安眠練炭(aNmiNreNtaN)さんによる城平京『虚構推理 鋼人七瀬』の感想
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『虚構推理』は「解明の論理」を捨てて「解釈の論理」に焦点を絞った作品なので、いわゆる「後期クイーン問題」の余地はないように思います。
2011-06-04 21:03:21というわけで、全然まとまっていないけれど、『虚構推理』について考えていることをここでつぶやいてみることにしまするTwitterという場では未読の人への警告にはあまり意味がないので、あまり細かい内容に立ち入らないことにします。
2011-06-05 01:22:24ここで予め断っておきますと、私は何かがミステリである、またはミステリではないと主張することによってなんらかの価値判断を行うつもりはありません。「こんなのミステリじゃない!」という叫びはマイナスの価値評価を含むでしょうが、そのような含みはないものとお考えください。
2011-06-05 01:25:35このように述べると、「それはミステリの範囲を狭く取りすぎている」という反論と「いや、『虚構推理』はあくまでも謎解きを中心に据えた小説だ」という反論が想定できます。
2011-06-05 01:27:52後者に対する再反論は簡単です。「では、『虚構推理』の中心的な謎とはなんでしょうか?」と問い返すだけで足ります。仮想上の反論者は「この小説の結末」とか何とか、「中心的な謎」の候補を提出できるかもしれません。
2011-06-05 01:31:03しかしながら、小説の結末ないし先行きが謎だというのでは、プロットにひねりを持たせて、先読みしにくく、意外な展開を見せる小説はなんでもミステリだということになってしまうでしょう。
2011-06-05 01:32:10やはり、常識的にミステリで取り扱われる種類の謎は、『虚構推理』では大きな役割を与えられていないものと考えるのが適切でしょう。
2011-06-05 01:32:56では前者の反論はどうでしょうか? ミステリとは単に謎解き小説を指すのではなく、より広い範囲の小説がミステリに含まれうるのだ、という反論です。
2011-06-05 01:33:51ここでちょっと蛇足。いま私は「ミステリ」を「探偵小説」ないし「推理小説」と同じく、小説のジャンルのひとつを表す名称として用いています。ミステリマンガやミステリ映画などは話を簡単にするために抜いていますが、仮に小説以外の媒体を含めても説明がくどくなるだけで論旨に違いはありません。
2011-06-05 01:35:35ミステリは謎解きという要素だけで成り立つわけではない、というのは確かですが、謎解きという要素が全くなかったり稀薄だったりする小説をミステリと呼ぶのはいかがなものか、と思いますが、これは個人的な見解です。
2011-06-05 01:37:02したがって、そうではない見解の人とは議論が平行線を辿ることは見えていますが、いちおう付け加えていると、私が「謎解き」というとき、推理によって事件の謎を解くという作業以外のものも念頭に置いています。
2011-06-05 01:38:17たとえば、探偵が重要参考人をぶん殴って証言を引き出して事件の真相を知るのも、謎解きのうちに含まれるでしょう。犯人の手記で真相が明らかになるのも、まあ謎解きと言えなくないかもしれません。
2011-06-05 01:39:39というわけで、現にミステリとして流通している小説のほとんどは謎解きの物語だと言えそうだとおもっているわけです。もっとも、謎解きにどの程度重きを置いているかはそれぞれですから、中には私の印象ではミステリとは呼びがたいほど謎解き要素が稀薄なものもあります。
2011-06-05 01:41:35『虚構推理』の場合は、謎解きの要素が稀薄だからミステリではないというよりも、読者の知的緊張感を高める仕掛けが濃厚に含まれているのだけれど、それは解かれるべき謎として提示されるのではなく、別の仕方で提示されていると考えます。
2011-06-05 01:44:15先ほど断っておいたところですが、念のため再度強調しておきますが、『虚構推理』がミステリではないという私の主張は、この小説を軽くみるとか、つまらないものだと断ずるというものではありません。誤解なきよう。
2011-06-05 01:45:35実を言えば、『虚構推理』がミステリではない、と言ってみたのは、「では、ミステリでないなら、どのような特質を持った小説なのか?」という論点に話を持っていくためのマクラに過ぎません。ですから、別にミステリかどうかという点に固執しているわけではありません。
2011-06-05 01:47:18知人と話をしていたとき、「『虚構推理』はミステリかどうか」という話題になり、私は「ミステリではなくミステロイド(擬似ミステリ)だ」と言いました。それに対して知人は「幻想探偵社がミステリなせらこれもミステリだろう」と言いました。
2011-06-05 01:50:16幻想探偵社というのは清水義範の初期のシリーズで、『こちら幻想探偵社』『ABO殺人事件』など数冊がソノラマ文庫から刊行されています。ノベルスでも出ていた時期がありましたが、今入手できるかどうかはわかりません。そして、残念なことに私は1冊も読んでいません。
2011-06-05 01:53:21あ、今検索してみると、『こちら幻想探偵社』はシリーズ名で『ABO殺人事件』がメインタイトルですね。きちんと書誌情報を調べずに書いてしまいすみません。
2011-06-05 01:56:06ついでに言えば『ABO殺人事件』というタイトルの小説は吉村達也も書いています。比較的初期の作品ですが、清水義範よりはあとです。先行する作品があるのを知ってて同じタイトルを使ったのかどうかは知りませんが、吉村達也の『ABO殺人事件』はふつうのミステリです。
2011-06-05 01:57:53本題に戻ります。清水義範の幻想探偵社シリーズは先に書いたとおり私は読んでいませんので、どの程度『虚構推理』に似ているのかはわかりません。今から読もうにも本が手に入らないし、一所懸命に古本屋を探し回る意欲もありません。興味と熱意のある方は比較してみてください。
2011-06-05 02:00:21ミステリまたはその周辺作品の中で『虚構推理』に似ている作品として挙げられるものがいくつかあります。たとえば、田代裕彦の『セカイのスキマ』などがそうですが、残念ながら私はこれも読んでいません。
2011-06-05 02:02:15同じ作者の『平井骸惚此中ニ有リ』は全部読んだのですが『キリサキ』以降は読んだり読まなかったりで、『セカイのスキマ』は1巻は買った記憶があるのですが、今探しても見つかりません。
2011-06-05 02:04:44