新型コロナウイルスのPCR検査を求める人に知っておいてほしいこと

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日本感染症学会と日本環境感染学会の共同公式見解では、新型コロナウイルス のPCR検査について次のように述べています:

5、現在、実施されているウイルス検出のための検査(PCR法)には限界があります。

 新型コロナウイルスは、主に咽頭や肺で増殖しますが、インフルエンザに比べてウイルス量は少ないと考えられています。PCR法という核酸検査で増幅してウイルスを検出する方法が診断に応用されています。最初の検査で陰性で、2回目の検査で陽性となった症例も報じられました。インフルエンザに比べて1/100~1/1000といわれるウイルスの少なさは、検査結果の判定を難しくしています。とくに早い段階でのPCR検査は【決して万能ではない】ことをご理解ください。

見解の全文はこちらで読めます。
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_mizugiwa_200221.pdf

また見解PDFファイルの最後の2ページにまとめられている医療従事者向けの対応指針には、PCR検査の実施基準について次のように書かれています。

3.遺伝子検査は、“入院が必要な肺炎例でウイルス性肺炎を疑う場合”に実施します。

新型コロナウイルス感染症の診断は呼吸器検体を用いた遺伝子診断で行われます。現 在のところ、限られた医療機関でのみ検査が行われていることから、症例を絞って検査を依 頼することが必要となります。外来でみる軽症例(疑い例)に対しては遺伝子検査を行わず、 感染を拡げないように説明したのち自宅安静の指示を出します。一方、入院を要する肺炎例 でウイルス性肺炎を疑う場合医師が総合的に判断して、新型コロナウイルス感染症を疑 う場合には遺伝子検査を実施します。

第1部

室月淳Jun Murotsuki @junmurot

新型コロナウイルスの検査は重症者のみという行政の方針は医学的にはまったく正しい。PCRの感度特異度は高くなく、これをローリスクの対象者に行えば大混乱となります。しかしこのことは一般のひとの直感に反するためなかなか理解されません。検査は不安をなくするために行われるものではないのです。

2020-02-24 05:06:59

(以下に補足説明をいただきました。ぜひ通してお読みください)

室月淳Jun Murotsuki @junmurot

なんかバズっているので,先週発売になったわたしのはじめての著書「出生前診断の現場から」(集英社新書)を宣伝させてください. shinsho.shueisha.co.jp/kikan/1012-i/ というのは半分冗談で,以下に検査の意味を補足させていただきます.できれば感染症の専門家に解説をいただければうれしいのですが.

2020-02-24 13:37:01
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

「検査」というのはすればするほどいいわけでも,安心できるわけでもないことを説明します.もちろん検査のコストや時間のこと,感染がわかっても医療対応にはかわらないこと,また医療機関がパンクして救えるはずの命を救えなくなるといったことなどがありますが,以下に説明する重要な点があります.

2020-02-24 13:39:07
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

検査には,感度(罹患者のうち陽性になる割合),特異度(非罹患者のうち陰性となる割合),陽性的中率(陽性のとき実際に罹患している割合),陰性的中率(陰性のとき真に罹患していない割合)の4つの尺度があります.医師は公衆衛生学で徹底して訓練を受けるのですが,一般的には混乱しそうですね.

2020-02-24 13:41:02
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

仮にこのPCR検査の感度を90%,特異度を90%とします(よく知りませんが,実際はさらに低いかも).しかし検査をうける本人にとって真に重要なのは感度や特異度ではなく,検査陽性のとき実際に感染している割合(陽性的中率),または陰性のときほんとうに感染していない割合(陰性的中率)なはずです

2020-02-24 13:42:34
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

ここでは感染の見こみが高いひとを「ハイリスク」,低そうなひとを「ローリスク」とよびます.陽性的中率,陰性的中率はこの事前の見こみによって大きくかわってくるのです.仮に,事前のリスクが50%程度見こまれるハイリスクのひとであれば,図のように陽性的中率,陰性的中率はいずれも50%となります pic.twitter.com/W2L8BTeuuj

2020-02-24 13:45:17
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tobiro @tobiro

@junmurot 「図のように陽性的中率, 陰性的中率はいずれも50%となります」 90%では?

2020-02-24 14:28:20
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

@tobiro そのとおりです.ご指摘ありがとうございます.

