竹の子書房 【ハロウィン企画】 ハロウィンを題材にした作品募集!
@ts_p 朝、ちょこっと呟きましたが、ハロウィンに向けた企画をやろうかな、と。ハロウィンを題材にしたものなら何でもOK。怪談、ホラー、BL、GL、恋愛物、時代劇w、スラップスティック、幻想ラノベ、SF、SM等々、何でもござれで。
2011-09-26 00:40:57@ts_p 竹の子書房『ハロウィン企画(仮)』に投稿する短編を公開しました。タイトルは『猫とおしどりを連れた冒険』ペンネームは『とよね』です。http://t.co/XqUUMIjs #tknk
2011-10-09 21:53:02@ts_p また、苺男(@cold_berry)さんにこの短編のイメージイラストの製作をお願いしてあります。よろしくお願いします。#tknk
2011-10-09 21:53:27@ts_p @Toyo_ne ハロウィン企画「とよね様」作品の「猫とおしどりをつれた冒険」に絵を描かせていただきました。どうぞよろしくお願いします。 #tknk http://t.co/78VFxMqi
2011-10-13 04:57:00@ts_p 【ハロウィン企画】に作品名「お江戸のハローウィン」(著者名:青懸巣)を投下します。時代小説です! http://t.co/N1RcLFQy #tknk
2011-10-10 21:56:04真っ暗な道の真ん中で、子供が泣いている。 手で顔を覆い、しゃがみ込んだまま、時折大きくしゃくり上げている。 もう随分と此処にいる。 誰も来ない。 誰も助けてくれない。 誰も自分を捜してなどいないのだ。 ならばいっそ。「どうしただぁ?」
2011-10-11 06:33:25闇の中から、声がする。「おうちに帰れないの」 そう言って顔から手を離し、子供は声のほうを向いた。 顔がなかった。 目も、鼻も、口も、そこにあるべきものが、つるりとして何もなかった。 大概の人間は此処で悲鳴を上げるはず。だが、返ってきたのは笑い声だった。
2011-10-11 06:34:02「何だぁ? それで脅かしたつもりかぇ」 声はけらけらと笑う。「百年早ぇよ」 上からもう一つ、無愛想な男の声が降ってきた。「こんなことやってねぇで、家に帰んな」 男は笑いもせずにそう言った。「帰れないの」 子供はのっぺらぼうのまま、声を上げて泣き出した。
2011-10-11 06:34:38気が付いたら此処にいたのだ。 本当に長い、長い間、此処に放っておかれた。 誰も自分を捜しに来なかった。 自分は家族から捨てられたに違いないと、絶望していたのだ。 絶望は怒りに変わった。 こんなに長く歳も取らずに此処にいるのだから、
2011-10-11 06:35:58もう自分は幽霊になってしまったのだ。 誰も助けてくれないなら、通り掛かる者全てを取り殺してやる。 そのつもりでいた。「誰が幽霊だって?」 ぽうっ、と子供の頭上で灯りが点った。 柔らかい黄色い光に照らされて、闇が動いた。 いや、猫だ。闇色の猫がそこにいた。
2011-10-11 06:36:50「生きてる人間が、幽霊なんぞになれる訳がねいよ」 猫は可笑しそうに笑う。 泣いていたことも忘れ、子供は猫を声もなく眺めている。 「猫が喋らねいなんて、誰が決めた」 ニヤリ、と猫は口の端を持ち上げた。 「何だぇ、幽霊やろうって奴がこれっくらいで驚くんじゃねいよぅ」
2011-10-12 06:23:18「もうそんくれえでよかろ」 面倒臭そうな男の声。 「帰り道が分かんねぇんなら分かるとこまで、おらが連れてってやっから」 そう言うと、手にしているであろう灯りをゆらゆらと揺らしながら暗い道を移動し始める。 「ぼやっとしてねいで、ジャックの気が変わんねいうちについてきな」
2011-10-12 06:24:36猫に促されて、子供も慌てて後を追った。 家に帰れる。でも、本当に? どうやって来たのか覚えていない。気が付いたらあそこにいた。 ずっと長い間、今まで誰一人として通り掛かる者はいなかった。 本当に、本当に帰れるんだろうか。 「帰れるさ」 事もなげに猫は笑う。
2011-10-12 06:26:57声に出して言った訳ではない。なのに、何で分かるんだろう。 「分かるさ。此処はそういうとこだかんな」 頭上で男も言葉を返す。 ついていっても大丈夫なのか? 見上げても、灯りが眩しくて男の顔は見えない。 いいや、あんな真っ暗な所に一人、置いておかれるよりはマシだ。
2011-10-12 06:27:40けれど、こんなに長い時間が経ってしまったら、家族は自分を覚えていないのではないか。そんな不安が込み上げる。 「心配要らねいよぅ。大した時間じゃあねいさ」 そう猫は笑い飛ばす。 子供は少し安堵して、猫の後ろをくっついて歩いた。 やがて、本道の脇に細い路地が
2011-10-12 06:29:15見えてきたが、猫はそちらを見向きもしない。 路地の先は明るく、寄り添って歩く男女の後ろ姿が見えた。 「さ、こっちだぁ」 猫が先を促す。人のいるほうへ走っていきたい衝動を抑えながら、子供は猫に従った。 今は猫と灯りを持つ男だけが頼りなのだ。 また路地が見えてきた。
2011-10-12 06:33:02大きなお腹を抱えた女性と、その母親らしき人が談笑していた。子供は見覚えがあるような気がして、足を止めた。 「まだ先だ。まだ早え」 男がポツリと呟いた。猫もまた、一瞥をくれただけで歩みを止めない。 子供は後ろ髪を引かれながら、猫について歩いた。 少し歩いた所で、
2011-10-12 06:36:36分かれ道に差し掛かった。 右手は真っ暗なままの道。 左手は緩やかな下り坂になっており、遠くに一軒の家。 明るい外灯が灯っている。 「み――き、――きちゃん」 誰かが名前を呼んでいた。 「お母さん!」 子供は駈け出した。
2011-10-12 06:37:38途中、立ち止まって振り返ると、カボチャをくり抜いたランタンの下、猫の満足気な顔があった。 「早く行きな」 カボチャが無愛想に言った。 「また逢える?」 「おまいが望めば、な」 ランタンが消え、猫は背後の闇に溶けた。
2011-10-12 06:38:14窓から差し込む光の眩しさに、深雪は目を開けた。 随分と懐かしい夢を見たものだ。子供の頃、風邪を引いて高熱に魘された夜に見た夢。 夢だと分かって酷くホッとして、同時に落胆したのを覚えている。 きっと引っ越しして、環境が変わったせいかもしれない。
2011-10-12 06:40:24