくいくのかは疑問だ。グワダル港自体がまだまだ未整備の状況であり、発展には長い年月と費用がかかる。それに中国は米国やインドを刺激してまでここに海軍基地を作るつもりがあるのかは分からない。危険すぎる試みとも言える。

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さらに先日のTTPによるPNS Mehranへの武装攻撃が暗雲を漂わせる。同基地には中国人もおり危うく難を逃れた。中国も新疆ウイグルでイスラム勢力と戦っておりパ政府を軍事的に支援までするとなればテロの標的になりかねない。そしてカラチで起こることはグワダルでも起こるであろう。

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要するに、中国にはパ国内及びグワダルでの影響力を拡大する明らかな地政学的利益があるが、同時にそれを追求することの人的・経済的及び政治的コストも無視できないであろうということなのである。この話、直近にどうこうということではなくても、日本としても無視できないので注視すべき話である。