二人称性の突き詰めとしてのグノーシス

とりあえずまとめておく
4
--- @vanaheimr

÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷÷

2010-03-11 01:25:49
にるば @nirvanaheim

人称とキリスト教の話の蛇足。先日、一人称の範囲での必然性がないのに、人間のために自ら犠牲を引き受けるというのがイエスの受難説話の骨子だと言ったけど、これを突き詰めるとキリスト教グノーシスになる。どういう話かと言うと、まず、「本当に必然性はないの?」と問うところから話は始まる。

2010-04-23 22:55:08
にるば @nirvanaheim

「世の中に苦しみってあるし、色々悲惨なことあるよね。俺らとこの世界を作ったのが神なんでしょ?俺らもダメかもしれないけどさ、それを作った神に責任あるんじゃないの?」という話である。まあこの話自体はおそらく現代人にも違和感はないだろう。つうかこういう言説はさほど珍しくはない。

2010-04-23 23:00:34
にるば @nirvanaheim

差し当たり、「人間には自由意志が与えられていて、神はそれを尊重しているから」というのがキリスト教のメインストリームの回答ということになる(予定説が定立されたカルヴァン派とかではそれは通用しないのだが、そこはさておく——カルヴァン派が近代の基盤の1つだったとは言っておいてもいい)。

2010-04-23 23:06:45
にるば @nirvanaheim

まあそんな自由意志説を多数派の人々は言うわけだが、やはり「全能で完全なんじゃなかったのかよ、なんで悪とかあるんだよ!」と叫ぶ人々に対して力を持つかは微妙なところだろう——この世界を創造した神が、この世界の不完全さに責任を免れないならば、その神は無能で、不完全なのではないだろうか?

2010-04-23 23:13:38
にるば @nirvanaheim

キリスト教グノーシスとは、このように、『創世記』に記される世界の造物主、ユダヤ教の神ヤハウェを無能で不完全な存在と名指すことに始まる。しかし造物主が不完全なのはいいとして、世にある物事すべてが悪一色なのか?そうでもないのではないか。良きものは確かにあるのではないか。と、こう続く。

2010-04-23 23:21:20
にるば @nirvanaheim

(まあそうは続かない場合もあるのだが、流石にグノーシスと言われるものの中でも大体はちゃんとそう続ける)

2010-04-23 23:22:36
にるば @nirvanaheim

「良きものがあるのだから、良きものの根源となる第一原因、良きものを生んだ神もまたある」と、そうなるわけだ。本当に良き神、完全な神。もちろんこちらの神は、この不完全な世界に責任はないのだが、その神でないのに、その神を真似ようとして、不完全な創造をしたのが不完全なるあの造物主となる。

2010-04-23 23:35:32
にるば @nirvanaheim

では、あのイエス・キリストとは何だったのか。「良き報せ」を人類に伝え、人類の罪を贖ったという、ナザレのイエスは——話はここでまた、人称と責任の話に戻ってくる。

2010-04-23 23:41:49
にるば @nirvanaheim

つまり、この真の神が「自分とは関係ない世界だけれど、その世界で苦しむ存在を憐れんで」送ってきたのがあのイエスであり、彼は自分と関係ない不完全さの責任を取って苦しみ、そして善の世界への道を示したのがイエスだと、そういうお話になるのである。

2010-04-23 23:44:33
にるば @nirvanaheim

なお以上のような話でも、実はまだ「造物主が何らかの形で真の神に由来するなら、必然性から完全に分離されてはいないんじゃないですか」っていう話があって、一番極端な立場になると、その「真の神」は本当にこの世界や造物主と何の関係もなくて、人間もその神に由来するところ皆無という感じになる。

2010-04-23 23:47:35
にるば @nirvanaheim

大体の場合は、真の神がいる真世界の欠片が断片的にこの世界に混ざり合って、人間の中の善性はそれに由来していて、この善を大切にして高めていこうって話になるんですが。本当に真の神に関係ないという立場もあります。その場合、傍から見て「これはひどい」と送り込まれたのがイエスになるわけです。

2010-04-23 23:49:37
にるば @nirvanaheim

というわけで、先日「イエスが偉大とされてきた文脈も、まさにこの一人称と二人称の問題に関わるし、そこに「キリスト教」という枠組みを成す根幹の1つがある」と言いましたが、この二人称性をどこまで突き詰めるか、という根幹を巡る立場の相違がキリスト教会の初期形成期を彩る基調だったのでした。

2010-04-23 23:55:27