クライ・ハヴォック・ベンド・ジ・エンド #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「クライ・ハヴォック・ベンド・ジ・エンド」#5

2011-09-21 14:49:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……イヤーッ!……イヤーッ!……イヤーッ!」中腰姿勢から繰り出すトゥールビヨンの正拳突きは250発を数えていた。突き出す拳は空気を裂き、掛け声はトゥールビヨンの中の雑念、ボンノを殺してくれる。下層民への憎しみで判断力が濁れば、結果としてダークニンジャ=サンの迷惑になるだろう。

2011-09-21 15:09:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダークニンジャ=サンはギルドに三神器をもたらし、ロードの支配を今まで以上に盤石のものとするだろう。そしてロードのおぼえ益々めでたきダークニンジャ=サンの英雄的指揮のもと、黄金社会、ニンジャが人間を支配する平安時代が再来する……英雄の歩みにノイズを落としてはならないのだ!

2011-09-21 15:17:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……イヤーッ!……イヤーッ!」「クソ真面目にやってやがるなァ!疲れちまうぜ?」ノレンの下から揶揄めいた声が飛んだ。トゥールビヨンが苛立ちと共に振り向くと、戸口に寄りかかって立っていたのは顔の左半分をサイバネ改造したニンジャであった。「ドーモ、ヴォルテージ=サン」「ドーモ」

2011-09-21 15:27:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヴォルテージはオムラ・インダストリから出向しているニンジャだ。この超弩級ハンマーシリンダー施設「ベヒーモス」はオムラ社からザイバツにまるごとリースされた物件であり、専門エンジニアと、このヨージンボ的なニンジャがセットで派遣される契約となっている。

2011-09-21 15:30:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

万が一の侵入者や労働者暴動の対応などダークニンジャが動くまでも無い、トゥールビヨン一人で十分なのだが、オムラにもオムラのコンプライアンスとメンツがある為、ただ無防備に施設を貸し渡すという事は無い。ヴォルテージはザイバツへの牽制でもあるのだ。

2011-09-21 15:35:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そして実際、こいつは態度が悪い……トゥールビヨンはヴォルテージを剣呑な目で睨む。ヴォルテージはニヤニヤと笑いながら、その視線を受けて立つ。彼の両腕には無骨なニンジャ小手が装備されており、ブレーサー部分からはスタンガンめいた電極が飛び出している。電極間で青い火花が威嚇的に光る。

2011-09-21 15:39:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「楽しいか?俺もやってみるかなァ!イヤーッ!イヤーッ!」「何の用だ!」「ちと報告さ。ローカルIRCの挙動がおかしい気がしたんでね」「何?」「機関室からの定時IRCレポートを確認していたんだが、一瞬ネットワークが切断状態になった。すぐに復帰したが、においやがる」「……」

2011-09-21 15:51:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いやね、ザイバツ・シャドーギルドの隔離体制に不備があったなんて、まさか思わんよ?あんたやあのダークニンジャ=サンのエリート・アトモスフィアは実際大したもんだよ。まさかまさか、クズ労働者に紛れた外部からの二心ある侵入者なんてなァ?しっかりやってるのになァ?」「貴様!」

2011-09-21 16:00:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トゥールビヨンのニューロンに一瞬、激烈な殺意が燃え上がる!二人のニンジャは同時に半身の姿勢を取った。一触即発!ヴォルテージの両腕に青白いスパークが弾ける。トゥールビヨンも平手を腰の前で上に向けた独特のカラテを構える。エスケープメント・ジツの予備動作……敵が仕掛けて来れば……!

2011-09-21 16:09:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「……」ほんのコンマ五秒ほどの緊迫状態を経たのち、二人は睨み合ったまま、ファイティングポーズを同一のペースで解いた。「お利口だァ。つまらねェ癇癪でボスに恥をかかせちゃいけねェよ」ヴォルテージは嗤い、手を振って退出した。「機関室、見てくるぜ」「とっとと行け!」

2011-09-21 16:15:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヴォルテージの口笛が遠ざかる。「クソーッ!」ズガッ!壁にかかった「不如帰」のショドーをトゥールビヨンの 怒りのパンチが貫通し、壁を穿った。若いトゥールビヨンの目には涙が浮かんだ。やり場の無い怒り、屈辱、責任感、忠誠心、我慢、無力感がない交ぜとなった苦い涙である。

2011-09-21 16:24:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(任務が終わったら……この任務が終わったらあいつを殺す!きっと殺してやる!)拳で涙をぬぐい、胸中でヴォルテージへのあらん限りのノロイを吐くトゥールビヨンは当然、知りはしなかった……ベヒーモスの内部に入り込み、今まさに迫りつつある恐るべき敵の存在を……!

