「輸送体の構造解析とその進展」第1回

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HattoriM @HattoriM

というわけで、先週予告した「1998年以降の膜タンパク質、特に輸送体のX線結晶構造解析とその進展」の第一回をはじめます。

2011-06-20 13:09:04
HattoriM @HattoriM

次回からの具体的な構造解析の話の前に、今回はそのための基礎的な前提知識を説明します。基本的な内容なので当該分野を専門とされている方には退屈な内容かもしれません。

2011-06-20 13:10:01
HattoriM @HattoriM

ちなみに、今回を含むこの連続ツイートは、いわゆるサイエンスコミュニケーションではありません。主な対象は、膜タンパク質にあまりなじみがない構造生物学研究者の方、もしくは膜タンパク質、特に輸送体研究者の方です。もしくは、当該分野に興味をもたれている生物系研究者の方です

2011-06-20 13:11:11
HattoriM @HattoriM

それでは、最初に、そもそも「膜タンパク質」「生体膜」とはなんだろうか、ということからはじめます、という予定だったのですが、一通り書きあげた時点で長さがtwitter向きではないものになってしまいました。

2011-06-20 13:13:32
HattoriM @HattoriM

そのため、完全バージョンは後日http://biokids.org/に掲載される予定です(@kun32xuさんのご厚意によります)。

2011-06-20 13:14:58
HattoriM @HattoriM

よって、今回投稿するのは、予定原稿の後半部のみとなります。そのため、分野外の方には「???」な内容かもしれませんが、ご容赦ください。。。

2011-06-20 13:15:23
HattoriM @HattoriM

さて、次回から、輸送体タンパク質の立体構造解析についてお話をしていくわけですが、お話の開始点である1998年はどんな時代だったのでしょうか。

2011-06-20 13:16:29
HattoriM @HattoriM

ここに生体高分子、主にタンパク質の立体構造データベースであるProtein Data Bank (PDB)における毎年の登録数の増加チャートを示します。 http://bit.ly/jvK1qk

2011-06-20 13:17:18
HattoriM @HattoriM

明らかに1990年代、特にその後半から爆発的に構造数が増えているのがわかると思います。これはなぜでしょうか。

2011-06-20 13:18:12
HattoriM @HattoriM

(2000年代後半から年ごとの増加数が横ばいである、というのもこれとは別に興味深い傾向ではありますが…)

2011-06-20 13:19:10
HattoriM @HattoriM

この爆発的増加は数々の技術進歩が互いに関係しあっていますが、一例としては、組み換えタンパク質の発現技術、シンクロトロン放射光の利用、解析のためのソフトウエア、ハードウェアの急速な進歩などが大きな要因としてあげられるのではないでしょうか。#memstruct

2011-06-20 13:22:01
HattoriM @HattoriM

当時の状況としては「構造解析に適した安定なタンパク質試料を大量調製し、 (X線結晶構造解析の場合)結晶化することができれば、それ以前の時代と比べて短期間で構造解析が可能な時代が到来しつつあった」ということです。#memstruct

2011-06-20 13:23:22
HattoriM @HattoriM

(90年代後半当時は今ほど楽な時代じゃなかったぞ!と言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、70年代、80年代と比べて、ということでどうでしょうか。。。) #memstruct

2011-06-20 13:24:12
HattoriM @HattoriM

その一方で、今現在メジャーな教科書にのっている チャネル、トランスポーターその多くは、1980年代、1990年代、クローニングおよびDNA配列解読されており、1998年までに現在知られている役者の多くが揃った状態となっています。#memstruct

2011-06-20 13:25:21
HattoriM @HattoriM

たとえば、古くからその存在が知られており、活動電位の発生に重要な役割を果たす「電位依存性ナトリウムチャネル」、そのcDNAクローニングが初めてなされたのは1984年のことです。これは日本のグループによります。http://1.usa.gov/m4Hv7R #memstruct

2011-06-20 13:26:01
HattoriM @HattoriM

また、@emeKatoさんがブログ(http://emejournal.blog.fc2.com/)で取り上げられていた、Lacオペロンに含まれるラクトース輸送体LacYのクローニングおよびDNA配列解読がされたのは1979、1980年にかけてです #memstruct

2011-06-20 13:27:20
HattoriM @HattoriM

これは主に1970年代から1980年代にかけての遺伝子組み換え技術、またそれを利用した組み換えタンパク質発現系、DNA sequencing, PCRなどの技術進歩によるものであり、当時は膜輸送体に限らず多くの遺伝子が次々とクローニングされていた時代でした #memstruct

2011-06-20 13:28:36
HattoriM @HattoriM

さて、数多くの輸送体遺伝子がすでにクローニングされ、その一方でタンパク質の立体構造解析数が爆発的な上昇をみせている時代に、本稿の主題である、「膜タンパク質、特に輸送体の構造解析」はその頃どうなっていたのでしょうか。#memstruct

2011-06-20 13:29:27
HattoriM @HattoriM

タンパク質の立体構造解析数が爆発的な上昇をみせている中、膜タンパク質の構造解析例は、1998年当時非常に限られた状況にありました。#memstruct

2011-06-20 13:30:07
HattoriM @HattoriM

当時の膜タンパク質の構造解析の成功例というと、光合成中心、呼吸鎖複合体、バクテリオロドプシン、もしくは外膜由来のporinなどごく一部の例に限られており、それら成功例も、かなり長期間を以て成し遂げられたものが少なくないようです。#memstruct

2011-06-20 13:31:13
HattoriM @HattoriM

以前、@MamoruSUZUKIさんから、某先生の退官記念誌をいただいたことがあるのですが、それによると、シトクロムcオキシダーゼの最初の「結晶」が得られたのが1980年とありました(構造論文の第1報は1995年、全体構造の報告は1996年)。#memstruct

2011-06-20 13:33:02
HattoriM @HattoriM

また、当時、シトクロムcオキシダーゼにおいて競争相手であった海外のグループも、構造解析まで20年近い期間が必要であったと以前どこかで話を聞いた覚えがあります。#memstruct

2011-06-20 13:33:49
HattoriM @HattoriM

そんな中、本稿の主題であるいわゆるチャネル、トランスポーターの構造解析成功例は数少ないどころかまったくゼロという状況でした #memstruct

2011-06-20 13:34:46
HattoriM @HattoriM

(厳密に言えばの先述の成功例のうち前者3つはprimary active transporterに入りますが。。。)。 #memstruct

2011-06-20 13:35:33
HattoriM @HattoriM

そのため、たとえば 輸送体がどのように特定の輸送基質のみを選択的に認識、輸送しているのかという基質選択性の問題や、チャネルの開閉制御機構、トランスポーターによる輸送サイクル機構の詳細といったよう膜輸送体研究における重要課題は多くの謎に包まれた状態にありました #memstruct

2011-06-20 13:36:42