ゲイシャ・カラテ・シンカンセン・アンド・ヘル #4

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第2部「キョート殺伐都市」より 「ゲイシャ・カラテ・シンカンセン・アンド・ヘル」#4

2011-09-13 21:36:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:宿敵ラオモト・カンを倒し、ソウカイ・シンジケートを壊滅させたニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジは、新幹線でネオサイタマを離れ、ザイバツ・シャドーギルドの本拠地と目されるキョート・リパブリックへと向かっていた。彼の目的は、復讐。すなわち全ニンジャの抹殺である)

2011-09-13 21:37:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(だがこの車両には、彼の他にもニンジャが存在した。キョートへ凱旋する4人のザイバツニンジャ、そして彼らに捕獲されたゾンビーニンジャのジェノサイドだ。さらにはジェノサイドへの不確かな追憶に耽るゲイシャのユリコや無関係のサイバーゴス兄弟も、偶然この車両に乗り合わせていた!ナムサン!)

2011-09-13 21:41:21
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タングステン・ボンボリが火花をバチバチと散らす、薄暗い荷物車両。ここにはダイミョ・クラスとカチグミ・クラスの荷物が積まれている。レッドアラートが鳴っても、2人の鉄道警備員に動揺は少ない。この車両から前には、強力な防弾装甲が施されているからだ。小型ロケット弾の着弾もものともしない。

2011-09-13 21:47:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なあ、やっぱりあの隅に置いてある鋼鉄棺桶から、物音がすると思う」ジェノサイドが閉じ込められている鋼鉄棺桶をマグライトの光で差しながら、神経質そうな警備員が言った。これで何度目だろうか。「しつこい奴だな」と、もう片方の警備員「フェレットが入っててもタヌキが入っててもいいだろ?」。

2011-09-13 21:51:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いや、何か荷物に不具合があるんじゃないかと思ったんだ。タケヤリが貫通して刺さったのかもしれない」弁明する神経質警備員。「お前は心配性過ぎるんだよ、ウッ!」と、もう片方の警備員「ちょっとしたトイレ休憩が必要だ。サツバツとした世界だからな。カチグミ・クラスを使ってくるから1分頼む」

2011-09-13 21:59:43
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そう言い残すと、天狗のタトゥーを右腕に入れた警備員は荷物室から出て行った。ドアが締まり、圧縮空気が排出される。神経質警備員は耳を澄ました。(((AAAAAAARRRRRGGGH!)))……やはり聞こえる。人間のものとは思えない不気味な唸り声。鎖の音。刃物が高速回転するような音。

2011-09-13 22:05:48
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「見るだけさ…」警備員は壁に立てかけられた鋼鉄棺桶の覗き窓蓋部分をマグライトで照らす。中にズンビーニンジャが入っていることを偽装するためか、「売買目的」「お急ぎOK」などの貨物シールが貼られていた。微かな異臭が漏れてくる。警備員はシールを剥がし、蓋を押さえる鋼鉄カンヌキを抜いた!

2011-09-13 22:18:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カランカランと、鋼鉄カンヌキ棒が床に転がる。棺桶から物音が聞こえなくなった。コワイ!(((だがもしこの中に、ペケロッパ・カルトのテロリストが入っていて、新幹線のマザーUNIXを爆発させようとしていたら……)))彼はザゼンドリンクの中毒者ゆえ、ナイーブな考えを抱きがちになっている。

2011-09-13 22:30:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

警備員は恐怖を克服するため、懐からシャカリキ・タブレットをひとつ取り出して噛み砕く。(((俺がそいつのLANケーブルを掴んで引きずり出して、警棒で叩き殺して昇給……!)))警備員は意を決して覗き窓の蓋を開き、マグライトで中を照らす!「ア、アイエーエエエエエエエエエエエエ!!!」

2011-09-13 22:34:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

火花を散らし、棺桶の中から鎖付き高速回転バズソーがハト時計のハトめいて飛び出す!警備員の両眼と平行にバズソーが食い込み、なおも回転!「アバババーッ!!」ニューロンを破壊され、警備員の体は無自覚なダンスを踊る!狂ったジューススタンドのように血飛沫を撒き散らした後、頭を輪切りに切断!

