シー・ノー・イーヴル・ニンジャ #2
ナムアミダブツ……おお……ナムアミダブツ……なんたる陰惨光景か!今ガイオン第二階層の路地裏で行われているデスドレインの悪魔的所業、果たして読者の皆さんにどの程度伝えたものか?ナムアミダブツ……!
2011-07-25 19:52:52「へへへへ!へへヘへへ!」半壊のボンボリが、激しく前後するデスドレインの影法師を映し出す。犠牲者にはもはや抵抗する気力も無い。その足元に転がるのは、己の喉元を掻き毟るようにして息絶えた男の、無残な窒息死体である。おそらくは今まさに蹂躙されている犠牲者の恋人あるいは夫……!
2011-07-25 19:56:07その影法師に向かい、着実な足取りで接近する後ろ姿あり。二人である。二人ともニンジャ装束姿である。闇からボンボリの光の中へ踏み込んだ彼らのブレーサーが光を跳ね返し、菱形正方形のエンブレム「罪罰」を露わにする。「……」デスドレインは動きを止めた。そして来訪者へ顔を向ける。
2011-07-25 20:01:44「取り込み中だぜ、もう少し待てよ」「ゲスめ」二者の片方、緑のニンジャが吐き捨てる。それをもう一人の黄緑のニンジャが制すると、一歩進み出た。「ドーモ、はじめまして。ザイバツ・シャドーギルドのジャイアントマンティスです。こちらはアプレンティス(弟子)のジェイドソード」
2011-07-25 20:17:22「……フー」デスドレインは身を離し、二者に向き直ると、ふてぶてしくオジギを返した。「ドーモ。デスドレインです」闇の中、どさりと倒れる音。「ザイバツ。なんだそりゃ。お前らニンジャだな?」「その通り」ジャイアントマンティスはデスドレインを睨んだ。デスドレインはニヤニヤと笑う。
2011-07-25 20:22:57「何しに来たァ?おこぼれはねぇぜ。もう死んでるぜ、きっと。まあ、俺と同じ趣味ってンなら……」「ヌウウ!」ジェイドソードが飛び出そうとするのをジャイアントマンティスが再度、制する。デスドレインはアクビをした。「それともアレか?正義の味方?このへんの自警団?ニンジャも大変だな?」
2011-07-25 20:26:35「オヌシにはザイバツ・シャドーギルドの審問を受けてもらう」ジャイアントマンティスが無感情に告げた。「ニンジャだからだ」「ア?」「拒否権は無い。ここで死ぬか、我らに命を預けるか、二つに一つ」「闇の秩序ってやつか!」デスドレインは殊勝に察した。「大変だな、ニンジャってのもよ」
2011-07-25 20:35:00「!」ジャイアントマンティスは素早くカラテで警戒した。ジェイドソードもやや慌ててニンジャソードを引き抜き、構えた。デスドレインの足元に黒い沸騰するヘドロ溜まりが拡がっている。「実際大変だ!へへへへ!」「貴様……」ジャイアントマンティスの両手ブレーサーからカマ状武器が飛び出す!
2011-07-25 20:44:36「イヤーッ!」先手を打って仕掛けたのはジェイドソードだ。斜めにジャンプしながら、肘先ほどの長さの剣をデスドレインめがけ投げつける。激しく回転し、円盤めいた残像を形作りながら飛行する剣!「へへへへ!まだ何もやってネェのになァ!」デスドレインが笑う!「正当防衛だな!イヤーッ!」
2011-07-25 20:48:02デスドレインは電撃的速度でブリッジした!その上をむなしく飛んでゆく回転剣!同時にデスドレインの足先の地面から間欠泉じみた勢いで黒い粘液が爆ぜのぼり、ジャンプして「簡易交換」の看板を蹴ろうとしていた空中のジェイドソードの足に絡みついた!「グワーッ!?」
2011-07-25 20:54:48「いかん!」ジャイアントマンティスがカバーに飛び出す。だがこの事態は彼のウカツであったと言えよう。ジェイドソードの独断攻撃にあわせて戦術を素早く変更し、自らも即座にデスドレインを攻撃するべきであったのだ。この一瞬の遅れがニンジャの生死をわけてしまうのだ!
