死ぬのがこわくなくなる話 第21話

Twitter上で連載中の渡辺浩弐さんの長編小説をまとめました。
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渡辺浩弐 @kozysan

毎夜10分の思考実験『死ぬのがこわくなくなる話』その21を始めます。

2011-09-02 01:32:21
渡辺浩弐 @kozysan

ティモシー・リアリー氏が最期に臨んで何を考えていたか、聞きそびれたことはとても残念だ。

2011-09-02 01:32:37
渡辺浩弐 @kozysan

プランを知りたかった。まず、どう生き返るか、ということだ。たとえ技術が進んでそれが可能になったとしても、遠い未来の人々は、氷漬けになった古代人を果たして生き返らせるだろうか。

2011-09-02 01:33:34
渡辺浩弐 @kozysan

人工冬眠に入っている人々の結びつきを強くしておく必要がある、とリアリー氏は主張していた。運良く誰か一人が蘇ったとする。その人は必ず次の人が蘇るように手を尽くす。そんな行為の連続で、会員の蘇生は保証されるということだ……と僕は推測している。

2011-09-02 01:36:11
渡辺浩弐 @kozysan

『人体冷凍』の中の記述では、人工冬眠の契約をリアリー氏がキャンセルした理由として「50年後に目を覚ましたとき、あんなユーモアのかけらもない連中に取り囲まれているなんてまっぴらだ」と発言したとある。

2011-09-02 01:37:28
渡辺浩弐 @kozysan

代わりに彼は、未知の宇宙人たちに取り囲まれて目覚めることを選んだというわけだ。

2011-09-02 01:38:17
渡辺浩弐 @kozysan

また、冷凍される前に自分の価値をデータ化しておく必要がある。なぜ生き返りたいか、ということ。逆に言えば生き返ることによって自分はどのような価値を発揮するか、ということは、記録しておくべきだ。

2011-09-02 01:38:52
渡辺浩弐 @kozysan

これは、ファラオが素晴らしい美術品によって自らを飾って眠ったことと同じだ。自分がどれくらい価値のある人間か。どれほど金持ちであり、権力者であり、そしてセンス・エリートであるか、その証明をしておく。

2011-09-02 01:39:27
渡辺浩弐 @kozysan

事実、可能ならファラオを生き返らせて話を聞きたいと本気で思う人は現在の世界にも多くいるはずなのだ。

2011-09-02 01:41:26
渡辺浩弐 @kozysan

この、自分の記録、ということは、先に述べた、記憶のアーカイブ、ともつながるものだ。その目論見は、もしかしたら今なら、実現できるような気がするのだ。

2011-09-02 01:42:34
渡辺浩弐 @kozysan

ここまでを復習しよう。あなたのハードウェア、肉体についてはクローン技術が解決するはずとして、今はソフトウェア、記憶の保存だけを考えればいい。コンピュータは、そのために使えそうだ。

2011-09-02 01:43:37
渡辺浩弐 @kozysan

ただ、問題はそのアーカイブ作業は、未来に託せないということだ。生きているうちに、やらなくてはならない問題だ。頭に電極を何本か挿し、スイッチを入れるだけでぎゅいーんと一気に記憶を吸い取ってくれる、そういうマシンがまだ存在しない。どうすればいいか。

2011-09-02 01:43:58
渡辺浩弐 @kozysan

リアリー氏の死後、僕はここにテーマを絞り込み、取材を続けた。大学の研究室、先端企業のラボ、あるいは宗教家や思想家にもできる限り会った。その詳細は書くとしても後回しにしよう。できるだけ急ぎたい。なぜならあなたは明日、死んでしまうかもしれないからだ。

2011-09-02 01:49:39
渡辺浩弐 @kozysan

先に、僕なりに集めた情報をもとに、最も正しいと思われるシミュレーションを述べたい。今のテクノロジーで、あなた自身のアイデンティティー、記憶をアーカイブすることが、もう可能なのである。

2011-09-02 01:50:00
渡辺浩弐 @kozysan

この話つながっていきますので、しばらく返信が少なくなります(後の文章がそのお答えになることが多くなります故)が、ご理解下さい。     ではまた明日。

2011-09-02 01:51:35