Twitter小説「オブジェ」

この小説のタイトルは、「オブジェ」です。1話完結で、140文字以内で書いてます。前後の話のつながりはありません。目指せ30話! ミヒャエル・エンデが好きなので、真似して書いています。
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デュランダール(Durandal) @Duliger

小説 ここに1体の人形がある。一見恐ろしい面構えをしているが、様々な災厄から家族を守ってきた。今その役目を終え、炎に投じられたところだ。立ち昇った煙が、新しい命が宿った母親の膨らんだ腹に吸い込まれていくように見えた。やがて生まれた赤子は、少し厳つい顔をしていた。 #twnovel

2010-03-22 22:56:33
デュランダール(Durandal) @Duliger

小説 炎のような形をした雲が夕焼けの空を泳いでいく。見渡す限り広がる海は黄金色に煌いている。やがて漁師は太陽が昇っている事に気付く。漁師は恐ろしくなり、急いでボートを走らせるが、そもそもどこから来たのかがわからない。太陽はどんどん昇っていく。 #twnovel

2010-03-25 22:29:48
デュランダール(Durandal) @Duliger

小説 浜辺にボートが打ち捨てられていた。子供達が楽しそうに砂の城を築いている。あたりは暗くなり、子供達はそれぞれの家に帰る。砂の城は、波が押し寄せようと、風が吹こうと崩れることはなかった。城の窓から光が見える。人影も見える。パーティーが始まったのだ。 #twnovel

2010-04-18 12:29:28
デュランダール(Durandal) @Duliger

舞踏会が終わり静まり返った古城の薄暗い廊下を、女性が壁伝いに歩いている。ドアが無数にある廊下は薄闇の向こうまで続いていてる。午前3時に私の部屋を尋ねなさい、と男は言った。一体どこにあるのだろう? まもなく午前3時。ドアから光が指している。ここだ。 #小説 #オブジェ

2011-07-23 18:21:46
デュランダール(Durandal) @Duliger

夕焼けの中、葬儀が執り行われる。棺の中に天使が横たわっており、傍らには少し厳つい顔の人形がある。天使は大理石のようで、死んでいるのかは見た目ではわからない。あるいは生きているのかもしれない。棺は土葬され、夜になる。次の日、埋葬したあとには、草が芽吹いていた。 #小説 #オブジェ

2011-08-22 19:50:46
デュランダール(Durandal) @Duliger

これは塔である、と同時に木でもある。成長する度に部屋が増えていき、家具や調度品が生まれる。内部には螺旋階段があり、伸びた枝葉が窓から見える。様々な果実がなる地上の楽園だ。だが、噂を聞きつけた人々が押し寄せ諍いが起こり、塔は崩壊した。今はその跡が残るのみである。 #小説 #オブジェ

2011-09-05 20:59:47
デュランダール(Durandal) @Duliger

スクランブル交差点でサラリーマンが信号待ちをしている。辺りは静まり返り、動くものはない。覚えている限り信号は赤だ。故障しているんだ、と男は思う。しかし無視する訳にはいかない。ここは取引先の近くで、社員が見ているかもしれない。そうして男は、全てを忘れて、待った。 #小説 #オブジェ

2011-09-20 16:41:44
デュランダール(Durandal) @Duliger

バスがトンネルの中を走っていた。乗客は女一人のみだ。スクランブル交差点を過ぎてから、もうずいぶん長く乗っている。女は腕時計を見るが、針が止まっていた。バスは暗く静まり返り、ともすると、動いているのか止まっているのかさえわからない。運転席を見るが、無人だった。 #小説 #オブジェ

2011-12-10 11:51:26
デュランダール(Durandal) @Duliger

心臓の止まった男が、どこでもない部屋にいる。部屋には腕時計、壁時計、無数の時計があり、それぞれ違う時間を指している。間違った物を選べば、その存在は消えてしまうだろう。男は、これだ、と思う物を手に取り、目をつぶった。心臓が力強く脈打ち始める。時が動き出したのだ。 #小説 #オブジェ

2012-01-13 17:51:43
デュランダール(Durandal) @Duliger

猟師の前に、今にも止まりそうな宇宙の心臓がある。もう世界にはこれしか残っていない。「終わらせなければ、始めることはできない」、そう聞いていた。猟師は銃を構えそれを撃ちぬくが、何も起こらない。彼は取り乱すが、あることに気づき、銃で自分を撃ちぬく。世界は爆発する。 #小説 #オブジェ

2012-01-19 15:28:55
デュランダール(Durandal) @Duliger

「そうです、時間爆弾です。音楽にセットされていたようです。男性一人が巻き添えになり、事件発生から前後約2年間消失しております。面識のあるものは、過去2年遡ると思い出せるようなので、ほぼ間違いないです。したがって、被害者は少なくともあと2年は存在しないでしょう」 #小説 #オブジェ

2012-02-02 17:31:59
デュランダール(Durandal) @Duliger

砂漠が果てしなく広がっている。男はラジオを見つけ、指で触れると崩れ去ってしまったが、音楽は鳴り続けている。いつでも初めて聞く音楽だ。男は勇気を貰い、どこへ行けばいいのかわからないが歩き出す。すると今度はボートを見つけた。男はボートに座り眠りにつく。永い眠りに。 #小説 #オブジェ

