僕、走っている、走っている、風と土と草いきれを吸い、少年の僕は、走っている、いい感じだ、野を駆け抜けるとは心地良いことだ、雲の影。
2011-05-25 22:09:58僕は、走っている、走っている、息継ぎは苦しいけれど、駆け抜けている、この感触、世界を追いかけて、そして世界が少年の僕を追いかけてくる、雲の影。
2011-05-25 22:12:41私は3.11以降、震災にまつわる新聞や雑誌を集めて、少しずつ切り抜きをしているが、切り抜きをしても追いつかないのだ、紙とハサミとの間で、震災が繰り返されているから、冷たい汗。
2011-05-25 22:13:48津波の後を眺めながら、相馬の浜を走っていた。船が陸に上がり横倒しになって、瓦礫が積み上がっているところから、恰幅のいい男性が、拳でぼろぼろとこぼれる涙を拭きながら歩いてきた…。
2011-05-25 22:16:59何を失ったのか、流されてしまったのか、分からないけれど…、これまでたくさん人生を生きてきて、拳で拭わなくちゃならない悲しみを、今まで予想してきたことがあったのだろうか、そう思った。… そう語り、ある日、Aさんは泣いた。
2011-05-25 22:17:28私は髪を洗う、私も泣くしかない。避難している人々は慌てずに落ち着いて、福島の山間を抜けて下さい…、そんなラジオ放送を聞きながら、お風呂に入ったっけ…、浴室はあれから一度も、窓を開けていない。
2011-05-25 22:18:37水に浮かんだ畳の上に、ご老人が座っていた。消防団の人が、それを見つけて、ロープを投げた、必死の救出が始まったが、悲しくも水の上でしだいに彼は力を奪われていった…。
2011-05-25 22:19:51彼は、「立派な、いわきを作ってくれ」と叫んで、手を離して、まもなく海に沈んでいった…、助けられなかった、消防団の人々はみな、悔しくて泣きじゃくった。…それを教えてくれながら、ある日、Oさんは泣いた。
2011-05-25 22:20:49富岡町のある人は、2時間の帰宅を許された。久しぶりの家の中に入って、その人はずっと、あることをしていました。何をしていたのか、分かりますか? とOさんは私に聞いた。
2011-05-25 22:23:26そしてその方は、何も持たないで家から、帰ってきたそうです。Oさんは、その方に、このように話したそうだ。「泣くために家に帰ったんだ…、と思えばいいじゃないですか。」
2011-05-25 22:26:10僕、走っている、走っている、野を駆けていくと、風景が優しくなる、空が歌ってくれる、風が手をつないでくれる、少年の僕は福島の風と土がとてつもなく好きだ、走る、走る。
2011-05-25 22:28:31お風呂には依然として、震災が溜まっている。そろそろと熱くなったから、私は湯から上がりたい、浴室はあれから一度も窓を開けていない。震災でずぶ濡れだ。
2011-05-25 22:30:17