生産性が高くなると貧しくなる?

生産性向上はよいことだと思われているが、果たしてそうか。経済学上の矛盾が大きい農業を事例に考える。
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shinshinohara @ShinShinohara

日本の農業は大規模化、コメ離れが進んでいる。一人一人の農家の経営戦略としては、それでよいと思う。ただ、国は国民を食べさせなければならない使命を負っている。もう少し工夫しないと大変なことになるかも、と、心配している。

2020-08-12 22:15:45
shinshinohara @ShinShinohara

農業問題を考える際、食糧、農業、農家、この3つは分けて考える必要がある。国民全員を養わねばならないという食糧の視点を重視すると、必ずしも日本の農業や農家を守ることにならない場合がある。逆に農家を守ると、食糧供給が危うくなることも。話は単純ではない。

2020-08-12 22:17:15
shinshinohara @ShinShinohara

私はできれば、食糧も農業も農家も、三つとも守れる方策を探すことが大切だと思っている。どれかだけに偏すると大切なものを失い、逆に偏重していたものまで危うくなるかもしれない。国民の食糧安全保障を守り、日本の農業を守り、農家を守る方策はないか、考え続ける必要がある。

2020-08-12 22:18:38
shinshinohara @ShinShinohara

冒頭に述べたように、日本では大規模農業が推進されているが、SDGsはむしろ小農を応援しようとしている。小農は石油消費が2~3割なのに食糧の7割を生産している。大規模生産法人は石油を7~8割消費して、食糧は3割ほどしか生産していない。私たちの食糧を支えているのは小農。 twitter.com/ShinShinohara/…

2020-08-12 22:21:51
shinshinohara @ShinShinohara

「小農民の食料供給では、多種多様な品種を細やかに活用して土地・水・化石燃料の2~3割の利用で食料供給の7割を担っている」「大規模企業型の食料供給では少数の品種栽培(モノカルチャー)で化石燃料資源を大量利用(7~8割)し環境に負荷をかけながら食料供給の3割を担う」sustainablebrands.jp/sp/article/sbj…

2020-08-11 19:10:49
shinshinohara @ShinShinohara

「食糧」と「食品」は分けて考える必要がある。それを食べないと生命維持が困難になる穀物(コメ、麦など)は食糧。トマトやキャベツなど、確かに重要だし食卓に彩は添えるけれど、大して腹の足しにならず、もしそれだけだとしたら餓死してしまうようなものは「食品」。

2020-08-12 22:23:41
shinshinohara @ShinShinohara

そして大規模生産法人は、「食品」ばかり作る。そちらの方が儲かるから。なぜ「食品」の方が儲かるのか。皮肉なことに、命にかかわらないから。 逆に、コメや麦といった、命を支えるのに不可欠な「食糧」は、安い。儲からない。なぜ儲からないのか。皮肉なことに、命にかかわるから。

2020-08-12 22:25:15
shinshinohara @ShinShinohara

この不可思議な現象について、経済学の大御所、アダム・スミスが「諸国民の富」で指摘。それは水の値段。水はふだんタダみたいな値段だが、足りないとなると金銀財宝を積み上げてでもコップ一杯の水が欲しくなる。水は極端な価格形成をするが、これはなぜだろう?それは「命にかかわる」からだ。

2020-08-12 22:27:09
shinshinohara @ShinShinohara

少しでも水が足りないと死んでしまうかもしれない。だから水は余分に確保しようとする。しかし余分があるということは、市場経済に照らすと「在庫がだぶついている」ということ。在庫があれば市場価格は低迷する。命にかかわるから余分に確保し、余分に確保するからタダみたいな値段に低迷する。

2020-08-12 22:28:19
shinshinohara @ShinShinohara

しかし足りないとなると、百万円払ってでもわずかな水を手に入れようとする。命にかかわるものは、市場経済に乗せると、ふだんはタダみたいな値段となり、足りないとなると非常識なまでに高騰する。命にかかわる商品は、市場経済に乗せると極端な価格形成となる。

2020-08-12 22:29:44
shinshinohara @ShinShinohara

水と同じことが、コメ麦などの基礎食糧にも起きる。それが足りなければ餓死者が出るかもしれない。だからどこの国も余分に確保しようとする。すると在庫が余っているとみなされ、市場価格は低迷する。こうして、コメのような基礎食糧は、価格がどうしても安く低迷しがちとなる。

2020-08-12 22:30:58
shinshinohara @ShinShinohara

他方、トマトやキャベツなどの野菜は、あればうれしいけれど、ないならないで命にかかわらない。こうした商品は、市場がだぶついているな、と思ったら出荷を控えることもできる。日持ちしないからそのうち腐る。「在庫がだぶついている」ことにならない。市況が回復したら出荷すればよい。

2020-08-12 22:32:16
shinshinohara @ShinShinohara

命にかかわらないものは、出荷しなくてもあまりやかましくは言われないし、生鮮野菜は貯蔵が効かないから、在庫がだぶつかない。結果、市場経済に乗せても、それなりの価格で売ることができる。コメは、同じカロリーを取ろうと思ったら、トマトの100分の1の価格。命にかかわるものは価格が低迷。