2011-07-25 21:02:58「イヤーッ!」ジェイドソードに絡みつく暗黒物質を、ジャイアントマンティスのマンティス・カマが切り裂いて切断!その瞬間、ジャイアントマンティス自身の腰から下は、足元から湧き上がる暗黒物質にドップリと飲まれてしまった!「それは違う違う違う!へへへへ!」デスドレインがあざ笑う!
2011-07-25 21:20:46「グワーッ!?」「ニンジャはこんな時どうやって切り抜けるんだ?新参者に教えてくれよ!」「ジャイアントマンティス=サン!?イヤーッ!」ジェイドソードは「簡易交換」の看板を蹴った。三角飛びからの飛び蹴りがデスドレインを襲う!「ヘヘヘヘ!うまくねえな!イヤーッ!」「グワーッ!?」
2011-07-26 01:17:00飛び蹴りを止めたのは当然、デスドレインの暗黒物質だ!ジェイドソードは空中で右脚を根元まで呑み込まれ、がっちりと固定されてしまった。「どうやら俺はお前らより強い!実際強い!」「グワーッ!?」粘着く暗黒物質は二人のニンジャを取り込み、さながらラオコーンの古代彫刻めいたオブジェと化す!
2011-07-26 01:22:32「こいつを試してみたかった」デスドレインは懐から小さな箱を取り出した。そこから出てきたのはマッチ棒だ!「ヤメロー!ヤメロー!」ジェイドソードが叫ぶ。しかし武器も失い宙吊りになった彼に出来るのは、空中に虚しくパンチする事だけだ!ジャイアントマンティスは?ナムサン!既に意識が無い!
2011-07-26 01:25:56「ヤメロー!ヤメロー!」「ヘヘヘヘヘヘ!最高だな!お前のその喚き声が最高だ!」デスドレインはメンポにマッチをこすりつけた。リンの炎が燃えあがる。死神めいた炎が!「ヤメロー!ヤメロー!」「実際燃えるのかね?俺のこいつは?ホラ、まだわからんぜ?俺の気がかわるかもしれねェ。懇願しろよ」
2011-07-26 01:30:44「ヤメロー!ヤメロー!」「ウーン」デスドレインは目の前でマッチを左右に振った。「……やっぱりヤメ。面倒になった」「……?」ジェイドソードがデスドレインを見る。デスドレインが笑う。「バカだな!こうやって無駄話するのが面倒だッてんだよ!話、ヤメ!」マッチを投げつける!「アイエエエ!」
2011-07-26 01:34:35暗黒物質は火を受けるとまさにタールめいて燃え上がった!「グワーッ!グワーッ!グワアアアー!」「アバッ!?アババババババーッ!」不浄な火と煙につつまれ、二人のニンジャが断末魔の悲鳴をあげる!炎によって路地裏がジゴクめいて照らし出される!デスドレインが哄笑する!「ヘヘヘヘヘヘヘ!」
2011-07-26 01:37:28詐欺罪のタケオ兄弟、違法ドラッグ精製のベツリキ、ケンカで一般人を誤って撲殺したスモトリのジャイゴ、そしてイチロー・モリタ。最後に、寡黙なゼンダ。これが、ザシキ・ダンジョンの部屋号「リンドウ」に収監されている六人である。
2011-07-27 21:18:37ジャイゴのイビキとベツリキの歯ぎしりは強烈であったが、誰もが死んだように眠っていた。ただひとりイチロー・モリタ、すなわちニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジを除いて。彼はフートンに横になった状態で天井を凝視し、ぴくりとも動かずに、沈思黙考していたのだ。
2011-07-27 21:26:10「起床!キアイ!」合成音声が叱責した。ガンガンガン、というアラーム音が鳴り、ボンボリが点灯。全員の硬質フートンがL字に折れ曲がって強制的に起床させた。「アイエッ!」「アイエ!」「グワーッ!?」口々に悲鳴を上げ、強制起床させられる面々。フジキドだけは一瞬早く自ら起き上がっている。
2011-07-27 21:27:27