リビアにおける多国籍軍の作戦の行き詰まり状況を再度批判する

シリアで虐殺が起き、これはリビアでは国際的な干渉を正当化する事態であったにも係らず、国際社会の反応は鈍い。その理由は当然ながらリビアでの混乱を未だ収拾できない現実があるからだ。この話は人道的干渉のあり方に重大な疑問を投げかけている。多国籍軍(米軍)のリビアでの軍事行動が中途半端なことは以前も批判したが(http://bit.ly/g8FQmA)、再度、ここで批判する。
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fj197099 @fj197099

シリア:介入ためらう各国 非難や制裁措置にとどまる(http://t.co/ROWoC6y)…シリアで市民の虐殺があった。リビアと同じ状況なのに各国がシリアへの介入に無関心なのはリビアの混乱を収拾できない現実があるからだ。これは将来の人道的干渉のあり方に重大な疑問を投げかける。

2011-08-03 13:13:40
fj197099 @fj197099

リビアにおいては介入の動機それ自体は正しかった。市民の虐殺を阻止しカダフィ政権は退陣しなければならないとする動機は崇高なものでありかつまた国際的に正統化可能なものであった。しかし愚かだったのは各国が最初から最低限の軍事力投入しかしなかったことである。とりわけ米英仏の責任は大きい。

2011-08-03 13:15:27
fj197099 @fj197099

米は拡大する財政赤字の削減に必死で、当初から地理的な「当事者」たる英仏より積極性が低かった。序盤こそ米アフリカ軍が指揮権を行使し大規模な空爆を実行したものの、わずか10日程度のうちに指揮権はNATOに移行され米国は直接の軍事的行為から手を引き他国の支援に回るようになった。

2011-08-03 13:17:19
fj197099 @fj197099

米はその後に無人機の投入を行っているが関与は最小限でとても満足できるものではなかった。米は英仏はじめ欧州諸国に対応を丸投げしただ。しかし英仏が米の十分な関与なく紛争を収拾できる見通しなど初めからなかった。リビア作戦において米はその国際的責務を放棄したと言われても仕方がない。

2011-08-03 13:20:44
fj197099 @fj197099

英も極めて愚かであった。開戦したことが愚かとは言わない。開戦できる十分な体制を事前に自ら掘り崩したことが愚かであった。すなわち英は昨年10月に「戦略安保防衛見直し」なる大規模な防衛見直しを行い、そこでは財政再建が最優先されて戦略観の全くない無分別な防衛力の削減が行われたのだ。

2011-08-03 13:22:52
fj197099 @fj197099

その無分別な防衛力の削減を行った同じキャメロン政権が今回のリビア作戦への着手には欧州で最も乗り気だったのである。これが愚かな点であった。英国には人道的干渉の伝統がありそれは党派を問わない。この伝統は崇高なものだ。しかし干渉行為に備えた軍事力の蓄積への配慮が全くなかったのである。

2011-08-03 13:24:36
fj197099 @fj197099

英は国際関係における理想主義は両手を血に濡らした人物しか達成することができないという当然の真理を理解できていなかった。理想を達成するにはしばしば物理的な力の行使が必要になりそれは敵を殺害する行為も含まれる。本気の戦争準備もなく理想が達成できると思い込んだのが英の愚かさである。

2011-08-03 13:27:10
fj197099 @fj197099

仏は三国の中では一番マシな国である。仏もリビア作戦に積極的だがそれは必ずしも人道的干渉という理想主義に拠るものばかりとは言えない。まず地理的な近さがある。リビアが混乱すれば地中海の対岸の仏は不法移民の増大などの直接の被害を受ける。また仏にはリビアの資源開発等の思惑もあるのだろう。

2011-08-03 13:28:47
fj197099 @fj197099

動機が理想主義的なものばかりでなく個別の利益に基づく「不純な」ものであったことが仏のリビア関与を相対的に真剣なものにしていることは皮肉と言わざるを得ない。仏は米ほど消極姿勢を採らず、英ほど軍事力削減をしながら積極姿勢を採る愚かさを見せている訳でもない。だが仏は例外的存在だ。