2020-02-24 14:29:25
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

逆に近所に患者がいたとか,風邪症状があって心配だというひとが検査を受けるとき,仮にその感染リスクを2%程度とします.そうすると,検査陰性のときに非罹患は99.8%ときわめて高いのですが,検査陽性のときに真に感染しているのはわずかに15%程度にすぎません.85%は偽陽性者ということになります. pic.twitter.com/sdxUtJbmDY

2020-02-24 13:47:27
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感度と特異度の値を入れると陽性的中率を推定してくれるサイトがこちらです。
https://screening.iaigiri.com
はてなブックマークでご紹介くださったTAKESAN (ublftbo )さん、有難うございました。

室月淳Jun Murotsuki @junmurot

検査をなるべく多くするということがいかに無意味かおわかりになるでしょう.1日1万件以上の検査など狂気の沙汰で,偽陽性が毎日何百人もでてきて,その多くのひとたちが殺到して医療機関をパンクさせます.健康人を14日間も拘束隔離したり,レッテルを貼って差別したりする重大な人権侵害を招きます.

2020-02-24 13:55:22
室月淳Jun Murotsuki @junmurot

公衆衛生学の試験勉強で覚えた大昔の知識を思いだしながら書きました.繰りかえしますが検査はすればするほどいいわけではありません.検査は不安をなくすためにおこなうのではなく,医学的に必要と判断されたときにおこなうべきなのです.以上,専門家からの訂正やご教示をお待ちしております.

2020-02-24 13:58:36

(補足説明ここまで)

fussa23🇯🇵@IT減税会会員 | 不平不満を言うよりもテレビを窓から捨てましょう @fussa23

@junmurot @smith796000 検査をしてもしなくても治療方法は変わらないと言ったほうが良いかもしれません。多くの人はウイルスにより治療方法が異なると誤解していると思います。 既知の多くのウイルス同様陽性/陰性に関係なく対症療法で治りますよね。間違っていたらすみません。 natrom.hatenablog.com/entry/2020/02/…

2020-02-24 10:57:57

(↑病原体に応じた治療法があるなら検査をして病原体を突き止める意味は大いにありますが、新型コロナウイルス 感染症にはまだそれがなく、使えるのは呼吸器症状に対する対症療法だけです)

名取宏(なとろむ) @NATROM

[もし家族が肺炎になったら新型コロナの検査を要求するか? natrom.hatenablog.com/entry/2020/02/… ]。社会的リソースとか抜きに家族の利益だけを考えても私は要求しません。検査しても得しません。ただ、検査をして欲しいという気持ちはよくわかります。

2020-02-22 23:30:44
リンク NATROMのブログ もし家族が肺炎になったら新型コロナの検査を要求するか? - NATROMのブログ COVID-19(いわゆる新型コロナウイルス感染症)症例が福岡でも出ました。私の外来にも「新型コロナが心配」という患者さんがぼつぼつ受診しています。幸い、私の外来ではいまのところはどなたも肺炎にはなっておらず、現時点では検査は不要だとご説明し、ご納得を得られています。たまに誤解している人もいらっしゃいますが、現在(2020年2月22日)では新型コロナの検査に、中国への渡航歴や感染者への接触歴は必須条件ではありません。そうした条件を満たしていなくても、入院を要する肺炎や医師が総合的に判断し新型コロナ感染症を 484 users 542

(流行期のインフルエンザ対策を参考に:検査偏重はかえって悪手)

名取宏(なとろむ) @NATROM

季節性インフルエンザについて「検査陽性なら5日間休み。陰性なら出勤してよし。ていうか出勤しろ」といった検査偏重の運用がなされていたのがそもそも問題です。バスツアーに参加した新型コロナ陽性の方も、参加しても大丈夫と判断した理由の一つがインフルエンザの検査での陰性ではないでしょうか。

2020-02-23 11:07:40

(↑「バスツアーに参加された新型コロナ陽性の方」とは「富山県発のバスツアーに千葉県から参加し、帰宅後感染確認された人」
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000598745.pdf
でした)

名取宏(なとろむ) @NATROM

2年前に書いた記事。[インフルエンザ蔓延予防のための受診は必要か? natrom.hatenablog.com/entry/20180216… ]。検査に頼りすぎず、偽陰性かもしれないことも念頭においた感染対策をしましょう。

2020-02-23 11:11:42
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