2020-08-12 22:35:13
shinshinohara @ShinShinohara

大規模生産法人がコメなどの「食糧」を作らずに野菜などの「食品」ばかり作るのはそのため。コメを作っても儲からない。「食品」ならそれなりの価格で売れる。だから「食糧」は手掛けない。日本の農業が大規模化に進めば、「食糧」を作らない国になる、ということも意味する。

2020-08-12 22:36:59
shinshinohara @ShinShinohara

それはそれでいいじゃないか、という意見もある。日本は高く売れる「食品」を作って売り、「食糧」はアメリカなどから安く買えば、と。 視点をアメリカに転じてみる。アメリカは西部劇の時代、1農家は12人分の余剰食糧を作れるに過ぎなかった。それでもおじいちゃんおばあちゃん含め、3世代を養えた。

2020-08-12 22:39:24
shinshinohara @ShinShinohara

現代のアメリカの平均的農家は、1農家で129人分の余剰食糧を作る。生産性は10倍以上。ところが4人家族も満足に養えない。奥さんには働きに出てもらい、農家である自分は政府から補助金を得てようやく4人を養えるに過ぎない。生産性が10倍になったのに養える家族が減ったのはなぜ?

2020-08-12 22:40:50
shinshinohara @ShinShinohara

それは、皮肉なことに、生産性が向上したからだ。「怒りの葡萄」という小説が出た頃、アメリカでは農業の機械化、そして化学肥料の登場が起きた。するとトウモロコシの生産は、1エーカー当たり500kgから5000kgへと、10倍に跳ね上がった。生産性が10倍向上したわけだ。その結果、農家はどうなったか。

2020-08-12 22:42:21
shinshinohara @ShinShinohara

機械化、化学肥料の利用を進めた大規模農家の登場で、トウモロコシが大量生産されるようになり、トウモロコシ価格は暴落した。小規模農家は、トウモロコシを1袋出荷すればそれなりの現金が手に入ったのに、大規模農家が大量にトウモロコシを生産するものだから価格が下落、小規模農家は生活困難に。

2020-08-12 22:43:47
shinshinohara @ShinShinohara

自分も大規模化して生き残ろう、とする農家が現れると、さらに大量のトウモロコシが市場にあふれだし、さらに価格を下落させた。生産性が向上した結果、4人家族さえ満足に養えなくなる、という皮肉な結果に陥った。生産性の向上が、農家を貧しくしたわけだ。

2020-08-12 22:45:03
shinshinohara @ShinShinohara

問題はアメリカだけにとどまらない。アメリカは、大量にだぶついた食糧を海外に輸出するようになった。すると、アフリカの貧農でさえ価格で太刀打ちできないほど安い。このため、米麦キャッサバのような基礎食糧を作っていてはアフリカの農家は生活できなくなった。

2020-08-12 22:46:36
shinshinohara @ShinShinohara

やむなく、欧米人が経営するコーヒー園やカカオ園などのプランテーションで、賃仕事で雇われることに。それで、アメリカから輸入する小麦などの食糧を買う、という生活に。しかしコーヒーなどの商品作物の価格が下落すると、世界一安かったはずの小麦さえ十分に買えなくなり、飢餓が発生。

2020-08-12 22:48:11
shinshinohara @ShinShinohara

アフリカの飢餓は、食糧を生産できないから発生したのではない。アフリカで食糧を生産しても生活が立ち行かないほど安い食糧が、アメリカから流れ込んできたから、自国で食糧を作らなくなり、商品作物に流れ、結果、商品作物が下落すると食糧が決定的に不足、飢餓が発生した。

2020-08-12 22:49:48
shinshinohara @ShinShinohara

生産性が向上し、安く大量の食糧が生産されると、飢餓が発生する。この皮肉な経済現象は、実に奇妙なのだが、頭に入れておいた方がよいと思う。 これと同じことが歴史上の事件で起きたことがある。中学高校の歴史の教科書にも掲載されている、セポイの反乱だ。

2020-08-12 22:51:04
shinshinohara @ShinShinohara

当時、イギリスは世界に先駆けて産業革命に成功し、大量の綿製品を製造できるようになった。生産性が劇的に向上した結果、綿製品の市場がだぶつき、世界一安く綿製品を供給できるようになった。そして狙われたのが、インド市場。世界のどこよりも安い綿製品がインドに流れ込んだ。

2020-08-12 22:52:53
shinshinohara @ShinShinohara

すると、手作業で綿製品を生産していたインドの繊維産業が崩壊。農家が重要な現金収入減としていた繊維産業が崩壊したために、インド経済が大混乱に。そこに東インド会社が「君たちは経済が分かっていないからこんなことになるのだ」と親切面して経済政策の重要ポストについた。

2020-08-12 22:54:24
shinshinohara @ShinShinohara

そして、インドを綿の原産国に仕上げた。イギリスはインドから安く綿を買い叩き、世界一安い綿製品をインドに輸出することでインドの繊維産業を破壊した。生産性の向上は、他国の経済を破壊し、奴隷的な立場に追いやる恐れがある。

2020-08-12 22:55:42