佐島勤『魔法科高校の劣等生(2)』感想(主にweb版既読者むけ)
[1/11]佐島勤『魔法科高校の劣等生(2)』。魔法や武術絡みの説明の中での「無意識」の扱われ方が面白い……というか、極めてまっとうで素晴らしい。引用すると長くなるのでページ数だけ示すと、二巻でいえばp22,28,31,67,193など。なお。p22の記述はweb版には無い。
2011-08-11 11:29:08[2/11]「達也は身体の何処にも余分な力を入れず------それは緊張や恐怖が無意識のレベルにおいても存在しなかったことを示している」(p22)達也の図抜けた実力と特殊性を共に示す優れた描写になっており、良い追加。他にも「さらりと凄い説明」が目立つ作品。
2011-08-11 11:29:23[3/11]例えば二巻p154「知らなければ罪は無い、という考え方に、達也は同意できない。責任は内面では無く行為に付随するものだと彼は考えている」。風紀委員でもある立場からのこれなので、刑法の行為無価値論と結果無価値論あたりを踏まえた明確な姿勢表明になっている。
2011-08-11 11:29:40[4/11]ここもweb版では無かった記載。また決起した面々が「スリー・ハーブズ」と名乗ることも、それに対して達也が侮蔑を顕わにすることもない。全般的に決して同情などしないものの、彼らなりの感情と思考について理解と受け止め方が書籍版ではかなり変更されている。
2011-08-11 11:30:06[5/11]p135で沙耶香が達也の言葉に触発され<何を責められているか>考える描写の追加にも注目したい。これら決起した面々と彼らへ向ける達也の視線は個人的に変更前のweb版も大いに好きなのだけど、作品として評価するならばその修正の分<書籍版はより上等になった>とは思う。
2011-08-11 11:30:43[6/11]また、これらの変更は<四葉家絡みの伏線をまだ出しすぎないよう調整している>という面もある。例えばp99、達也が深雪に事件の背景を教える場面では「巻き込まれないように。/祭り上げられないように」が削られている。
2011-08-11 11:30:57[7/11]なお「あとがき」であれだけ書いてしまうなら、公式twitterアカウントで触れていたhttp://t.co/mSsG8oL 英題(The irregular at magic highschool)の件にも触れてしまえば良かったのにとも思えはした。
2011-08-11 11:31:11[8/11]端的に言えば、彼(及び彼ら)は「イレギュラー」なのであって、underachieverやdunceやpoor studentなどでは断じて無いということ。書籍版1、2巻はそのことがいたるところで強調された話でもあった。
2011-08-11 11:31:25[9/11]ただ、それは次巻以降(九校戦篇)での提示ががより適切ということだったりするのかな。そちらはイレギュラー「たち」の中ですら規格外である達也が、規則に則り技を魔法科高校の生徒達同士が技を競い合う「九校戦」の中で……
2011-08-11 11:31:41[10/11]規則と機密保持の制限の中で正しくイレギュラーの技を尽くして大活躍し、それを通じて結果的にイレギュラーな諸々を感染させていき<規格外が規格を乗り越え、更には塗り替えていく>流れを示すものだから。
2011-08-11 11:31:48[11/11]なお、その神髄は当然のごとく、司馬兄妹の合作として示される。兄の贈り物を手に妹が舞い踊る時、魔法師達は不可能とされてきた一つの大きな軛から解き放たれる。その伏線は書籍版2巻p136、壬生沙耶香との決裂場面の地の文の説明として付け足されている。ここも優れた変更。
2011-08-11 11:32:22