オン・ジ・エッジ・オブ・ザ・ホイール・オブ・ブルータル・フェイト #2
「ラッセーラ!ラッセーラ!」「ヨッソイ!ヨッソイラー!」掛け声、歓声。マツリ!まっすぐに伸びる大通り沿いに無数のボンボリや旗が掲げられ、「オメーン」「イカをケバブ」「リンゴチャン」「鯖よ」といったネオン屋台がぎっしりと立ち並ぶ。本日はネブタパレード・フェスティバルの初日なのだ。
2011-08-15 15:17:44この日の為に整えた自慢のチョンマゲを夜風にさらし、「お祭り」「有限会社」等のスローガンが書かれた半纏にフンドシというマツリ・スタイルのマチヤッコ達は、口々に「ラッセーラ!ラッセーラ!」と叫びながら、巨大ウチワを振って、通りを練り歩く。
2011-08-15 15:26:11この日は各地の道路が封鎖されて歩行者天国となり、車の代わりにキョートめいたリキシャや巨大な木製のダシ・カートが列を為す。ダシの上にはタイコやオイランストリッパー、そして、内側から発光する紙製のフィギュアアート「ネブタ」が鎮座し、人々の目を楽しませる。
2011-08-15 15:30:42ネブタのモチーフは基本的に古事記の神話存在や平安時代の英雄達、歴史的スモトリであるが、よりオルタナティブなものとして、ネコネコカワイイや茄子、フルーツなどのネブタも多く存在する。家一軒ほどもある紙製の巨人達が発光しながら道路を進む幻想的光景は、見るもの皆を幻惑せずにはいない。
2011-08-15 15:42:45「ラッセーラ!ラッセーラ!」天候にも恵まれ、ネオサイタマほぼ全域で行われるこのフェスティバルは初日から儚い夢を市民のニューロンに焼きつけていた。「ラッセーラ!ラッセーラ!」人々は屋台フードを手に、バリキを摂取し、恍惚の笑みを浮かべて、日々の苦しみを一時忘れようと必死だった。
2011-08-15 15:58:15その数ブロック離れた区画、ジグザグの路地を走行する漆黒のモーターサイクルあり。搭乗者は赤黒のニンジャ、後ろにしがみつくのは金髪のコーカソイドの美女である。そして、そこへハエめいてまとわりつく数台の「フロートガン」。
2011-08-15 17:34:56早々に日が落ちる中、ニンジャスレイヤーは時間が歪められたかのような感覚に陥った。実際のところ彼が覚醒したのは朝焼けの中ではなく夕刻の入りであったのだ。彼の後ろでナンシーはおぼつかない様子でしがみつく。彼女の朦朧状態は悪化している。お互いの腰を縛る固定用の布は気休めでしかない。
2011-08-15 17:49:42ヒュルヒュルヒュル、音を立てて行く手をふさぎに来るのが「フロートガン」だ。三つの扇風機めいたローターとジェット噴射を駆使して器用に飛行する小型フロートクラフト。むき出しの座席にクローンヤクザが機銃を構え、照準をアイアンオトメへ合わせにかかる。これが全部で三機!
2011-08-15 18:01:35バリバリバリ!目の前のフロートガンが真っ先に発砲した。ニンジャスレイヤーはアイアンオトメを蛇行させて機銃掃射を回避、スリケンを投げ返す。「イヤーッ!」ガキン!ローター一機がスリケンを吸い込み火を噴いた!「グワーッ!?」
2011-08-15 18:19:25あえなくコントロールを失ったそのフロートガンは空中でスピンしながら「テリヤキ増す」のネオン看板に激突!ネオンがスパークし、搭乗クローンヤクザは黒コゲになる。ナムアミダブツ!しかし残る二機が果敢にアイアンオトメに追いすがり機銃掃射を開始!
2011-08-15 18:23:17バリバリバリバリ!「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーは一瞬背後を振り返り、速度を速める。単独の運転であればアイアンオトメをインテリジェント走行させ、自らはジャンプして直接フロートガンを飛び蹴りで撃破するところだ。カトンボごときに追い立てられる不本意!
