死ぬのがこわくなくなる話 第17話

Twitter上で連載中の渡辺浩弐さんの長編小説をまとめました。
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渡辺浩弐 @kozysan

というわけで「死ぬのがこわくなくなる話」そろそろ始めますね。

2011-08-29 04:04:43
渡辺浩弐 @kozysan

(昨日は、人工冬眠後の記憶の再生についての話でした) それから、冬眠状態に入っているとはどんな感じなのか。-186℃の世界で身動きもできずに耐え続ける。それはつらくないのか。寒くないのか、退屈ではないのか。あるいは、長い夢をみている感じなのか。そのことも、とても気になった。

2011-08-29 04:07:04
渡辺浩弐 @kozysan

これに対するブリッジ氏の答えが、見事だった。「死んでいるのと同じ状態ですから、意識は断絶します」と。「つまり本人としては、眠った瞬間に目が覚める、ということになります。何百年でも同じです。ちっとも苦痛になりません」

2011-08-29 04:07:35
渡辺浩弐 @kozysan

これは魔法のセールス・トークでもある。いろいろな疑問が、疑念がこれでふっとんでしまうのだから。

2011-08-29 04:07:59
渡辺浩弐 @kozysan

本当に蘇ることができるのか。できる、なぜならば、蘇ることができるまでいくらでも待って、蘇るのだから。それはものすごく先のことではないか。何万年でも何億年でもいいではないか。だって、自分にとってそれは、ほんの一瞬なのだから。

2011-08-29 04:08:13
渡辺浩弐 @kozysan

アルコアについて、技術的な問題や、設備的な問題だけではなく、この点についても考え込むことになった。つまり、死と時間について、だ。

2011-08-29 04:09:04
渡辺浩弐 @kozysan

死んでいる間は、全く時間は存在しない。それは100年でも、100万年でも同じだ。1億年でも、1兆年でも。なるほど。では、それは無限だとしても、同じことにならないだろうか。

2011-08-29 04:09:20
渡辺浩弐 @kozysan

そして、頭だけ残すという方法が用意されている以上、あなたは、決めなくてはならない。全身。頭だけ。どちらを選ぶか。それはどこまでが自分なのかという考えに繋がっていくだろう。

2011-08-29 04:15:31
渡辺浩弐 @kozysan

冷凍保存された肉体を解凍、修復するためには、ブリッジ氏の言うナノテクノロジーよりはむしろクローン技術が使われるはずだと僕は考える。人間の体のどの細胞にも、DNAすなわち全身の設計図が入っている。それを使って、新しい肉体を作り出すことができる。

2011-08-29 04:15:55
渡辺浩弐 @kozysan

ポンコツになった体を修理するより、新しく作ればいい。多くの人がそう考え、より安価な「頭だけ保存」コースを選ぶだろう。ならば、頭の全部が必要なのか。顔はいらないのではないか。脳だけでもいいか。なら、脳のどの部分が必要なのか。記憶については、どの記憶が必要だろうか。

2011-08-29 04:16:11
渡辺浩弐 @kozysan

つきつめていけば、クローンに必要な素材、つまり細胞の一かけら、遺伝子データ1セットがあればそれだけで、十分なのではないか。続く。

2011-08-29 04:16:38