2011-08-03 13:31:24
fj197099 @fj197099

他のNATO諸国に至ってはミゼラブルな限りだ。幾つかの「やる気のある」国はごく小規模の部隊を作戦に参加させているが、地上攻撃までやるつもりのある国はほとんど存在しない。大多数の国は国連安保理決議を「遵守」し、飛行禁止区域の監視にしか関与しようとしない。それでは事態は改善しない。

2011-08-03 13:33:17
fj197099 @fj197099

NATOを中心とする多国籍軍のリビア作戦の一番の問題点はこの「国連安保理決議遵守の姿勢」にある。軍事的に言えば事態の解決にはカダフィの殺害か追放が必要なことは明らかだ。また地上軍を投入せずとも反体制派に十分な軍事支援を行う必要がある。だがそのどちらも決議は禁じているのだ。

2011-08-03 13:35:14
fj197099 @fj197099

ここがリビア作戦において極め付きの愚かさを示している点だ。人道的干渉行為が合法性に振り舞わされすぎているのである。国連安保理決議がその価値以上に重視されている。実際には国連安保理決議とは大国間の妥協に過ぎない。中ロが何を考えたかうっかり人道的干渉に同意したのが決議の内容だ。

2011-08-03 13:36:59
fj197099 @fj197099

安保理決議1973号は市民を保護するために飛行禁止区域を設定することを認めているが、外国の「占領軍」=地上軍の投入は認めず、また反体制派への軍事支援も認めていない(武器禁輸)。こんな決議は軍事的にはナンセンスなものであって、作戦が永続する行き詰まりに陥るだけのことは明らかである。

2011-08-03 13:39:31
fj197099 @fj197099

リビアで虐殺等の人道的悲劇を防ぎたいのなら当たり前のことだがカダフィ体制の転覆は最低限必要なことであり反体制派への十全な軍事支援も当然必要になる話であった。リビア作戦を完遂したいのなら何時までも国連安保理決議に拘ってはいけなかった。だが実際には各国はその通りの行動はできていない。

2011-08-03 13:42:09
fj197099 @fj197099

理由は簡単で①国連安保理決議に基づき開戦した以上、それを越える行為を国民に説明できない、②国連安保理決議の内容それ自体がリビアへの関与を最小化する理由に使われている、からである。大多数のNATO諸国にとってリビア作戦は「やりたくないことをやらされている」状況に過ぎないのだ。

2011-08-03 13:44:27
fj197099 @fj197099

だがそれなら事態が永続化する中途半端な干渉はせずミスラタの虐殺を甘受した方が良かったのではないか。人道的悲劇を見過ごした卑劣漢として歴史に名を残す方がNATO諸国の為だったのではないか。人道的悲劇が安保理決議という「法」によって守れると勘違いしたことが同盟のそもそもの失敗である。

2011-08-03 13:47:31
fj197099 @fj197099

安保理決議の遵守とは結局、国際社会では「中ロに気を使う」という意味以上のものを持たない。人道的干渉は合法性の問題というよりその実質的正統性の問題である。この事案では合法性より正統性を優先するべきであった。つまりどこかで決議は反故にされるべきであった。拘束され続けるべきでなかった。

2011-08-03 13:50:09
fj197099 @fj197099

カダフィは正統な標的として殺害の対象とされるべきであったし、反体制派には潤沢な軍事支援が提供されるべきであった。カダフィ政権の転覆は当然視されるべきであり、それが人道的干渉の根本的目的とされるべきであった。政策目的は軍事行動と連携した形で位置づけられねばならなかった。

2011-08-03 13:51:40
fj197099 @fj197099

国際社会の理想とは、特にそれが軍事的次元に係るものである場合には、両手を血で濡らす事を躊躇わない人物にしか達成できない場合が多い。敵を容赦なく排除/殺害し徹底的な破壊を実行できる勢力こそが真に理想的な国際社会の礎を築けるという逆説がある。リビアではそれが理解されていなかった。

2011-08-03 13:55:10