2011-09-13 22:49:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

何たるジェノサイド!頭をスライスされた警備員の体はもんどりうって倒れ、タンスやコンテナが連鎖的に倒れて死体を埋没させる!「カチグミ共、ざまあ見やがれ」そこへ帰ってくる天狗タトゥーの警備員。ブッダ!相方の姿が見当たらない!照らす!棺桶のシールが剥がれている!「あのサイコパス野郎!」

2011-09-13 23:01:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「開けやがったな!」天狗警備員は鋼鉄棺桶に駆け寄る!「ふざけんじゃねえぞ!積荷に傷でもつけようモンなら、俺まで連帯責任でケジメじゃねえか!まず点検だ!」相方の死体を崩れたタンスの下に踏んでいるとも知らぬまま、彼は鋼鉄棺桶の覗き窓を開けた!「ア、アイエーエエエエエアババババーッ!」

2011-09-13 23:07:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カブーン!56号車の横腹に、コケシロケット弾が命中した!激しく揺れ動く車内!回転する非常ボンボリ!怒号と喧騒の中を、ユリコは黙々と駆ける。その後ろには、手を硬く握り合ったサイバーゴスの2人が続く。彼らはそれからさらに数ダースのマケグミ・クラス車両を走り抜け、貨物室へと到着した。

2011-09-13 23:22:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガゴンプシュー……ユリコたちの背後で重々しいドアが閉じ、圧縮空気がホースから吐き出される。車両の装甲がぶ厚くなったのが、ユリコにはすぐに感じられた。揺れも少ない。「この先はもう、カチグミ車両ですよね」「無断で入ったら、警棒で叩かれると思います」サイバーゴスたちが不安そうに言う。

2011-09-13 23:25:35
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「そういえば、警備員が…」ユリコは眉をしかめながら、薄暗い貨物室内を見渡した。これまでの車両には必ず警備員がおり、先へと進むよう彼女たちを促したのだが……まさか、この貨物車両が目的地というわけでもあるまい。ユリコは不安になった。ゲイシャは誰かに依存せねば生きては行けぬ存在なのだ。

2011-09-13 23:28:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何か聞こえませんか?」サイバーゴスの片割れが、左手の先にインプラントした粗悪なサイバネティック集音マイクをかざして左右に動かす。レッドアラートの音やジェットエンジンの音をノイズとして消去。震える人差し指で、貨物室の最も暗い角を指差した「あっちの……鋼鉄棺桶めいた積荷のほうから」

2011-09-13 23:37:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「もしかして……」ピンク髪のゴスが推理した「新幹線が攻撃を受けた衝撃で、警備員=サンがタンスの下敷きになったんじゃ……」。「この室内に、心臓拍動音は3人分しかトレスできないよ」と集音機ゴス。しばしの沈黙。誰もそれ以上の推理力は持っていなかったので、鋼鉄棺桶に近づくことになった。

2011-09-13 23:43:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((ARRRRRGH!)))鋼鉄棺桶の中から、再びゾンビーニンジャの呻きが漏れる。「ヒッ!」サイバーゴスの片方が失禁!腰を抜かして転倒したその下には、頭をスライスされた天狗タトゥーの警備員の死体!キュイイイイイイン!キュイイイイン!蓋の閉じられた鋼鉄棺桶の中から、異様な回転音!

2011-09-13 23:50:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「「アイエーエエエエエ!」」ゴスたちは床をぶざまに這いずりながら、隔離ドアまで逃げ帰る!素子をかざすが……ロックは解除されない!「ナンデ!?ロックナンデ!?」「コワイ!」ナムアミダブツ!彼らが受け取ったロック解除素子は一方通行用なのだ!もはやマケグミ車両に引き返すことはできない!

2011-09-13 23:53:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この状況下で、ユリコは冷静であった。ニンジャリアリティ・ショックにより、一時的に死に鈍感になっているのだろうか。ニューロンは気まぐれだ。ともかく彼女は、鋼鉄棺桶の中から響いてくる悲痛な男の呻き声と、彼の慟哭のごときバズソー回転音を聞き、砕け散った記憶の一部を取り戻したのである。

2011-09-14 00:03:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ジェノサイド=サン……?」ユリコは鋼鉄棺桶に触れ、そう問いかけた。オカメ・パズルのように欠落した昨晩の記憶の数ピース。ジェノサイドがニンジャであり、ゾンビーでもあるという最も危険かつ重要なピースは、未だ失われたままだ。「中に、いるの?」ユリコの白く細い手が覗き窓の蓋へと伸びる!

2011-09-14 00:08:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ノー!ユリコ=サン!ノー!」ジェノサイドは叫んだ「蓋に手を触れるな!俺を放っておいてくれ!」彼はユリコの声を覚えていた。もし彼女がこの蓋を開ければ何を見るか知っていた。ウエスタンハットにもスカーフ頭巾にも隠されていない、鼻と片耳のパーツが実際欠落した、醜いフクワライめいた顔だ。

2011-09-14 00:17:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ユリコはそれを拒絶と取り、瞳に絶望の色を浮かべる!ショッギョ・ムッジョ!何たる悲劇的再会か!?平安時代の詩聖ミヤモト・マサシならば、どんなハイクを詠んだであろう!?だがマッポーの世では感傷に浸る暇も許されぬ!不意にカチグミ車両側の扉が開いた!「「「ザッケンナコラー!!!」」」

2011-09-14 00:26:09