2011-09-21 16:28:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドゥンドゥン、ドゥルッドゥー、ドゥールドゥルドゥー。低い口笛を吹きながらヴォルテージは廊下を歩いていた。この超弩級ハンマーシリンダー「ベヒーモス」、巨大な質量を勢いをつけて叩き下ろす装置であるが、火薬を用いた推進装置や無数のクランクシャフトなど、よくわからぬ機構の塊である。

2011-09-21 17:43:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

内部はこのように廊下やハシゴで繋がれ、先ほどあの生意気なトゥールビヨンの小僧をへこませてやった司令室区画、無人スシバー、仮眠室等まである。それらがバラバラに分解されたユニットで運ばれ、こうして組み立てられるのだ。オムラはたいしたものだ。

2011-09-21 17:48:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヴォルテージの行く手、壁に向かって作業する数人の労働者を発見。レンチでネジをしめている。溶接等の重要作業は既に済んでおり、この作業はいわば仕上げだ。彼らにはスキルを要する作業は求められない。後ろを無造作にニンジャが通過しても、彼らはさほど気にかけない……。

2011-09-21 21:46:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

やがてヴォルテージは曲がり角に辿り着く。壁には黄色いペンキでオムラ・インダストリのエンブレムと「機関室この先」の文字。ドゥルッドゥー、ドゥールドゥルッドゥー。ヴォルテージは低く口笛を吹きながら角を曲がる。

2011-09-21 21:50:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ノレンを潜って室内に入る。金網で仕切られた窓の向こうには大蛇めいた蒸気パイプ群。手前には小さなUNIX机だ。ドゥルッドゥー、ドゥールドゥールドゥー。ヴォルテージはUNIXデッキのモニタに目を止めた。黒い画面上を右から左へ「目にやさしい」の文字が流れる。スクリーンセーバー?

2011-09-21 21:59:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その一瞬後、ヴォルテージは誰かに後ろからメンポの呼吸口を塞がれた。そして異物感が首のあたりを横一直線に滑り抜ける感触を味わった。モニターに鮮血が飛び散る。アアア?鮮血?血液ナンデ?ヴォルテージの全身から力が抜けていく。さらに彼はグイと首後ろをつかまれ、部屋の外へ投げ出された。

2011-09-21 22:08:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カハッ、カハッ……」ヴォルテージは廊下に投げ出され、尻餅をついた。そして彼の致命傷を確認するようにノレンをくぐって現れた、迷彩装束と編笠姿の異様なニンジャを見上げた。「ニンジャアバッ?」手に持っているのは血塗られたククリナイフだ。ヴォルテージの血だ。「アバッ?」

2011-09-21 22:11:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……これがサイゴン・ロアだ。24時間、360度。あらゆるところから死は忍び寄り、目覚めれば昨日の友は死体となっている。ナムは地獄。地獄に適応できぬ者には死あるのみ」編笠姿のニンジャはヴォルテージを見下ろす。「ドーモ。フォレスト・サワタリです。余力があるならば、かかって来い」

2011-09-21 22:17:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヴォルテージのニューロンがスパークする。何が起きた?なぜ俺は死んでいる?こいつは誰だ?……サイゴン?……落ち着け!まだだ!まだ死んでいない!右手の電極がスパークし、ブレーサーが赤熱する。力を振り絞り、焼鏝めいた手首を真横に斬られた喉に押し当てる。 「グワーッ!」肉が焦げる!止血!

2011-09-21 22:21:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのまま横飛びに廊下を転がりヴォルテージは立ち上がる。「ド、ドーモ、フォレスト・サワタリ=サン。アバッ……ヴォルテージです」電極がスパーク!「貴様ハッキングを試みたな!」「何だと?」フォレストは片手にククリナイフ、片手にマチェーテを構えた。「知らぬ!俺はいじってないぞ!」

2011-09-21 22:28:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヴォルテージの両手が激しく閃光を放つ。最大出力だ!今にもこの命は失われんとす、ならば一撃で勝負を決すべし!「イヤーッ!」ヴォルテージは踏み込んだ、だが「イヤーッ!イヤーッ!」「グワーッ!グワーッ!?」コンマ五秒後には右太腿にマチェーテが!左太腿にククリナイフが、突き刺さっていた!

2011-09-21 22:40:26