FumiHawk氏によるロンドン暴動の分析・考察2

前回のロンドン暴動の考察の続きになります。 本編を見る前にまず前回をご覧ください。 前回→ @kyuuiti さんの「FumiHawk氏による『ロンドン暴動』の分析・考察」 http://togetter.com/li/173018
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.@kyuuiti さんの「FumiHawk氏による『ロンドン暴動』の分析・考察」が5000人もチェックしてるんだねっ。はてブしておこう! http://togetter.com/li/173018

2011-08-12 03:16:05
青木文鷹 @FumiHawk

えーと、ロンドン暴動の件の続き、調整がつきましたので投下したいのですが・・・えらく長いけどよろしいでしょうか? みんなコミケ疲れで見てないだろうから良いよね。

2011-08-13 22:20:56
青木文鷹 @FumiHawk

先日ロンドン暴動に関するツイートしたのが結構閲覧されてて、「ツイートしていない(というかまだ出来ない)レポートの最終章があるので需要があるなら公開出来るように相談してみますかね」と言ったらどうやら需要があるみたいなのでTwitter用に抜粋してみます。

2011-08-13 22:24:22
青木文鷹 @FumiHawk

前のツイートでは文字数の問題でなんか細かい点で説明不足でしたし、レポートとしてのキモは最終章の推論なので、この部分がないと片手落ちなのも事実。ただその部分がお仕事の根幹でもあるので、全部無料で流すといろいろ支障もありまして…なので図版等除いて抜粋&表現変更(^^;

2011-08-13 22:24:46
青木文鷹 @FumiHawk

内容としては「先日のロンドン暴動のツイートの続き」です。前提条件として以前のツイートを読んでいる事が必要かと。ここからは推論部分が多くなります。また、英国固有の問題点から少し離れることになりますが、レポート提出先の都合等もありますのでご了承下さい。

2011-08-13 22:25:07
青木文鷹 @FumiHawk

なおリアルの情報収集に基づいた分析と推論ですので、実態とそれほど大きく違わないと思いますが、違っていても謝罪と賠償はいたしかねます(^^; もっと詳しい裏話等は講演等の機会に。 では長いですがスタート。

2011-08-13 22:25:39
青木文鷹 @FumiHawk

[13]ギャングにとっての収入源の多くは大麻やデザイナーズドラッグなど麻薬類や窃盗であるが、キッカケがあったとはいえ何故これほど大胆に「略奪」を実行する事になったか、その原因と背景について。ギャングは伝統的な英国地下社会とは必ずしも同一ではない。

2011-08-13 22:25:57
青木文鷹 @FumiHawk

[14]これまで麻薬類は欧州の地中海側諸国を経由して英国に入るルートが中心だった。当然その仕切りは伝統的英国地下社会だった。近年この流れが変わってきている。これは麻薬類の取り締まりによる部分と、米国の麻薬取り締まりにより市場を失った生産側の市場開拓努力によるもの。

2011-08-13 22:26:22
青木文鷹 @FumiHawk

[15]米国でのコカイン、ヘロインの消費量急減と反比例するように欧州での市場は拡大。もともと比較的大麻等に寛容な風土もあり、これらドラッグ類の消費は伸びていた。また、近年はMDMAを始めとするデザイナーズドラッグ(脱法ドラッグ)の消費も急増し、新ドラッグも大量に開発されている。

2011-08-13 22:26:57
青木文鷹 @FumiHawk

[16]これらの状況はドラッグの流通ルートにも変化を及ぼし、英国への流入経路でアフリカ経由及びメキシコ等南米→カリブ経由のドラッグ流通ルートが急速に台頭してきている。この辺りは国連薬物犯罪事務所が出している『世界薬物報告書』辺りに詳しいのでそちらを参照のこと。

2011-08-13 22:27:07
青木文鷹 @FumiHawk

[17]これらの新ルートは、当然人的コネクションに因って構成させるが、その人的コネクションが他国に潜り込む最も確実な方法が「移民」特に「現地に溶け込めない移民」とのコネクション。母国とのコネクションの影響力は、日本でも諸外国でも皆さんご存じの通り。

2011-08-13 22:27:21
青木文鷹 @FumiHawk

[18]生産国なり流通主要経路の国を母国とする移民コネクションがギャングを通じたドラッグの新流通ルートになっていることは逮捕報道等により明らか。ドラッグの点だけを見ても移民系ギャングが「事実上の国外組織」である事がわかる。伝統的英国地下社会とは別の特性を持つ。

2011-08-13 22:27:55
青木文鷹 @FumiHawk

[19]そんなギャングだが普通にやってれば薬捌いて盗品横流ししてウマーなはず。なのにここで勝負に出た理由として最も蓋然性が高いのは「規制強化や単価下落」「貧富の差の拡大」等が複合し、「金銭的に厳しい環境になってきたから」と推定。ぶっちゃけ「金回りが悪くなった」から。