2011-08-15 18:34:04道が下り、直角に近い急カーブだ!目の前にコンクリート壁のウキヨエ・グラフィティが迫る。ニンジャスレイヤーはアイアンオトメの車体をギリギリまで傾けてターン、タコが絡むオイランのポルノアートを蹴って方向を転換した。追いすがるフロートガンは曲がりきれずに壁に激突、爆発!「アバーッ!」
2011-08-15 18:38:51「ラッセーラ!ラッセーラ!」ニンジャスレイヤーは祭囃子を聴き取る。ネブタパレードか?無防備な市民の只中に突っ込む事はできるだけ避けたいところである。しかし機銃を撃ちながら追尾して来るフロートガンが、そちらの方向へ容赦なくアイアンオトメのニンジャスレイヤーを押しやってゆくのだ!
2011-08-15 18:46:46バリバリバリバリ!バリバリバリバリ!アイアンオトメの走行痕をなぞるように銃弾が跳ねる。直線道路をまっすぐに爆走するアイアンオトメ!だがしかし、前方には棒立ちになった人間が一人!避けるべし……いや、ただの人間ではない!道路灯に照らされる柿色の装束!あれはニンジャではないか!
2011-08-15 19:01:11ならばこのまま轢き殺すまでだ。ニンジャスレイヤーはためらわず速度を上げる。柿色のニンジャはその前方でオジギした。「ドーモ」接近!「ニンジャスレイヤー=サン」接近!「ボーツカイです」接近!「イヤーッ!」ボーツカイは轢殺寸前で高く跳躍する!
2011-08-15 19:04:34当然、敵はニンジャ。そう易々と轢き殺されるわけもない。すれ違いざま、ニンジャスレイヤーのニンジャ第六感がヤバイ級の危険を察知する。彼はためらわず、ナンシーを抱えてアイアンオトメからジャンプで離脱!その一瞬後、アイアンオトメの車体が急激につんのめった!
2011-08-15 20:11:22アブナイ!アイアンオトメはそのまま空中で回転し、奇跡的に着地、滑りながら自動停止!ニンジャスレイヤーはナンシーを抱えたままアスファルトに降り立った。離脱が遅れていれば二人は振り落とされていただろう。ニンジャスレイヤーはともかくナンシーは無事では済むまい!
2011-08-15 20:15:03二人のもとへボーツカイが近づく。手にしているのは身の丈ほどもある長い金属製の竿状武器だ。アイアンオトメを強制的に跳ね上げたのはこの得物だ!ボーツカイはジャンプで体当たりを回避しながら、アイアンオトメのホイールにこの竿状武器を差し込んだのだ。なんたる危険行為か!
2011-08-15 20:19:32「イヤーッ!」ボーツカイは竿状武器を演武めいて振り回した。「イヤーッ!イヤーッ!」おお、見よ!ボーツカイが振り回す竿状武器は鎖でつながれた三つの断片に折れ、変幻自在の動きを見せる!これは実際稀少な武器、三節棍!「イヤーッ!イヤーッ!……貴様を殺す!ニンジャスレイヤー=サン!」
2011-08-15 20:41:29「……イヤーッ!」返答がわりにニンジャスレイヤーはスリケンを空中に投擲した。「グワーッ!?」ボーツカイの後ろで浮遊していた最後のフロートガンが思いがけずスリケンを受け墜落、「フリカケ」のネオン看板に突っ込み爆発死!「……ドーモ、ボーツカイ=サン。ニンジャスレイヤーです」
2011-08-15 20:49:56「クンクン嗅ぎ回るネズミめ。よもや、網にかかったケチなハッカーが貴様だったとはな。ニンジャスレイヤー=サン」ボーツカイは三節棍を威嚇的に振り回した。「ザイバツから逃れることはできん。貴様はここで死ぬのだ。……その女は何だ?」「答える必要はない」ニンジャスレイヤーは言い捨てた。
2011-08-15 20:55:08「尋問する側はこちらだ、ボーツカイ=サン。まずオヌシのその鬱陶しい玩具を破壊して武装を解除し、そののち拷問する。最終的には殺す。ニンジャ殺すべし」「で……できるものか……」ボーツカイが低く言った。「できるものか!イヤーッ!」
2011-08-15 21:11:01ボーツカイが襲いかかる!実際これはフレイルのごとき武器で、三つの竿が折れ曲がって意外な方向から敵を打つのである。「イヤーッ!イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは木人拳めいて素早く腕を動かし、手の甲でガードしてゆく。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
2011-08-15 21:24:05ゴウランガ!なんたる精密かつ激しい打撃応酬!デスナイトとの死闘の傷が癒えきっていないニンジャスレイヤーであるが、そんな事をまるで感じさせぬワザマエである。ボーツカイは手数を繰り出すがニンジャスレイヤーを傷つける事はできていない!
2011-08-15 21:30:15