2012-03-18 13:55:40
デュランダール(Durandal) @Duliger

ここは混みあったお祭り会場だ。射的の出店では、猟師が銃を構え、うさぎを狙っている。女は猟師に「これはなんのお祭りなんでしょう?」と尋ねる。猟師は「私も通りかかっただけでして」と答える。銃声が響き渡り、うさぎは動かなくなる。「どこへ向かうんですか?」「バス停に」 #小説 #オブジェ

2012-04-13 19:06:57
デュランダール(Durandal) @Duliger

ビルの廃墟でうさぎがフルーツの盛り合わせを食べている。一歩外に踏み出せば無人の街を眺めることが出来るだろう。満腹になったうさぎは扇風機の風にあたりながら、ベッドで横になった。朝になり、目覚まし時計が鳴る。うさぎは毛づくろいを終え、フルーツの盛り合わせを食べる。 #小説 #オブジェ

2012-04-28 20:25:47
デュランダール(Durandal) @Duliger

このフルーツは女にとって、いわば心の排泄物だ。彼女が目覚めた時に、内容は思い出せないが、それとはっきり悪夢だとわかる時に、ベッドに転がっている。彼女は決してそれを食べない。ゴミ袋に入ったそれをつついたカラスは、石のようになり、もはやカラスではなくなっていた。 #小説 #オブジェ

2012-05-17 20:18:17
デュランダール(Durandal) @Duliger

とてつもなく大きな部屋に、様々な箱が置いてある。この箱には私にとって、いわば心の排泄物が入っています、決して開けないで下さい、と言われていた。それとも早く開けて下さい、だったろうか? その箱はどんな色、どんな形だったろうか? そもそも、誰に言われたのだろう? #小説 #オブジェ

2012-06-13 20:16:29
デュランダール(Durandal) @Duliger

冷凍庫の中は吹雪いている。かまくらがあり、役人が暖を取っている。遠くには雪山が見える。彼は役所の指示でこの箱を渡さねばならない。確認のために箱を開けるが、中は空だった。蓋を閉めたその時、突然冷蔵庫の扉が開き、天使が箱をつまみ上げた。役人の口元に笑みが浮かんだ。 #小説 #オブジェ

2012-12-07 21:31:33
デュランダール(Durandal) @Duliger

ドーナツのような輪を持つ天使が、群衆の前で水をワインに変えた。石を金に変えた。カエルをヘビに、ワシをカエルに、ヘビを扇風機に変えた。その度に天使の輪が光り、あたりは真昼のようになる。群衆は寝ているか、隣人とおしゃべりをしていた。最後に天使はその輪を食べた。 #小説 #オブジェ

2013-04-25 17:45:47
デュランダール(Durandal) @Duliger

カエルは元人間だ。人間に戻るには龍を倒すしかない。しかし龍を倒すには、人間でなければならないというわけだ。カエルは思案の末、人間から財宝を奪い、龍のねぐらに置いた。その情報が広がり、首尾よく龍は倒された。そばには、財宝にめもくれず、微笑んでいる男がいたという。 #小説 #オブジェ

2013-08-28 19:24:02
デュランダール(Durandal) @Duliger

「仕事をしませんか? 報酬は一生分の時間です。作業はルールを知らなければ始める事は出来ない、始めなければルールを知ることは出来ない。受けるならルールを教えましょう」何故か拒否権がないような気がして、ルールを聞く。「その作業とは、人生をもう一度繰り返すことです」 #小説 #オブジェ

2013-09-25 18:26:49
デュランダール(Durandal) @Duliger

疲れてしまった。ゲームをしているというゲームに。もう何匹スライムや魔王を倒しただろう。何時間その為の仕事をしただろう。このゲームのプレイヤーにお願いがある。ゲームをやめろとは言わない、だが他のゲームをやってくれ! それとも登場人物がゲームをプレイしているのか? #小説 #オブジェ

2013-10-02 19:23:50
デュランダール(Durandal) @Duliger

医者が夢中で携帯ゲームをやっている。そこへ患者が運ばれてきた。左足の膝から下が切断され、先は包帯でグルグル巻にされている。「先生!」「うるさい! 今忙しいんだ!」患者も同じゲームをやっている。「いいところへ来た、ちょっと手伝ってくれ!」「任せてください」 #小説 #オブジェ

2013-10-23 18:47:25
デュランダール(Durandal) @Duliger

左足のない男が、雪山を登っている。いったい何を探しているのか、まさにそれを探しに。これは最後の登山だ。彼はありとあらゆる山を登ってきた。だがもはや探す理由などないと認めざるをえない。そう思ったその時、頂上で冷蔵庫を見つけた。彼は中に入り、ドアを閉めた。 #小説 #オブジェ

2013-11-13 18:28:47
デュランダール(Durandal) @Duliger

昔々、おじいさんとおばあさんがいました。桃から生まれた赤ん坊は「昴」と名付けられ、すくすくと成長しました。昴は鬼退治に行かねばなりません。旅の途中、犬猿雉を見かけました。島へ着きましたが、鬼は強く、命からがら逃げ出しました。そして待っていたのは両親の死でした。 #小説 #オブジェ

2013-11-28 19:20:12
デュランダール(Durandal) @Duliger

犬猿雉は、ボートで冒険にでようと思う。水や食料を載せて出発する。嵐を横切り、荒波に揉まれるたびに3匹の絆は強くなっていった。やがてある日、見知らぬ土地に辿り着く。そこには法外な大きさのフルーツがなっており、それぞれ今まで食べたことのないような味がした。 #小説 #オブジェ

2014-06-23 21:16:53