第50回日本SF大会第2部~表現と法規制に関するミニシンポ より、山口弁護士のお話

表題通り。憲法論から導かれる表現の自由の重要性とその制約のあるべき根拠。そして、これからの表現規制への対処の仕方、その方向性について。訂正などありましたら、お願いします。
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wagu @wagu108

前提として日本国憲法第21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」その第2項として検閲は、これをしてはならない、通信の秘密は、これを侵してはならない。という条文が存在。これがあるからこそ議論を持って、お上に対してものを申すことができる。(続)

2011-09-04 22:30:03
wagu @wagu108

憲法21条には法律の留保というものがない。法律の留保とは何か。大日本帝国憲法第29条は「日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス」。法律の範囲内で、ということがついている。(続)

2011-09-04 22:32:12
wagu @wagu108

今の日本国憲法の第29条では、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」というように法律という言葉が条文の中に入っている。ところが日本国憲法第21条には、「法律の範囲内で」とか「その内容を法律で定める」ということを書いていない。(続)

2011-09-04 22:33:02
wagu @wagu108

これには大きな理由がある。法律というのは国会が制定するものである。選挙された議員が制定するものであって、基本的には多数派の意志を反映させたもの。(続)

2011-09-04 22:35:02
wagu @wagu108

つまり、大日本帝国憲法第29条「法律ノ範圍内ニ於テ」ということは「多数者が認めた範囲内において」つまり多数派の権利としての表現の自由というものは肯定しますよ、ということを言っているに過ぎない。(続)

2011-09-04 22:35:43
wagu @wagu108

これをあえて日本国憲法で外したというのはどういうことか。法律をもっても制約できない自由の範囲を定めたものだと、そのように理解されている。(続)

2011-09-04 22:36:15
wagu @wagu108

ただ、人権と人権がぶつかった場合に、調整しないといけないことがある。例えば、表現の自由がある一方で、誹謗中傷されたくないという自由もある。そこをどのように調整するか。ここに公共の福祉という概念が活きてくる。(続)

2011-09-04 22:37:09
wagu @wagu108

これは日本国憲法の第12条と第13条に公共の福祉という言葉が出てくる。公共の福祉とは何か。公共の福祉を国が定めた法律とか多数派の利益と見なしてしまうと、戦前と変わらなくなり、「法律の留保」をわざわざ外した意味はない。(続)

2011-09-04 22:37:53
wagu @wagu108

公共の福祉とは何か?人権と人権が衝突した場合の調整の原理だと現代の憲法学では考えられている。(続)

2011-09-04 22:39:51
wagu @wagu108

法律の留保の不存在をどう捉えるべきか?民主主義と自由主義は実は対立概念である。日本国憲法は自由主義と民主主義を比べた場合、自由主義を優先させている。あくまでも民主主義は自由というものを確保するための手段に過ぎない。(続)

2011-09-04 22:40:45
wagu @wagu108

民主主義的プロセスを尊重すべしというのは、あくまでも自由を確保するためのプロセスとしての民主主義というのを尊重するが、民主主義を絶対視しているわけではない。(続)

2011-09-04 22:41:20
wagu @wagu108

そのことは憲法第81条に明らかである。「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」最高裁の判事というのは選挙で選ばれてはいないし、日本国における裁判官は選挙で選ばれてはいない。(続)

2011-09-04 22:41:59
wagu @wagu108

内閣が最高裁の判事の任命権を持っている。他の裁判官についても内閣が任命権を持っているが、その任命いうのは最高裁が作成した名簿にもとづくことになっている。最高裁判所は司法試験に合格して司法研修所を卒業した人の中から、名簿を作成する。(続)

2011-09-04 22:42:41
wagu @wagu108

ということは、逆に言えば、選挙で選ばれたわけではない裁判官が、この立法は憲法に違反しているからダメ、無効だと言う権限を認めている。民主主義を貫徹するという思想から言えばこれはありえない。(続)

2011-09-04 22:43:20
wagu @wagu108

ということは、逆に言えば、選挙で選ばれたわけではない裁判官が、この立法は憲法に違反しているからダメ、無効だと言う権限を認めている。民主主義を貫徹するという思想から言えばこれはありえない。(続)

2011-09-04 22:43:20
wagu @wagu108

もう一つは憲法第96条1項。これは憲法改正について。……単純多数決によっては憲法を変えられない。表現の自由に法律の留保を付けようかと言っても、単純多数決でそれをやることは認められない。民意の暴走に対する警戒心を日本国憲法は強く持っている。(続)

2011-09-04 22:44:29
wagu @wagu108

なぜ憲法に人権規定があるか。立法権を持ってしても侵害しえない権利、多数決原理を持ってしても侵害しえない少数者のための権利があるということ。(続)

2011-09-04 22:45:09
wagu @wagu108

憲法典に人権規定がないところは結構ある。例えば、フランスの憲法には人権規定がない。オーストラリアの憲法にも人権規定はない。(続)

2011-09-04 22:45:34
wagu @wagu108

公共の福祉の内容をどう考えるか。日本国憲法第13条には「すべて国民は個人として尊重される」とある。「個人として尊重される」というのは人権基本規定だと言われている。「個人として尊重」だから、人権というのは個人としての自己決定権。(続)

2011-09-04 22:46:25
wagu @wagu108

そうすると、差別的な言論であるとか、ごく一部のフェミニストたちが大好きな「集団的な人権」、まあぼくが勝手に作った言葉だけれども、女性の人権だとか児童の人権とかの、個々のではなくて総体の人権が、表現の自由を制約する根拠になるかというと、それはならない。(続)

2011-09-04 22:47:13
wagu @wagu108

つまり、公共の福祉というのは人権の制約原理だが、それは人権と人権が衝突する状況があった場合にこれを調整するものである。(続)

2011-09-04 22:47:59
wagu @wagu108

しかしながら、漫画を出す自由、エロ漫画を表現する自由。それに対抗する人権として、これは女性蔑視を助長するだとか、女性に対する偏見を助長するだとか、こういうものの存在自体が子どもの人権を害するのだ、みたいな議論というのは、ないというしかない。(続)

2011-09-04 22:48:56
wagu @wagu108

なぜか?一つは快不快というのは規制の根拠にはならない。もう一つは女性の人権、児童の人権を総体的に言った場合、いったい誰がこの権利というものを主張する資格があるのかという問題点がある。(続)

2011-09-04 22:49:30
wagu @wagu108

女性、子どもには多種多様な意見があるはずであるし、表現物の受容についても、いいという意見も悪いという意見もやだという意見もある。(続)

2011-09-04 22:50:23
wagu @wagu108

それなのに、すべて「こういう意見を持つはずだ」ということを決めつけてしまうということは、集団に属する個々の人が当然に持つ多種多様な受容の仕方を否定しかねないし、集団に属する個々人の知る権利、表現の自由を否定しかねない。(続)

2011-09-04 22:51:09