文化大革命と父
- shu_cho0118
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【文化大革命と父1】ぼくの先祖は、国民党時代の銀行家だったらしい。祖父の祖父くらいの時代だろうか?河北の一地域で最も大きい地銀の副頭取だったらしい。かなり広い土地(日本で言うと市レベル?)を所持していて、大きい屋敷に住んでいたらしい。らしいというのは、いまでは見る影もないから。
2011-06-28 04:43:52【文化大革命と父3】ぼくの父親の幼少時代でも、肉体的な虐待こそないけれど、進学等に関してはかなり制限があったようだ。父曰く「高校時代は学年で1番だったのに、大学への進学は身分のせいでできなかった」そうだ。そして、文化大革命のさなか、田舎へ働きに行かされた。
2011-06-28 04:49:20【文化大革命と父2】文化大革命のときに、財産はすべて没収されて、土地は農民にわけられてしまった。そして一家は「地主出身」というレッテルを張られた。中国式共産主義社会において、そのレッテルはずいぶんと不名誉で不利なものだったようだ。親戚の中には、殺された人もいたとかなんとか…
2011-06-28 04:46:53【文化大革命と父4】数年間農作業をして、やっと文化大革命は終わった。それからすぐ大学受験をして、一発で合格したんだそうだ。合格率は1%程度だったというから、かなりの難しい試験だったんだろう。「勉強する暇もなかったのに、ちゃんと受かったんだよ」と今でも自慢される。
2011-06-28 04:53:11【文化大革命と父5】それから、大学で一生懸命勉強して、准教授までになった。鶏の飼育では、中国ではかなり有名だったんだそうだ。それに、経営のカンもあったらしく、大学の経営する養鶏場を立て直したらしい。一農民から、大学の教授なんて、普通じゃない努力をしてきたんじゃないかなと思う。
2011-06-28 04:56:05【文化大革命と父6】そんな父も、ぼくの「日本がいい」というわがままを聞いてくれて、中国での地位もチャンスもすべて捨てて、サラリーマンとして日本にやってきた。「教授」という権力や金や名誉を、息子の将来のために捨てた。すごい思いっきりの良さだな。
2011-06-28 04:59:15【文化大革命と父7】……いま考えると、父はなんとなくわかっているんだろうな。金とか名誉とか、たいして大事じゃないって。きっと、文化大革命という歴史の荒波の中で、そんなものを手に入れたところで、空しいことがわかっていたんだろう。
2011-06-28 05:01:24【文化大革命と父8】彼にとって大切なのは、きっと一人息子のぼくだけなんだろうな。それ以外は、全部副次的。だから、息子のために最善の道を選ぶ。実務面ではすでにぼくが父に対してアドバイスをすることのほうが多くなったけど、なんだかんだ、そういう「覚悟」の部分では、まだまだ負けてるな。
2011-06-28 05:03:58【文化大革命と父9】もし文化大革命がなかったらと考えると…ぼくはきっと先祖の築き上げた財産の上でちやほやされる坊ちゃんになってるんだろうなと思う。……てか、そもそも生まれてないか。文化大革命は決してよいものとは言えないが、ぼくを育ててくれた環境を作ったのは、間違いなくあの奔流だ。
2011-06-28 05:09:15【文化大革命と父10】今の日本でも、文化大革命に匹敵するような大きな奔流が起こっている。大震災。それによって、多くの命が失われたが、生き残った人たちにとっては、言い方は悪いがチャンスだと思う。父のように、「覚悟」を持って生きてほしい。きっと、それが唯一、死んだ人への手向けになる。
2011-06-28 05:13:26【文化大革命と父11】結局、ぼくたちは、自分の力ではどうしようもない理不尽な喪失を経験しないと、自分の「命」の短さを理解できないのだろう。何のために生きるのか、なぜ死ねないのか……ぼくにはまだ、見えていない。
2011-06-28 05:16:43