「文民統制」の複雑な意味合いについて
【野田新内閣】石破氏「一川防衛相任命、首相は自衛官の息子らしくない」(http://t.co/FWXGHEA)…日本では文民統制という言葉が誤解されている可能性があるが、世界的に見れば戦争をはじめるのは大抵軍人ではなく政治家である。それは戦争のコストを十分知らないためである。
2011-09-03 11:05:16エピソード的な話をすれば2003年の米国のイラク攻撃がその主たるものだろう。軍は突然の話に戸惑い戦後のことも考えて大量の地上軍を事前展開させてからでないと開戦には踏み切れないといった。これは当時のE・シンセキ陸軍大将の立場だった。だがラムズフェルドもチェイニーも開戦を急いでいた。
2011-09-03 11:08:19開戦のタイミングをずらせば他国に安保理査察の口実を与え事態が長期化する可能性が高い。気候の点からも軍事行動できる期間は限られている。それにラムズフェルドは「軍事における革命」に頼り極力少ない地上軍で軍事作戦を展開すべきという強烈な信条を有していた。彼らは「政治主導」に踏み切った。
2011-09-03 11:11:31すなわち戦後処理のことも考えて「数十万人」の陸上部隊が必要だとしたシンセキ大将は国防長官ラムズフェルドと激しく対立する結果となり、最終的に退任・退役に追い込まれたのである。これは軍人がシビリアンの戦争遂行方針に楯突いたわけであるから、完全に「文民統制」の理想的な姿であった。
2011-09-03 11:13:48その結果どうなったかは今や誰もが知るところである。わずか10万人超の兵力しか投入しなかった米軍は、兵力不足から戦後統治に大いに悩まされた。テロと武装勢力の蜂起で何千もの米兵とそれを遙かに越えるイラク人が死傷した。蓋を開けてみれば結果的にはシンセキの方が正しかったのは明らかだった。
2011-09-03 11:18:24文民統制とは所詮そういう過ちを犯す可能性を回避しきれない言葉である。この言葉の持つ複雑な意味合いをきちんと把握しておくことが政治家にとって重要なのだ。軍事知識が中途半端であることを「文民統制とはかくあるもの」と誇るような政治家は軍にとっても国家にとっても災厄以外の何者でもない。
2011-09-03 11:20:18文民統制の形式論が如何に間違ったものであるか、という例をもう一つ挙げておく。比較的最近「ワルキューレ」という映画があった。1944年のV・シュタウフェンベルグ大佐によるヒトラー暗殺計画を描く映画だ。軍人が文民の統制に楯突きあまつさえ文民を殺害しようとした。立派な文民統制違反だ。
2011-09-03 11:22:20だが戦後の西ドイツでは彼はヒトラー暗殺を企てた人物として英雄視されている。その行動が「文民統制」違反であると糾弾されることは間違ってもありえない。ナチスドイツは事情が違うとかいろいろ議論はあるだろう。しかし形式論で言えば彼はクーデターを起こすことで「文民統制」に違反したのである。
2011-09-03 11:25:53