2011-08-13 22:28:41
青木文鷹 @FumiHawk

[20]サッチャー政権以降、英国の貧富の差は拡大の一途をたどっており、貧富の差を示すと言われているジニ係数は右肩上がり。これ、金持ちと超貧乏人が増えているという訳じゃない。実際に起こっているのは「資産家の一人勝ち」と「中産階級の減少」と「貧困層の増加」。

2011-08-13 22:28:52
青木文鷹 @FumiHawk

[21]欧州経済は極めて厳しい状況にあり、数字以上に実体経済は脆弱。特にここへ来て国際商品相場の急騰で生活は厳しくなっている。また、英国の場合移民層などに対する生活保護はかなり手厚く行われており、このような状況に中産階級以下つまり国民の多くが不満を持っている。

2011-08-13 22:29:10
青木文鷹 @FumiHawk

[22]失業率も高く、生活保護者の中には貰った金でドラッグを買う人も多くいる。しかし、ドラッグはある程度以上の収入が無ければ買えないし、買える人が減ってくればディスカウントすることになり売人や組織の収入は減少する。地下経済も実体経済に連動している。

2011-08-13 22:29:22
青木文鷹 @FumiHawk

[23]そんな中、英国では生活保護の見直しとデザイナーズドラッグに対する「暫定規制」導入が検討されている。前者は読んで字の如く、後者は大量に発生する新ドラッグを抑え込むために、科学的検証が完了する前に危険性が予測される新型薬物に対し暫定的な規制措置をするもの。

2011-08-13 22:29:29
青木文鷹 @FumiHawk

[24]これが導入されるとギャングの収入源はかなり細る。窃盗や略奪の方も、少数の人間に多くの富が集中している状況というのは成果を上げにくい。富裕層は金をかけて充分に防犯する為、失敗するリスクが急上昇する。景気悪化状況もあり、彼らにとってはこちらも手詰まり。

2011-08-13 22:29:47
青木文鷹 @FumiHawk

[25]高い失業率、拡大する収入格差、低迷する景気…これら潜在的な不満が社会に充満している状況で今回の黒人殺害が起こった。初期の抗議デモに対し警察の対応は穏便な物だった。これは英国で発生したこれまでの抗議デモや暴動が大きな略奪等にそれほど結びつかなかったから。

2011-08-13 22:30:14
青木文鷹 @FumiHawk

[26]ギャングとしては新しい収入源を確保するか、新しい収益確保手法を生み出すか、それもダメなら一時的にでも手持ちの資金を増やそうとする。この抗議デモに対する警察の対応を見て、これを好機と判断、大規模な略奪に走ったのであろうと推定している。

2011-08-13 22:30:24
青木文鷹 @FumiHawk

[27]で、先日のツイートの如き行動になるわけだが…ここで少し補足。暴徒を移民貧困層の若者としたのは、先ほどの人的コネクションによりギャングが最も声を掛けやすく、かつ祭りに乗りやすい人達だから。別に人種や移民に対する偏見ではなくて、ネットワーク構造の問題。

2011-08-13 22:30:33
青木文鷹 @FumiHawk

[28]また、ギャングが最初に引きずり込んだのは移民貧困層の若者だが、その後暴動が大きくなってから相乗りした人達については先日のツイートでは割愛している。理由は、社会に不満を持っている人達が暴動見て興奮し、参加するのは何処の世界でも起こりうるから。

2011-08-13 22:30:55
青木文鷹 @FumiHawk

[29]順番を書くと「ギャング→移民貧困層の若者→それを見た不満分子」と言う流れで人が集まる。最終的に逮捕されるのはこの逆の順番。なので、「逮捕者に中産階級が多ければ多いほど、社会的には危険な状態」といえる。同様の手口で暴動を起こしやすくなるから。

2011-08-13 22:31:05
青木文鷹 @FumiHawk

[30]つまり、今回の「多発的略奪犯罪」は犯罪グループの経済的事情が原因の一端にあり、人種や宗教、政治的主張などとは何ら関係がない。この点については「ジャスミン革命=貧困による一揆」と以前にツイートしたのと同じ。政治利用しようとする人はいるだろうが、本質は別。

2011-08-13 22:31:12
青木文鷹 @FumiHawk

[31]さて、ここまでロンドン暴動について「特定グループの経済事情」と「充満した社会不満」の複合であると推定してきたが、ここで問題になるのは「同様の問題と環境を抱えて居る国は英国だけではない」と言うこと。つまり、他の国でもこのような略奪が発生しうる。

2011-08-13 22:31:20